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533.連絡がつかないぞ?

 だが、そこでエルザが先程の光景を思い出した。


「ちょっと待て。貴様の言っているそのお頭とやらに私とこのイルダーがさっき出会ったぞ?」

「そうなのか?」

「そうだ。確か名前はウルリーカとか言っていたな。あの女は何時も何処で行動しているんだ?」

「それも知らねえ! 噂に聞く限りでは各国の分隊の様子を見回っているって話だったけど、俺もお頭の顔を見たのは今日が三回目だったんだ。だから俺もあのお頭の顔はハッキリ覚えてねえんだ。ほ、本当だって!」


 前に出会った、あのメイベルと言う女のリーダーが率いているダウランド盗賊団と言いどうやらこの南の地域では女のリーダーが率いている盗賊団が幅を利かせているらしい。

 しかも何度もリーダーと出会ったダウランド盗賊団とは違い、エルザとイルダーの目の前からすぐに姿を消してしまったあの黒髪のウルリーカが率いているこの盗賊団は、自分達の所在をなるべく掴ませない様にする為に情報の共有を避けているのだろうと推測するエルザ。

 だとしたらかなり厄介なのは分かるが、これだけ話して貰えればもう十分だろう。


「……分かった。だったら私達三人をこの崖の下まで乗せて行ってくれ。貴様のワイバーンは何処にある?」

「向こうだよ。さっさと行くから着いて来いよ」

「何を偉そうに言ってんだよ」


 エルマンの態度にカチンと来たレウスを先頭に、彼の後に着いて行った三人はそのワイバーンに四人乗りと言う形で崖の下まで下ろして貰った。

 今まで自分達が乗って来た、やや大型のワイバーンとは違って機動性を重視した小振りなワイバーンだったのでスペース的にはかなりきつかったが、それでも崖の下まで降りるだけだったので大した事は無かった。


「じゃあな、あばよ!!」

「ふんっ、どうせまた悪事に手を染めるくせに……」


 回収した自分の槍を片手に、まだあのエルマンの言う事を信用出来ていないレウスとその仲間二人に見送られ、エルマンはワイバーンに乗って大空へと飛び立って行った。

 そして、自分達も崖の下に待機させてあるワイバーンに乗って先程の光が見えた場所へと向かおうとしたのだが、その前にやるべき事があった。


「あ、そうだ……先にアレット達に連絡を入れておかなければな」

「そうだな。じゃあ連絡を頼む。それからイルダーももう本当に大丈夫だから、ここから先はもう帰って良いぞ。今まで助かった」

「いや、せっかくここまで来たんだから僕も行くよ」


 しかし、イルダーはまだレウスとエルザに着いて来るつもり満々らしい。

 エルザが連絡用の魔晶石を懐から取り出すのを横目で見ながら、そのイルダーの答えに対してはあーっと溜め息を吐いて額に手を当てるレウス。


「待て待て、お前はイズラルザの町で俺の言った事を忘れたのか? 俺達が相手にしている二人は何をしでかすか分からないってな。だからお前はさっさと騎士団に連絡して応援を呼んで来いとあの時言った筈だ。もしかしたらこの先にあの二人が居るかも知れないんだぞ!」

「だからこそだろう。二人だけだと人手不足じゃないのか?」

「それでも関係の無い人間をこれ以上巻き込む訳にはいかない。気持ちだけ貰っておくからさっさとお前は帰れって言っているんだ!」

「僕の腕が信用出来ないって言うの? 実際にここをこうやって三人で乗り越えて来たんじゃないか」

「それはそれでこれはこれだ。お前はあの赤毛の二人の恐ろしさを知らないからそう言えるんだよ。実際、あの筒がもたらした惨状をお前も見ただろう!」


 だが、そんな押し問答を続けているレウスとイルダーの横からエルザが怪訝そうな表情で話し掛けて来た。


「取り込み中悪いが、こっちもどうやら取り込み中らしい」

「……どう言う事だ?」

「連絡がつかない。呼び出しに応答しないんだ、アレット達が……」

「は?」


 そんな馬鹿な話があるか。

 まさかと思ってエルザからひったくる様に魔晶石を奪い取り、耳に当ててみるレウスだが確かに何も応答が無い。


「……確かに応答しないな。でも気が付いていないだけじゃないのか?」

「全員に連絡を取ろうとして、その全員が反応しない様な事があるとでも?」

「んー、それは確かに妙だな」


 アニータにはまだ自分と連絡を取る為の魔晶石を与えていないので、連絡がつかないのは分かる。

 しかし残りのメンバー全員にも連絡がつかないのは妙だ。

 一体何が起こったんだろうと腕を組んで考える二人だが、ここで悩んでいても答えは出そうに無いので、とりあえずあの妙な光が見えた方向へとワイバーンを飛ばして向かう事にした。

 イルダーは止めても聞いてくれそうに無いので、不本意ながらも同行を許して一緒に来て貰う。


「良いか、これで最後だからな! あの光の正体を確かめる以上に俺達にまだ着いて来るって言うんだったら、本気で怒るからな」

「分かりましたよー」

(本当に分かっているのか、こいつは?)


 あーあ、厄介な事がまた増えてしまった。

 そう思いながらレウスがエルザを自分の後ろに乗せ、イルダーとともにあの光が見えた方角へとワイバーンを進ませ始めたその頃、その光が発生した場所では赤毛の二人がデータの収集に励んでいた。

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