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546.本来の目的

 それにエドガーがここにやって来たのは、赤毛の二人に対するディルクの叱責を聞きつけてそれを止めに来たからではなく、ディルクに頼み事があったからだ。


「で……だ、俺はちょっとディルクに頼みがある訳よ」

「頼みって?」

「俺を現地に派遣してくれや。そのシルヴェン王国って所にも、もしかしたらドラゴンの身体の欠片があるかも知れねえし、それが見つからなかったとしても何か別の手掛かりが見つかるかも知れねえだろ」


 自信満々にそう言うエドガーだが、それについて横から口を出して来たのはついさっきまでディルクに首を絞められていたヴェラルと、それを必死で止めていたヨハンナだった。


「俺達はあの国で色々と情報収集をしてみたが、それらしい情報は掴めなかったぞ」

「そうよ。それに今あの国は私達の砲撃のせいで厳戒態勢が敷かれている筈だから、不用意に近付くのは危険だわ」

「こんな時だからこそ、だ」


 エドガーは二人の忠告には耳を貸さず、代わりに自分がそう思う根拠を口に出して説明し始めた。


「今ヨハンナが言っていた通り、お前達はディルクの命令でシルヴェン王国の王都シロッコに向けて砲撃実験をしていた。そしてそれは成功したんだろう?」

「まあ、それは確かに大成功と言える結果にはなったが……」

「ならその結果として、王都のシロッコは今その砲撃で大混乱に陥っている筈だ。となれば他の町や村には確実に目が行き届きにくくなる。ただでさえ国の首都ってのは人や物が集まる場所だからな。それと、こんな状況だからこそ王都に侵入するのも容易いだろうしな」

「どうしてそう言い切れるの?」


 ディルクが不思議そうに問いただせば、エドガーは「混乱状態だからこそさ」と返答してから続ける。


「王都が混乱状態にあると言う状況、それも砲撃によって甚大な被害が出た。さっきヨハンナが厳戒態勢が敷かれているかもって言っていたが、そんな壊滅的被害を受けたって王都で厳戒態勢に回せる騎士団の人員はそうそう居ない。それに、どうやら王都にはあのドラゴンも現われて更に大混乱になっているらしいからそれも含めてチャンスだっつってんだよ」

「……ん? ちょっと待て、どうしてドラゴンが現われたって言うのが分かるんだ?」


 自分達だって実際に確認していない筈なのに、何故それをエドガーが知っているのかとヴェラルは不審に思う。

 しかし、それは彼の次の一言で納得出来た。


「俺だってただ無策でここでボーッと待っている訳じゃねえんだぜ? 騎士学院の学院長ともなれば、他にも動いてくれる人員にはツテとか当てとかあんのよ。そう……例えば盗賊団とかさ」

「盗賊団と繋がりがあるの?」

「そうだよヨハンナ。俺だって昔はゴーシュとコンビを組んでこのエンヴィルーク・アンフェレイアの世界中を冒険していたんだぜ。良いお友達も悪いお友達も沢山居る訳よ。で、今回はその盗賊団のお頭に直々に頼んでシロッコの様子を見て来て報告して貰ったのさ」


 そうして得た情報は、あの目の見えないドラゴンが王都シロッコの襲撃をしてくれていたと言う話だった。

 城下町はまさに阿鼻叫喚の地獄絵図であり、その混乱に乗じて難なく王都の中に潜入する事に成功したその盗賊団のお頭は、貴族街を中心に何かエヴィル・ワンの情報が無いかを探っていたのである。

 そもそも貴族達が我先にと自分達の身の安全の為に、殆んど着の身着のままの状態でシロッコの外へと貴族専用の出入り口を使って避難してしまった為、貴族の屋敷は何処もかしこもカギが掛かっていないノーロック状態だったからだ。


「それで調べて貰ったらよぉ、ちょーっとばかし気になる話を聞いたのさ」

「何?」

「シロッコには何もねえんだけど、南の方にあるガルレリッヒって小さな村から少し離れた場所に坑道があるんだよ。その坑道の中に隠し通路があるとか無いとかって噂をそのお頭から入手したのさ」

「へー、それは良くやったわね。それでそのお頭の仕事は終わり?」


 エドガーはヨハンナの質問に首を横に振った。


「いーや、そこはほら盗賊団のお頭だから盗みが仕事な訳でよ。十人位の部下を引き連れて貴族達の屋敷から目ぼしいお宝を盗み出したってのも聞いた。抜け目ねーなーって感心したよ。で、俺はそのガルレリッヒ村の坑道に向かおうと思ってんだ。実際に自分の目で見て確認してえからさ」


 だから自分を現地に派遣して欲しいと頼むエドガーに対し、今まで黙ってその話を聞いていたディルクが提案する。


「分かったよ。それだったら僕も何人か部下を出そう」

「いや、それは俺の方で決めさせてくれや」

「え?」


 せっかくの提案なのに断る気なの? と訝しげに思うディルクに対して、エドガーは赤毛の二人に目を向けた。


「俺と、この赤毛の二人の三人だけで現地に向かう。幾ら王都が大変になっていようと、そんな辺鄙へんぴな場所の村の近くだろうと、余り大勢の部下を連れて歩くと流石に目立つからな。それにお前等二人だって名誉挽回してえだろ?」

「それは……まあ私もしたいけど」

「俺もだが、本当に良いのか?」

「勿論さ。それで良いよな、ディルク?」

「ふぅん、君がそう言うなら良いけど、もし失敗したらどうなるか分かってるよね?」

「わーってら。だったら早速俺は出発の準備をしてくるから、その間にその砲撃実験の実験結果をこの筆頭魔術師様に話してやれよ」

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