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559.ショックはでかい

「まさか、エドガー叔父さんが……」

「現実に関わりがあったって事になるのか。しかし、こうなると本当に厄介な相手が現われたもんだな……」


 まだ憶測の段階ではあった事が、こうしてまざまざと現実として見せつけられてしまうと流石にショックを隠せない一行。

 特にエドガーと親戚関係にあるエルザの落ち込みっぷりは相当なもので、一人の戦士として彼を慕っていた事もあって言葉が出ない。


「あの落ち込み様じゃあ……流石に声も掛けられないからそっとしておこう」

「そうね。それが一番だわ」


 あの後、倒れてしまったエルザは煙を吸い込んでしまったので、その後の体勢の立て直しが遅れてしまった。

 一方のレウス達はウルリーカの部下や魔物達との激闘を繰り広げていたものの、いかんせん多勢に無勢と言う状況が続いていたので、ウルリーカには余裕で逃げられてしまった。

 流石に三つ首の大型魔物であるケルベロスが複数体居た上に、人間や獣人もそこかしこから襲って来るので、レウスは全員に魔術防壁を張るので精一杯。

 せめてあの大きな威力の魔術を使う事が出来れば……と思っても、詠唱に時間が掛かる為にこうした乱戦の状況下では発動するタイミングがなかなか見つからなかった。

 最終的には結局、他のメンバーに任せて自分はその大型魔術の中の、相手の攻撃を全て吸収してそれを二倍のダメージとして相手に跳ね返す魔術「ナイト・プロヴィデンス」を使い、ケルベロス達を始めとした敵を全て駆逐する事で戦いは終わった。

 だがその戦いが終わった後、坑道の奥にある扉が開けられている事に気が付いたレウスが、尻もちをついたままの姿勢で呆然としているエルザの姿に気が付いて声を掛けた。


「おいエルザ、大丈夫か!?」

「……」

「エルザ、おい、何があった!? 何処か痛いのか!?」

「だ、だったらまずは回復魔術を……」

「……いや、そうじゃないんだ……」

「は?」


 レウスに続いて駆け寄って来たアレットや、他のメンバーの姿を見ながら立ち上がったエルザのトーンが恐ろしく低い事に気が付いて、レウス達は彼女がこの扉の向こうで何かを見てこうなったのだろうとすぐに察しがついた。


「何があったのよ?」

「……その前に、あのイルダーを治療してやってくれないか。私は平気だから」

「あ、ああ……」


 エルザに言われる通りに、未だに気絶しているイルダーをレウスとアレットが回復魔術で治療し始める。

 それを横で見ながら、エルザに対して改めて事情を聞き出そうと問い掛ける他のメンバー。


「お主、一体この扉の向こうで何があったのだ?」

「私は……あの……この扉の中で……その……」

「ちょっと、はっきり言いなさいよ!」

「ええと……あの……」

「何よ、どうしたのよ?」


 恐ろしく歯切れの悪いエルザに対して、最初に問い掛けたソランジュは言いたくない事があるのかも知れないと察したのだが、痺れを切らしたドリスやサイカが先を促す。

 それに対して、ティーナが二人を制止した。


「ちょっと二人とも、エルザは何か良くないものを見たに違いありませんわ。多分それで今はショックを受けているのでしょう。ですからここは、彼女が話したくなる時までそっとしておきませんか?」

「ああ、私もお主の意見に賛成だ」


 しかし、その二人の気遣いを無にする発言がアニータから飛び出した。


「ダメ」

「え?」

「何故だ?」

「ダメよ。今ここで言えない様な事だったとしても、ここで言わなかった事で後になって大惨事を引き起こす可能性だってあるわ。本人は辛いかも知れないけど、今の状況はこの坑道の扉が開けられて、その奥で何かを見たんだから非常事態よ」

「それはそうだが、お主はもう少し気遣いをだな……」


 ソランジュのセリフをバッサリと遮って、アニータは自分の考えをもう一つ告げる。


「後になって、あの時言っておけばこんな事にはならなかったって後悔したって遅いのよ。私より長く生きているのにそんな事も分からないの? それに、ここで喋ってしまった方が少しは気持ちのバランスが取れるかも知れないし」

「…………確かに、そうかもな」

「エルザ、お主はそれで良いのか?」


 言うべきかどうか迷っていたエルザは、アニータのセリフで決意した。


「ああ、私は構わない。アニータの言う通り、これは確かにこの世界の事に関わる重要な話だからしっかりと説明させて貰う」

「分かったわ。それじゃあ……話して貰えるかしら?」


 ドリスに促され、エルザは自分があの扉の向こうで自分が何を見たのかを説明した。

 自分の叔父である、マウデル騎士学院のエドガーの姿を……。


「エドガー学院長が!?」

「ああ。間違い無い。私はその時に叔父さんと会話も交わした」

「会話ってどんな?」

「レウスとアレットと私を誘拐する様に、あのウォレスって奴に命じたのは俺だと。俺には俺のやるべき事があるから、カシュラーゼの協力が必要だったと。そして……マウデル騎士学院の爆破事件は俺が引き起こしたとも言っていた。セキュリティの権限が全てあるのは俺だから、自作自演だったって……叔父さんはそう言っていたよ」

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