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554.違和感の正体

「何だこいつ等!」

「うわあああっ!」


 二番目の入り口から坑道内に侵入したソランジュとサイカとイルダー達は、坑道内部に生息している異形の魔物達と戦いを繰り広げていた。


「怯むな! こいつ等は森の中の奴等と同じ位の強さだし種類も似てる! 突き進めえっ!!」


 イルダーが先頭に立って勇猛果敢にロングソードを振り回し、坑道の奥から襲い掛かって来る小型の魔物を倒しながら道を切り開いて行く。

 最初は順調に探索を続けていたイルダーのグループだったのだが、どうやら「ハズレ」の通路に割り振られてしまったらしい。

 この魔物達が坑道の奥から次々に現われていると言う事は、どうやら魔物の繫殖場所がある様だ。

 せめて坑道の中にまで魔物が居ないで欲しかったのだが、今までこの坑道に入った時には必ずと言って良い程に野生の魔物が生息していたので、今回も結局こんな展開なのか……とその不運を呪いつつイルダーは愛用のロングソードを振り回して進む。


(ただでさえ奇妙な足跡が多かったってのに、魔物まで僕達の邪魔をするのか。くそっ、せめて他のメンバーをもう少しこっちに回してくれれば助かったんだがなあ!!)


 だがそのイルダーの心の中で協力を求められている他のグループの内、ヒルトン姉妹とアニータのグループは魔物では無く、突然現われた謎の武装集団と戦いを繰り広げていた。

 数としては大した事は無いものの、一人一人が妙に強いのだ。

 その妙に強い武装集団が、あの足跡を残した人物と同一人物であるかどうかは分からない。

 それでも、自分達に対して有無を言わさず襲い掛かって来ると言う事は味方では無いのは確かだ。


「くぅっ!!」


 躍り掛かって来た剣士の男のそのロングソードをハルバードの斧の部分で受け止め、足で蹴り飛ばして応戦するドリス。

 その傍らでは姉のティーナが愛用のロングソードを駆使して戦い、アニータがヒルトン姉妹に当たらない様にロングボウで援護する。


(やるわね……流石はギルドランクBクラスの実力者!)


 自分や姉のティーナよりも年下で小柄だが、そのアニータの弓使いには舌を巻くドリス。自分も弓は使えない訳では無いのだが、生まれ持ったセンスや経験の差と言った形で、どうしても自分は彼女に敵わないらしいと感じてしまう。

 だから自分は姉と一緒に前衛で戦って、ここで力尽きる訳にはいかないのだと気合いを入れて、まだまだ数の多い武装集団に立ち向かう。


「ふっ!」


 背の高い男から突き出される槍を横にずれて回避し、その槍を一気に叩き切ってから男の身体を身に着けている鎧ごと斬り捨てる。

 彼女が愛用しているハルバードはなかなか大きな武器であり、例えばイルダーと手合わせをした時の様な屋外で振り回すにはどうと言う事は無い。

 しかしこうした屋内で振り回すには、自分の持っている武器の大きさと自分自身のリーチの長さを頭の中に入れて戦う必要があるのだ。


(屋内だと、私のハルバードは壁や床に引っ掛かりやすいのが難点なのよねえ)


 それはドリスが姉のティーナとともに、冒険者を育てる養成アカデミーでの訓練を受けている時から教え込まれて来ている事である。

 そして彼女のハルバードと同じ……いや、少しだけではあるもののそれ以上に長い獲物を使うレウスはもっと大変だった。


「くおっ!」


 振り回した槍の先端が岩壁の出っ張りに引っ掛かってしまうレウス。

 それを魔物が見逃す筈も無く、大きな隙が出来た所に二匹纏めて飛び掛かって来る。

 レウスは咄嗟にバックステップで槍を引っ張りながら身を引き、ギリギリでその飛び掛かりを回避。

 自分の目の前に着地して、逆に隙が出来た魔物をまずは右足で蹴り飛ばし、もう一匹の魔物を構え直した槍で一突きして絶命させる。


「ギャン!!」


 獣人と何処か似ている、しかし獣人では無い狼の魔物をまずは倒したレウスはその前に蹴り飛ばしたもう一匹の魔物も素早く槍を突き刺して倒す。

 だが安堵の息を吐いている暇は無く、また更に魔物が坑道の奥からやって来るので、ここでレウスは戦況を考えて次の決断を下した。


「良し、ここは一旦退くぞ!!」

「分かったわ!」

「ああ、キリが無いからな!!」


 倒しても倒してもキリが無いこの魔物達相手に、これ以上突き進むのは危険だと判断し、こうして退く選択肢が生まれたのだった。

 そしてその選択肢と同時に生まれたのは、他の出入り口から坑道内に入った二つのグループの安否。


(まさか、残り二つのグループの方でも同じ事が起こっているんじゃ……!?)


 言い様の無い不安が、足早に撤退するレウスの頭を過ぎる。

 自分達がこの坑道の中でこうして魔物を相手にしていると言う事は、ほぼ確実に残りの二つのグループにも同じ危機が迫っていると考えるのが自然だろう。

 しかし、今こうして自分達が進んで来ているのは中を探索する為なのでなるべく後戻りはしたくない。


(今は魔物達が多いから一旦退いて態勢を立て直して、再び突撃したいのだが……ならばあの外の地面に沢山あった足跡は誰のなんだ?)


 明らかに人間や獣人の足跡らしいが、今の所この自分達が進むルートではそれらしき敵に出会っていないのがかえって不気味な展開である。

 もしかしたら、それこそ残りのどちらかのグループとその足跡の主達が戦闘状態になっている可能性だって大いに考えられる。


(くそっ、こう言う時こそ魔晶石で連絡を取り合いながら進みたいんだが……向こうも戦っているかも知れないから連絡が出来ないしな!)


 事前に探査魔術で坑道内部の様子を探った限りでは、恐ろしい数の気配を探知する事が出来た。まさかそれが全て魔物なのか?

 いや、そんな事はあり得ないだろうと考え直したレウスはアレットとエルザとともに、態勢を立て直すべく退却して行った。

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