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543.とどめ

 アニータのその呟きの内容が、まさに現実のものになった。

 自分の欲求に任せて特攻して行ったロルフは、副騎士団長とは思えないレベルの失態としてドラゴンの首振り攻撃に吹っ飛ばされてしまう事態となったのだ。


「うおああああああっ!?」

「何だかなぁ……」

「あーあ……途中まで凄いと思っていたんだけど、あんなにむやみに突進して行くものなのかしら?」

「いや、普通やらないでしょ」


 そのロルフの特攻を見ていたドリスとティーナは、ロルフがワイバーンでドラゴンに向かって特攻して行く姿を見て呆れ顔になってしまう。

 しかしロルフが自分達の近くに向かって落ちて来たのが見えたので、二人は彼の様子を確認するべく落下地点へと急いだ。


(全く……ロルフはああやって特攻する癖があるからたまに見ていられんのだ)


 ヒルトン姉妹が動き出したのを、別の場所で見ていた人間が一人。

 それはロルフの上司であり、同じくワイバーンに騎乗して戦う事もあるレメディオスだった。

 彼はロルフが特攻して行った事に怒りと呆れの両方の感情を抱えながらも、あのドラゴンをどうにかしないといけないので自分が直々にドラゴンに立ち向かうべきだと考えていた。

 ロルフがきちんとワイバーン部隊を率いていてくれれば、こうやって自分が出る事も無かった筈なのだが……と考えながらも、ワイバーンに乗り込んでドラゴンの目の前へと向かって飛び立つ。


(先程からあのドラゴンの動きを見ていると、どうやら身体の何処かに何か問題を抱えているらしいな。動きが普通のドラゴンとは思えない位に滅茶苦茶だから、これは様子を見て攻撃をするしか無いだろう)


 自分はロルフの様に調子に乗って特攻を仕掛けたりはしない、と改めて肝に銘じたレメディオスは愛用のロングソードを腰の鞘から引き抜き、ドラゴンのそばに近付きながらまずはその動きを観察する。


「ここからは私がこのドラゴンを引き付ける! お前達は援護と攻撃を頼むぞ!」


 ただし、ただ引き付けるだけでは戦況に進展が無いので、ロルフが率いていた部下達に大声でそう命じてからの話になる。

 相変わらず大暴れするドラゴンをこのままにしておけないレメディオスは、まずじっくりとその戦い方を分析し始めてすぐに眼球が無い事に気が付いた。


(眼球が無い。となれば目が見えていないのか!)


 こんなドラゴンに出会ったのは初めてだが、目が見えない事を除けば一般的なドラゴンと変わりは無いのだとすぐに判断出来た。

 なのでまずはワイバーン部隊の一人に、地上にいる騎士団員達に連絡を取ってドラゴンの足を集中攻撃して貰う様に指示を出す。足を潰してしまえば何とかチャンスを見い出せると信じ、それまでは自分がまるで蠅の様に飛び回ってドラゴンをかく乱する。


(こんな大きい上に凶暴な敵を相手にして、調子に乗ったらそれで一貫の終わりだ。恐らくロルフはそこで一気に行けると確信して調子に乗った結果がああだったんだろう。ここでそんな戦い方をするのはまさに愚の骨頂。的確に相手の弱点を突き、弱った所で仕留めるのみだ!)


 唇をペロリと舐めて気合いを入れ、レメディオスは一旦ドラゴンから距離を取って再び接近。

 そのレメディオスの動きに合わせる様にして、地上部隊がヒットアンドアウェイ戦法でドラゴンの右二本の足を中心にして攻撃を仕掛けまくる。両側それぞれの足をバランス良く狙っていては何時まで経ってもダメージが溜まらないので、片側への集中攻撃である。

 それのおかげでドラゴンが呻き声をあげ、右足の踏ん張る力が弱まって右に身体が傾いた所でレメディオスは再びドラゴンに接近し、その顔面をロングソードで斬り付ける事に成功した。


『グアアアアアアアッ!!』

「今だ、畳み掛けろ!!」


 このタイミングで斬り付けたのはドラゴンにダメージを与えろと言う合図であり、実際に自分で斬り付けてみて手応えがあるかどうかを探る為でもあったのである。

 思った通り手応えがある事が確認出来た以上、このチャンスを逃すまいとレメディオスも加勢してドラゴンへの集中攻撃を行う騎士団員達。


「私達も行くわよ!!」

「勿論だ!」


 周りの住民達の避難が終わった事を確認したサイカとソランジュも、ドラゴンを攻撃する騎士団に加勢して更にダメージを与える。

 別の場所からはアレットが攻撃魔術で援護し、アニータが弓でドラゴンの身体を狙い、ヒルトン姉妹もサイカとソランジュと同じ様にドラゴンの右足へのダメージを与える。


『グギャウウウウッ、ガアアアッ!!』

(私もここで本気を出す。一瞬で終わらせるぞ!!)


 悲鳴を上げながら右に向かって横倒しになったドラゴンを見たレメディオスは、今こそロルフの様に一気に行く時だと判断。別に一気に仕掛けるのが苦手な訳でもやらない訳でも無く、単純にそのチャンスを虎視眈々と狙っていただけの話である。

 その仕掛けるタイミングをものにしたレメディオスは、ワイバーンで再びドラゴンの顔面目掛けて突進。

 同時にワイバーンの背中の上で仁王立ちになってバランスを取りながら、目標地点に近づいた所でそこに着地するまでのズレを計算してから一思いに飛び降りる。

 そして、その手に握られたロングソードをドラゴンの顔面に向かって、飛び降りる勢いも使って一気に突き刺した!!

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