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548.再会したあの男

 しかし、そのレウス達は王都シロッコを出る時に再び見知った顔と再会した。


「あー、やーっと見つけたっ!!」

「あれ、イルダー!?」

「イルダー、じゃねえよ! 僕がどれだけお前達の事を探し回ったと思ってんだ!? シロッコに辿り着いたら黒いドラゴンがいきなりやって来て中央広場の方で暴れ始めるし、結局お前達とは合流出来ないままだったし!」

「す……すまない、ちょっと色々あってな」

「色々って何だよ、説明しろよ!!」


 説明してくれないとここは通さないぞとばかりに城門の前を塞いでいるイルダーを見て、これは手短に説明してさっさと通して貰おう、とレウス達は自分達の自己紹介も兼ねて今までの流れを説明し始めた。


「……って事で、これから俺達はガルレリッヒ村へと行くんだ。せっかく連絡係になって貰ったのに、余計な手間を掛けさせただけになってしまった様で申し訳無い」

「え? ガルレリッヒ村って僕の地元なんだけど」

「ん?」

「えっ、貴様の地元なのか?」

「ああそうだよ。そもそも僕はこのシロッコに住んでいる訳じゃなくて、気ままな観光のつもりでワイバーンで出かけて来たんだよ。そうしたらお前達に出会ってこんな事に巻き込まれちゃったんだよ!」


 憤りを隠せない様子のイルダーだが、その彼の様子よりももっとレウス達が気になっているのは、彼の地元が今から自分達が向かおうとしているガルレリッヒ村だと言う事実だった。

 ならばせっかくの地元民に出会えた展開だと言うので、帰るついでに一緒に送って貰う事に決めたレウス達は早速交渉に入る。

 しかしレウスは余り口が上手くないので、ここはヒルトン姉妹の姉のティーナとアレットに頼む事にする。


「ねえ、それだったらついでに道案内をお願い出来ないかしら?」

「僕が?」

「そうですわ。今から貴方がそのガルレリッヒ村に帰るならと言う話ならですが、丁度目的地も一緒だし悪くない話だと思いますけど」

「そうそう。それなりのお礼もするわよ」

「……良いよ」

(あれ、やけにすんなりと話が通ったな?)


 レウスの脳内シミュレーションでは、イルダーの憤りっぷりからして「これ以上またないがしろにされるのは嫌だね」とか「僕はまだ旅行の続きがあるから一緒には行けないね」等と言う理由で断られるものとばかり思っていたのだが、まさかここまでスムーズに行くとは思ってもみなかった。

 しかし、イルダーからの条件に対して素直に従うべきかどうか迷うレウス。


「だけど条件がある」

「条件?」

「ああ。君達の実力を知りたいんだ。今までの話を聞いていたら、どうやら君達が相手にしているのは恐ろしく強い相手らしいからな」

「お、お主はいきなり何を言い出しているんだ?」


 戸惑いを隠せないソランジュを始め、レウス達の間に動揺と困惑の色が浮かぶ。

 それはイルダーも予想済みだった様で、特に気にせずに話を続ける。


「僕は本気だよ。ついでに言えば、その石像云々の話だって村に伝わる古い話で良く知っているさ。その石像をはめ込んで坑道の奥にある扉を開けば、その扉の奥にある何かに出会えるって話もね」

「知っているのか!?」

「そうだよ。だって僕はガルレリッヒ村の村長の一人息子だからな。僕の権限があれば坑道を見張っている村の自警団の団員にだって話を通す事が出来る。どうだい、交換条件としては悪い話じゃないだろう?」

「……う……」


 確かに魅力的な話だが、この状況で別に戦おうとは思っていないレウス達は悩む。

 絶対にやらなければならないとなれば、適当に相手をしてこちらが負ければ済む話かも知れないな、と軽く考えていたのだが、イルダーにはそれが見透かされていたらしい。


「言っておくけどさぁ、僕だって腕に自信があるからこう言う話をしているんだ。だから手を抜いたりなんかしないでよね。どーせ適当にやれば良いとか思っているんじゃないの?」

「……」

「ふん、図星か。だったらもうその坑道に案内しないよ?」


 だがそれについて、今まで黙っていたメンバーの中の一人であるサイカが口を開いた。


「でも考えてみれば、その盗まれた石像……あ、恐らくその扉を開く物と同じ物だと思うんだけど、それの現在の場所も分からないのに案内だけされても仕方が無い気がするのよね」

「私もそう思うわ。だからその戦いの話は無しって事にしましょうよ」


 サイカの考えにドリスも同意するが、その二人の意見に対して思わぬメンバーが反対意見を出して来た。


「私は賛成」

「えっ、ちょっとアニータ……何を言い出しているの?」

「だってその人の権限が無ければ、見張りの人も退いてくれない。無理やり入ったらその人を敵に回す事になる。それにもしその石像を盗んだ人物が扉の話を知っていたら、扉を開けて中にある何かを取り出す為に絶対に坑道にやって来ると思う」

「うーん、確かにその考えもあるけどねえ……」


 アレットも腕を組んで悩むが、どうやら話の流れはイルダーと戦う展開にしかならないらしい。

 そう考えたレウス達は、覚悟を決めてこのガルレリッヒ村の村長の息子と戦う事に決めた。


「……分かった、そっちの条件を飲もう」

「話が分かる人達で助かったよ。でもここでは出来ないから、ガルレリッヒ村の中に特設ステージを用意するよ。そこに着くまでに誰が戦うか決めておいてよね。それじゃ村に行こう」

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