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532.取り引きと行こうじゃねえか

『レウス? え、貴様も今の光を見たのか!?』

「貴様も……ってエルザは何処に居るんだ?」

『今はイルダーと一緒に、さっき貴様と離れ離れになった先に進んだ所から出た崖の上に居るんだ。貴様の方こそ今は何処に居るんだ?』

「えっ? お、俺も崖の上だが……」


 と言う事は、もしかしたらこの近くに居るかも知れない。

 レウスは未だに足元に倒れているエルマンの手の上から足をどけてやり、代わりにその胸倉を掴み上げた。


「おい、この洞窟迷路の構造はどうなっている?」

「は、はぁ?」

「構造を教えろと言っているんだ。何処か別の場所からも、この崖の上に出て来られるのか?」

「え、えーっと……確かもっと向こうの方にも出入り口があった気がすんぜ」


 そう言いながらエルマンが指を差す方向を見てみると、確かにまだ崖の上の地面が続いている。

 もしかしたらその向こうにエルザとイルダーが居るかも知れないので、レウスはエルマンの胸倉を左手だけで掴み上げたままそっちの方向に歩いて行く。

 すると、確かにそこにはエルザとイルダーの姿があったのだ!


「二人とも、どうやら無事だったらしいな」

「貴様こそ無事で何よりだ。どうやら最終的にはこの崖の上に繋がっていたらしいな」


 再会を喜ぶレウスとエルザだが、その横でイルダーがレウスの左手の先を見て震える声で呟いた


「あ、あのあのあの……それは良いんだけど……」

「何だ?」

「そ、その左手の先に持っているそれは一体……」

「え……うお!?」


 自分でやらかした事とは言え、流石に自分の手の先で一人の人間が宙吊り状態になりながら泡を吹いていれば、それは驚くべき状況であった。

 急いでレウスはエルマンを地面に下ろしてやり、回復魔術を掛けて意識を取り戻させる。


「おい、さっさと起きろ」

「は……はっ!?」

「お前にもう一つ質問がある。この下が燃えているってなると、何処かに脱出する為の手段を当然用意しているんだろう?」


 まさか何の策も無しに、この貯蔵庫の中に火をつけるなんて事はしないだろうと思うレウス。

 それについては敵もそこまで無策では無かったらしく、勿論だと素直に答え始めた。


「ああ、俺達は最終的にこの貯蔵庫に火を放って証拠を隠滅し、そのままワイバーンでこの上から脱出する手筈だったんだよ。だがそれをてめえがこうやって邪魔しやがって、その上しかも赤毛の二人が何だかんだって訳の分かんねえ事を言いやがって、一体何を考えてんだよっ!」

「赤毛の二人の行方を考えているに決まっているだろう。で、その二人は今の見えた光と何か関係があるのか?」

「だから知らねーって言ってんだろうが。そもそもさっきの光ってのも確かに見えたけど、俺達はあんな方向に向かって何かをする用事なんて無えんだよ!!」


 ここまで必死に否定すると言う事は、本当に何も知らないのであろうとここでレウスはようやく諦めがついた。


「そうか……だったらお前を騎士団に渡すしか無いな」

「ま、ままま待ってくれ。と……取り引きしようじゃねえか!!」

「取り引き?」


 レウスの口から出た「騎士団」と言う言葉に対して過剰反応を見せるエルマンが、唐突に取り引きを持ち掛けて来た。

 いきなり何を言い出すのかとレウスは考えるが、意外にもエルザは乗り気らしい。


「ほう、その取り引きの内容によっては貴様を見逃すと言う手もあるがな」

「おいエルザ、お前は正気か? この男をここで逃がしてしまったら、それこそまたシンベリ盗賊団が世界中で被害を生むかも知れないんだぞ?」

「貴様の言う事は確かにもっともだ。だが、それよりも私達はやらなければならない事があるだろう。今はこの盗賊団を捕まえるよりも先に、あの赤毛の二人の行方を掴むのが先だ」


 そこまでエルザが言うと、レウスはうっと言葉を詰まらせる。

 確かにこんな小悪党に関わっている暇は無い。こうしている間にもあの赤毛の二人が何かをしようとしているかも知れない。

 そう考え、レウスは溜め息を吐いてからその取り引きとやらの内容を聞いてみる事にした。


「分かった。ただし余りにも下らない取り引き内容だったら、この崖から突き落とすからな」

「下らなくなんかねえよ! その……ここの貯蔵庫が今燃えているだろ。それでお前達が脱出するのは危険だから、俺のワイバーンで崖の下まで乗せて行ってやろうっての。な、悪くねえ相談だろ?」


 しかし、それだけでは取り引きの内容としては弱い。

 なのでレウスは更にエルマンの条件に付け加える形で、こんな取り引き内容も提案した。


「まだ弱い。少なくともお前の所属しているシンベリ盗賊団とやらの人数、それから部隊の規模や主な活動場所、今までの犯罪歴を洗いざらい話して貰わなければな」

「そ……それについては俺も良く分からねえんだよ!」

「分からないってどう言う事だ?」


 今までずっと話を聞いていたイルダーがそう尋ねれば、エルマンは妙な事を言い出した。


「お、俺の所属しているシンベリ盗賊団は世界各地に支部とか部隊があるんだよ。俺はこのシルヴェンを拠点としている分隊のリーダーをやってんだ! だけどそれ以外については機密情報って事でお頭からも知らされていないんだよ! だから他の分隊にどんな奴が居るのかとか、何処を拠点に活動してんのかも知らねえんだ!」

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