537.突然の砲撃被害
「吹っ飛べっ!!」
「っ!?」
何だか聞き覚えのあるそのフレーズに、エルザの注意がヴェラルの方を向いた。
それを見逃さなかったヨハンナは、渾身の力を込めてエルザのマウントポジションから逃れる。
それを確認したヴェラルは、エルザの背中側を狙う様にしてなるべくヨハンナに着弾時の爆風が行かない様に弾道を調整し、引き金を引いた。
ヨハンナはヨハンナで、ヴェラルが狙った場所に向かってエルザを前蹴りで蹴り飛ばした。
「くっ……!」
もう駄目だ、このままでは直撃は免れない。
エルザは咄嗟の判断で、足の力を全て抜いて体勢を低くした。
その彼女の少し上をエネルギーボールが掠め、一拍遅れて爆風が起こる。
木々が吹っ飛び、エルザとヨハンナも吹っ飛んでお互いに地面に叩き付けられた。
「ぐはっ……」
「ぶほえええっ!!」
同時に吹っ飛んだ二人の女だが、当然爆心地に近いエルザの方が大きなダメージを受けてしまった。
その光景を見て、ヴェラルは自分の弟子であり相棒でもあるヨハンナの身体を抱え上げて自分達が乗って来たワイバーンに向かって駆け出す。
勿論、担ぎ上げたヨハンナに対して回復魔術を掛けて今のダメージを回復させるのを忘れずに。
そして残されたレウスとエルザはお互いにピクリとも動かず、この大砲のそばで意識を失ったままだった……。
◇
レウスとエルザが大砲から発射されたエネルギーボールの光を見た、その少し後。
ヴェラルが自分の部下から砲撃がしっかりと届いた連絡を貰っている時、王都のシロッコは唐突に起こった町中の大爆発に阿鼻叫喚の地獄絵図と化していた。
「おいっ、医療部隊はまだか!?」
「あっちでもこっちでも火災が起こっているぞ、すぐに誰か消しに行け!」
「うわぁぁぁん、おかーさあああん!!」
「ちょっとお、ウチの人を見なかった!?」
町中が大パニックで何処で何が起こっているのかの事態も把握出来ず、爆発のショックで逃げ惑う人々と何とか一つずつ問題を解決しようと奔走する住民や騎士団員達の姿があった。
当然、その砲撃が着弾した衝撃はボーセン城で待機していたレウスのパーティーメンバー達や騎士団のメンバーにも届いていた。
「な、何が起こったのよこれは!?」
「分からないわ。だけど何かが起こってシロッコの町中が大変な事になっているのは確かね」
「そうだな、ここからでも色々と悲鳴が聞こえて来るから私達も助けに行きたいのだが……」
同じくパニックになっているサイカと、冷静に状況を分析するアニータの姿を見て、自分達も何か力になれないかと身体がムズムズするソランジュ。
六人はボーセン城の中にある大きな来賓室で待機させられていたのだが、そこから見える光景に唖然としていた。
いきなり轟音が轟いて城が少し揺れたかと思えば、城下町から幾つも見え始めた黒煙と、聞こえ始めた悲鳴や怒声に何が起こったのか全く把握出来ていないのだ。
そんな六人の元に、バタバタと慌ただしく駆けて来た第三騎士団の副騎士団長であるロルフが、ノックもせずに部屋に飛び込んで来た。
「おいっ、お前等も悪りーけど手伝ってくれっ!」
「な、何があったの?」
「分からねえけど、とにかく城下町中が何者かによって大惨事になってやがんだよっ!!」
ソランジュがやりたかった事がどうやら向こうからやって来たらしいので、そのソランジュを含めた六人は当然城下町へと繰り出す事になった。
「私達は何をすればよろしいのですか!?」
「住民を城門の外に避難させてくれ。それから燃えている建物や崩壊しそうな建物を見回って、取り残されている住民が居たら助け出してくれ!」
「場合によっては回復魔術も使うわよ!」
「ああ、頼んだぜ!!」
ティーナやドリスにそう指示を飛ばし、ロルフも自分の部下に指示を出すべく城下町へと駆け出して行く。
パーティーメンバーの六人もすぐに城下町へと向かい始めたが、その中でアレットだけは悔しそうな表情になっていた。
(もう……こんな時にレウスとエルザは何処に行っちゃったのよ!?)
そのレウスとエルザも今、かなり大変な事になっているのだが当然アレット達は知る由も無い。
この突然の事態に、通話用の魔晶石が熱くなっている事にも気付かないまま、一行はロルフに指示された通りにシロッコの住民達の救出と避難を手伝うべく町の中へとバラバラに散って行く。
何かあればそれぞれの魔晶石で連絡を取る事を約束し、自分の成すべき仕事をしようと決意した。
「うわあ、これは酷いわね……」
「何処の誰がどうやって何をしたのか、はたまた自然現象でこうなったのか……何にせよ、この状況は余りにも異常過ぎる!!」
だが、王都シロッコが多大な被害を受けただけでは終わらないのがこの展開。
この非常事態では大きな爆発が起こり、町が壊滅状態に陥った他にも大きな爆発音が響き渡ったのだ。
それを地響きとともに感じ取った、異様な存在がシロッコの城下町に向かって少しずつ接近しているのを城下町の住民やアレット達は知らなかった。




