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553.坑道にて

 不安感と不信感が自分達を包み込むのを覚えながらも、パーティーメンバー達は更に森の奥へと進んで魔物を討伐しながら、ようやく坑道の出入り口に辿り着いた。

 そこで先導していたイルダーが足を止め、レウス達の方を向いて尋ねる。


「この坑道なんだけど、出入り口が沢山造られているってのは知っているかな?」

「ああ、それだったらお前が気絶している間に村で情報収集をしたから知っている。と言っても、実際に来るのも見るのも今が初めてだけどな」


 ここに居るレウス達パーティーメンバーの人間達は、出入り口の話は村から仕入れた情報として共有出来ているものの、実際に見るのは今が初めて。部外者であるレウス達は当然何も知らないし、この坑道への道のりを辿って来たのも今が初めてである。

 しかし、ある程度この先のイルダーのセリフを予想する事は出来る。


「そうなんだ。じゃあもっと説明するけど、ここが森から一番近い出入り口。で、残りは今確認出来ているだけで他に二つの出入り口が存在している。それから今もまだ掘り進めている出入り口があるから、これからもまだまだ増えるだろうね。それだけここの鉱山は広いから色々な鉱物が取れるし、開通してからまだ日が浅いから悪い奴等が身を潜めるのにもうってつけって場所になるのさ」


 説明出来て何処か誇らしげなイルダーだが、そんなイルダーを見てもレウスは冷静だった。


「そうか。それでは人員を分けよう。俺達はここに居る全員で合計九人。ここを含めて三つの出入り口があるから、三人ずつのチームを三箇所から送り込み、中で魔物やここに先に踏み込んだ連中らしき人物を見つけ次第、場合によっては応戦して行くんだ。……ああ、それと今日はこの坑道で作業の予定はあるのか?」

「いいや、今日は丁度休みだよ」

「そうか。なら、今イルダーから聞いた通りだから気兼ね無く隅から隅まで調べろ」

「それは良いけど、その前にこれを渡しておくよ」


 そう言いながらイルダーが全員に渡したのは、この坑道の中の地図だった。

 出入り口が三つもある事からも分かる通り、かなり広いので迷うとなかなか出られそうに無い。


「助かる。じゃあそれぞれのチームに地図を配っておくが、俺達がここに入るのは初めてだ。用心して掛かるんだぞ、分かったな?」


 レウスの確認に、パーティーメンバーの女達の声が響き渡った。

 そしてグループ分けがされた結果、イルダーはソランジュとサイカと一緒に進む事になり、アニータとヒルトン姉妹で一つのグループになる。

 リーダーのレウスはアレットとエルザと一緒に、森から一番近いこの出入り口から坑道に進む事になった。

 レウスがこうしてこの国のダンジョンの中に入るのは二回目。今回挑むこのダンジョンの内部は、鉱物発掘作業を効率良く進める為に壁掛けタイプのランプが至る所に設置されている。

 しかし、進む前に地図を見せられた限りではやはり内部がかなり広い。

 それを暗に伝えるかの様に、掘られて造られている坑道の横の広さも天井の高さもかなりのものであり、色々な所に工事の跡が見受けられる。

 それだけこの坑道の作業に力を入れているのだろう、とレウスは漠然と考えているその先で、アニータが地面を見て黙り込んでいた。


「……どうした?」

「工事の人間が入ったにしては……やけに足跡が多い気がする」

「工事をしているんだったら色々出入りするからじゃないのか? 別に怪しい奴等がこの坑道の中に踏み込んでいるってのはこれだけじゃ決められないと思うけどなあ」


 あくまで素人の意見だけど、と最後にレウスが付け足すとアニータも一応納得した様で「ふむ」と小さく頷いた。


「杞憂で終われば良いんだけど」


 そう言い残して再び歩き始めたアニータの背中には、レウスもヒシヒシと感じる程の緊張感が漂う。

 その緊張感を纏う背中を持つアニータと別れたレウス達のグループは、広い坑道内をゆっくりと、しかし確実に探索して行く。

 それは別の場所から探索しているソランジュとサイカとイルダーのグループも、ヒルトン姉妹とアニータのグループも同じだった。

 内部がかなり広く造られているが故に、隠そうと思えば幾らでも身を潜められる場所があるこの坑道。

 もし仮の話で、以前出会ったあの黒髪の女の盗賊団がここに潜んでいるのであれば、何時何処から襲い掛かられても全く不思議では無いのだ。


「地図で見るよりも結構広いのね、ここは」

「そうなんだよね。でも慣れちゃえばスイスイと進める様になるから今は別に気にしなくても良いよ」


 何回かここに入った事のあるイルダーが先頭と言う事で、ソランジュとサイカの表情には何処か安心感が漂う。

 だがイルダーの表情は何だか浮かない。


「ねぇ、さっきから難しい顔してるけどどうしたのよ?」

「ちょっと気になる事があってね」

「……気になる事?」


 地図に目をやりつつアゴに片手を当てたイルダーの意味深なセリフに、ソランジュとサイカは注目する。そんな二人に注目されているイルダーは、三つ目の入り口から歩いて来た時から覚えていた違和感を口に出した。


「坑道の通路の数がちょっと増えている様な気がしてね。例えばあそこはこの地図には無い通路だ。地図は通路を開通する度に地図に描き足して更新するから、あの通路も工事で掘ったなら良いんだけど……何か、引っ掛かるんだよね」

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