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536.そう言えば、これが二度目の対戦なんだよな?

 簡単にパーティーメンバーの特徴をイルダーに伝えて、王都シロッコに向かう彼を見送ったレウスは広場にワイバーンを着陸させ、ヴェラルに向かって槍を構えて走り出した。


(やはりあの赤毛の二人がここに居たのか。ヨハンナの方はエルザが戦っているから、俺はヴェラルの方だ!)


 足元に転がっていた手のひらサイズの石をヴェラルに投げ付け、そして彼が怯んだ所に飛び掛かるレウス。

 ここでこいつを逃がしてしまえば、この大砲の謎を聞き出す事も出来なくなってしまう。


「お前だけは絶対に逃がさない!」


 槍を使って、ロングソードのヴェラル相手に奮戦するレウス。しかし相手もなかなかの実力者なので気は抜けない。

 実際、マウデル騎士学院でのファーストコンタクトでは負けてしまっているのだから。

 ヴェラルが振り被って来るロングソードを避けて、そのまま槍を薙ぎ払うがこれはガードされる。そこで一旦距離を取って、槍のリーチを活かしてじわじわと攻める戦法で行こうとするレウス。


(こしゃくな……!!)


 その戦法に気が付いたヴェラルは奥歯をかみ締めるが、これは武器の特性上仕方の無い事である。


(それにしても、俺と互角に遣り合える程まで腕を上げたとはな!)


 ヴェラルは世界中で名前を売っている傭兵として知られているのだが、目の前のレウスはそんな自分と互角に戦っているのだ。

 騎士学院の時にはヨハンナのサポートがあったとは言え、自分はこの男に一度勝っているだけあって相手の手の内は知っている筈だったのだが、今のレウスは確実に攻撃力もスピードも反射神経もレベルが上がっている。

 それでも、どちらもこの勝負で負ける訳には行かない。

 一人は自分が雇い主のカシュラーゼから頼まれた実験の結果を、その雇い主に届ける為。そしてもう一人はこの大砲の秘密を目の前でロングソードを振るうこの男から聞き出す為に戦う。

 槍を突き出してじわじわ攻めるレウスであるが、それでもヴェラルは怯む事無くロングソードで対抗する。


「はっ!」


 ロングソードを突き出し、槍の振り払われた瞬間を狙うヴェラル。それを肩を掠める様にギリギリで避けるレウス。

 勝負としては全くの互角であるが、いずれ決着が着く時は必ず来るのだ。


(余り自分の体力を消耗させるのもまずいな。向こうでもまだエルザが戦っているから、俺も加勢しに行く必要があるかも知れないしな!)


 だったらとにかく、この戦いはさっさと終わらせなければいけない。

 相手もなかなかの使い手である事は十分レウスも承知の上であるが、それでも人間であるが故に何処かで隙が出て来る筈である。


(ならばこっちから動いてみるか!)


 隙を狙って待ち続けるのでは無く、レウスは何時もの「待ち」のバトルスタイルを変えて自分でヴェラルの隙を生み出させる様に仕掛けに行く。


「おら、おら、おら、おら!」


 息もつかせぬ様な連続突きを仕掛け、そのまま後ろの太い木の幹へと押しやって行く。


「ぐっ!?」


 後ろが無い事を痛感したヴェラルは、槍の突き出して来る軌道をその動体視力で見極める……のでは無く、連続突きから逃れるべくしゃがみこんでそのまま前へとタックルをかます。


「うあっ!?」


 足を取られて転倒したレウスは、ヴェラルに素早く馬乗りになられてマウントポジションを取られてしまう。

 だが、槍から一旦手を離してヴェラルの頭を掴んで思いっ切り頭突き。


「ぐがっ!?」


 ヴェラルが怯んだ所でレウスは両足で相手の腹を蹴り上げ、何とか窮地を脱出し槍を再度手に取る。

 そのまま距離を取ってヴェラルを見据え、見据えられたヴェラルも同じくレウスを見据え返した。


「はぁ……はぁ……はぁ……」

「ふーっ、ふーっ、ふーっ……」


 レウスとヴェラルはお互いに荒い息を吐きながら、相手を見据えて武器を構える。恐らく次の攻撃で最後になるだろう。

 一拍置いて、二人は同時に駆け出した。


「やあああっ!」

「おらあああっ!」


 レウスが槍を振るうが、ヴェラルはその槍の下を潜って回避。

 そのまま起き上がって振り向きつつロングソードを薙ぎ払うが、それをレウスはしっかり弾き、隙が出来た所でヴェラルの心臓目掛けて槍の先端を突き刺した。


「おがっ!? あっ……」


 胸当てを突き刺されたヴェラルをそのまま木の幹へと押しやり、更に深く突き刺す。


「ぐっ……」

「ぬああああああっ!!」


 しかし、ヴェラルもこれで終わりでは無かった。

 槍が胸当てを貫通して心臓に到達する前に、一旦ロングソードを手から離して両手で槍の柄を掴み、斜め上にジャンプしてその勢いで槍を引き抜く。

 そして空中で前方に向かって縦に回転し、自分の右足の踵をレウスの脳天に振り下ろした。


「ぐごっ」

「はっ……はぁ……はあ……!!」


 本来ならこの場で殺しても良いのだが、カシュラーゼからの要求がある上にこの先も間接的ながらエヴィル・ワンの身体の欠片を集める為にこの男の力が必要になるだろう。

 そう考えたヴェラルは、不本意だと分かっていてもここは気絶したレウスを放っておいて、ロングソードを鞘に納めてから持ち物の中の新開発の「ランチャー」をエルザとヨハンナの方に向けて構えた。

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