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545.出番の無かったかつての勇者

 今回はその赤毛の二人を追い掛けている間に自分も知らない新しいドラゴンが襲来して来たので、討伐には出番の無かったかつての勇者と言う話になる。

 しかし、レウスとエルザが手に入れた情報もかなり重要なものなので、二人がそこまでの活躍をしていたのを聞いて活躍を讃える声がパーティーメンバー達の中から上がる。


「まさかあの二人がまた絡んでいたなんて……貴女達が居なかったら、私達姉妹を始めとして謎の砲撃の正体を掴むのが遅れていましたわ」

「そうよね。姉様の言う通りレウスとエルザのおかげよね」

「連絡がつかなかったのはお互いに大変な目に遭っていたからなのね。何にせよお疲れ様」

「お主達のおかげで、またカシュラーゼの企みが一つ分かったな」

「そうね。まさか大砲を使って砲撃実験をしていたなんて、絶対に許せないわ!」

「しかもあんなドラゴンまで開発するなんて……これは絶対にカシュラーゼの連中を叩き潰すしか無いわ!」

「……カシュラーゼはなりふり構わないから、こっちも死ぬ気で掛からないと」


 まさにアニータの言う通り、自分達の実験の為にこうして一国の首都を巨大なエネルギーボールの大砲を使って砲撃し、壊滅状態まで持って行ってしまうのだから、やろうと思ったら被害なんてお構い無しらしい。

 その話を目の前で聞いていたレメディオスとクラリッサが、痺れを切らして話を進めようとして来た。


「本題に戻っても良いか?」

「あのー、まだ事情聴取が途中だったんだけど……」

「あ……ああ、そう言えばそうだったな。すまんすまん」


 だが、シルヴェン王国騎士団の方はレウス達の口から何度も「カシュラーゼ」の単語が出て来た事で、これはどうやらかなり根の深い問題であると察していた。

 突然このシロッコに現われたドラゴンの話も、自分達より詳しく知っているらしいので一旦最初から話を纏め直して、情報の整理をするべくレウス達にもう一度事情聴取を開始するのであった。



 ◇



「今頃メモを落としたのに気が付くなんて、何をやっているんだ君達はっ!!」

「ぐっ!!」

「ぐえっ!」


 まさかのまさかで、この実験で一番重要な結果を記載したメモを何処かに落として来てしまった。

 そのせいで、普段は滅多に手が出ないと自負しているディルクからの右ストレートパンチを食らったヴェラルとヨハンナは、反論も出来ずにただ項垂れるしか無かった。


「何の為に僕が君達をシルヴェン王国に派遣したと思ってるのさ、え? 黙ってないで答えろよ!」

「……あの新しく建造した大砲を使ってエネルギーボールを撃ち出して、そのエネルギーボールの飛距離と威力、それからそのボールに使う魔力エネルギーの量を計測して、その結果をこっちに持って帰って来る事……です」

「そうだよ。なのにその結果を書いた紙を、あろう事か何処かに落として来ただって!? ふざけるのも大概にしろよ、おい!!」

「げはっ!」

「ぐふっ!?」


 今度は繰り出された右足の前蹴りが、ヴェラルの顔面とヨハンナの腹を捉える。

 ヨハンナに対して顔面を蹴らなかったのは、ディルクなりの最大限の優しさであった。


「これ以上僕を失望させるな。分かったらさっさと今から自分達が通ったルートを通って、何としても見つけて来るんだよ!」

「えっ、いやそれは不可能ですよ! 何処で落としたのかが分からないですし……」

「不可能を可能にするのがカシュラーゼだろうが!!」

「ぐほおおおおっ!!」

「ちょちょちょ、止めて下さいディルク様!!」


 今度は両手で力一杯首を絞められたヴェラル。

 勿論ヨハンナがその光景を見て静止しに入るのだが、何処からその力が出ているのか分からない位の力でギリギリと首を締め上げ続けるディルク。

 これ以上絞められ続けたら本当に死んでしまうので、ヴェラルはどうにかして息苦しさの中でこの苦しみから逃れようともがいた……その時だった。


「落ち着けディルク。そりゃーどう考えても無理だろ。だってそんな紙切れ、俺だって探しに行けって言われたら無理って答えちまうぜ」

「君は黙ってろ、エドガー!!」

「黙らねえよ。普段冷静で余裕のあるお前らしくもねえぜ。とにかくまずはその手を放して、それからちゃんと考えようぜ。俺に考えがあるからよ」

「考え?」

「ああ、その手を放してくれたら教えるよ」

「……分かったよ」


 渋々と言った様子であるものの、エドガーに説得されたディルクはヴェラルの首を締め上げていた両手を放してその考えとやらを聞く事にした。

 空気をやっと取り入れる事が出来たヴェラルは地面に両膝をつき、ゲホゲホと激しく咳き込んでいるものの、ディルクはそんな彼に見向きもせずにエドガーにその内容を話す様に促した。


「ほら、放したよ。これで話してくれるんだよね?」

「勿論さ。紙切れはどっかに飛んで行ったとしても、この二人の頭の中にはそのデータが残っている訳だろ? だったら記憶が薄れねえ内にそのデータの内容を話して貰えば良いじゃねえかよ。今あんたが首を絞めていたせいで、ヴェラルの記憶が薄れちまったかも知れねえしな」

「あ、そっかぁ!」

(そっかじゃないんだよ、そっかじゃ!!)


 心の中で悪態をつくヴェラルの視線なんてまるで気にならないディルクは、子供の様な笑みを浮かべてエドガーの提案を受け入れた。

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