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53.どうしてこうなった?

 半ば逃げる様にして強引に話を断って来たアークトゥルスは、レウス・アーヴィンとして両親と合流した。


「おお、どうなった?」

「あー、俺……行かなくても良くなったわ」

「えっ、本当!?」


 パッとファラリアの顔に笑顔が浮かぶのを見て、レウスもつられて笑みを浮かべる。

 その隣ではゴーシュとファラリアと一緒にレウスの帰りを待っていたギルベルトが、レウスとドゥドゥカスを二人きりの状況にしてしまったので、何か良からぬ事が起こるのではないかとハラハラしながら待っていた。


「本当に……陛下は行かなくても良いとおっしゃったのか?」

「本当ですよギルベルト様。だからひとまず学院に戻りましょう」

「……あ、ああ……」


 国王命令ともなれば断り切れないとばかり思っていたのに、一体何が原因でこうやって断って戻って来られたのか?

 これもアークトゥルスの力なのか?

 不謹慎な考えではあるが、もしかしたら執務室で国王が机や床に突っ伏して血まみれで倒れているのではないか?

 アーヴィン一家をインハルト城の前で見送った後、踵を返した虎獣人の騎士団長は早足でドゥドゥカスの執務室へと向かった。



 ◇



 学院に戻ったアーヴィン一家の元に、復興作業に勤しんでいたエルザとアレットが駆け寄って来た。


「あ、お帰りレウス! どうなったの?」

「結構遅かったから私達は心配してたんだぞ! 話はついたんだろう?」

「ああ……俺はこの街に残って学院の再建の手伝いをする、って言ったからこのままここで作業を続けるよ」


 そのセリフを聞いた二人の騎士見習いは、レウスが執務室から出た時のゴーシュとファラリアと同じ様に、明るさを前面に押し出した表情を見せる。


「あ、それじゃあ学院に残る事になったんだな?」

「そうだな。まだ今の所はある。最初の内はやる気が無かったけどせっかく入学したんだし、騎士団員になるつもりは無いにしても何か色々学ぶのは嫌いじゃないし」

「そっかあ、良かった……これで私はレウスと一緒にまた学べるって事ね!」

「そうだな。親父と母さんもそういう事だから、俺はこの学院でまだ生活するよ」


 息子の意思を聞き、ゴーシュとファラリアはお互いに顔を見合わせて頷いた。


「分かった。それじゃ俺達はこのまま帰る事にする」

「たまにはこっちにも戻って来てね」

「そうするよ。学院が復興したら一回そっちに顔を出す予定だから」

「楽しみにしてるわ。それじゃ復興頑張ってね」

「俺もまたここに来る。今日は俺の取り引きの関係もあって復興は手伝えないけど、復興に関して何か必要なものがあったら言ってくれよ、エルザもアレットも」

「はい、ありがとうございます!」


 アレットのお礼の言葉を聞き、去って行くゴーシュとファラリアの背中を見送った三人は再び学院の復興をスタートする。

 エドガーの指示に従って分担作業が行なわれ、次第に少しずつ元の状態を取り戻して行くマウデル騎士学院。

 しかし、その容疑者でありこの学院の卒業生でもあるセバクターは依然として行方を眩ませたままである。

 彼は一体何処へ行ってしまったのか分からないまま、日が暮れる時間になってようやく今日の分の作業が終了した。


「あー疲れた……風呂入って飯食ってさっさと寝ようぜ」

「そうね。明日からはまた授業も始まるんだし、早めに寝ないとね」


 これから先の学院の片づけは、授業が無い時間帯の生徒達がローテーションで担当する事になっているのでいずれレウスやアレットにもその当番が回って来る。

 それに何時までも授業を中断している訳にもいかず、無事だった教室や訓練場を使ったり屋外での授業を増やしたりと、この緊急事態だからこその異例とも言える措置が取られる運びとなった。

 なのでレウスとアレットも、この学院の新しい(?)生活に備えてその日は疲れていたのもあって早めに眠る事にしたのだが、新しい生活は新しい生活でもまるで予想していなかった生活が待っていると知ったのは次に目覚めた時だったのである。



 ◇



「お目覚めかな?」

「……えっ!?」

「駄目だよ、復興作業が終わって疲れているからって油断してちゃあね」


 レウスが目を覚ますと、目の前には知らない男がニヤニヤと気持ち悪い笑みを浮かべながら勝ち誇った表情で立っていた。

 それと同時に自分の身体に違和感を覚える。

 疲れてそのまま制服のコート姿で眠ってしまったのはそのままに、後ろ手で縛り上げられている両腕は満足に動かせず、更に足も膝から折り曲げられて身体と密着する形で縛られているので立ち上がる事も出来ない。

 しかもここは眠っていた筈の寮の自室のベッドの上では無く、窓すら無い何処かの部屋の床の上であった。

 通りで身体中に変な痛みと圧迫感を覚える訳だ……と思いつつも、それ以上に目の前の見知らぬ茶髪の男に聞きたい話が沢山あった。


「お、おい何だよこれ!? 何が一体どうなってるんだよ!?」

「どうなっている? 見て分からないかな? 君はこうして僕達に誘拐されたのさ。色々とこれから協力して貰う為に、荒っぽい方法だけど学院から連れ出させて貰ったよ」

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