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531.詰問

「お前等、一体何を企んでいる?」

「何を……って、これ見りゃー分かんだろ。俺達はここに盗みに入ったの。それでこれから逃亡するの。ってかお前こそ何なんだよ、人に向かっていきなりこんな槍なんか投げ付けて来やがってよぉ!?」

「決まっているだろう、お前があの赤毛の二人の仲間だからだ」

「は?」


 レウスの一言に、赤毛の若い男は呆気に取られた表情をする。

 そしてそれを見たレウスは、直感ながらこの男とあの赤毛の二人は何かが違うと思った。

 しかし、それも自分を騙している可能性があるのでここは気を緩めずに詰問を続けるレウス。


「だから、お前はあの赤毛の二人とどう言う関係があるんだ? 知っているんだろう、あの赤毛の二人がここに来ている事も、それからここの貯蔵庫にあるとされているあいつからの手紙を奪おうとしている事も!」

「ま、待てよおい……何の話だかさっぱり分からねえぞ?」

「とぼけても無駄だ。あの二人がワイバーンを使ってこの騎士団の貯蔵庫方面に向かったって言う目撃情報があるんだ。それにお前は今そうやってワイバーンを使って逃亡しようとしている。この貯蔵庫の中から盗み出した物と一緒にな。さぁ答えろ、あの二人は何処に居る?」

「だぁ、かぁ、らぁ……俺はそんな二人なんて知らねえっつってんだろうがよ! てめえは耳が腐ってんのかこの野郎!!」


 身に覚えの無い事で問い詰められるのに良い加減うんざりし、堪忍袋が切れた赤毛の男はレウスに対して愛用のロングバトルアックスを片手に一気に肉薄して来た。


「ぶっ殺してやらああっ!!」

「ふん……」


 大きな魔術を発動出来るだけの時間的余裕は無い。

 相手との距離がかなり近い為、詠唱をしている間に一気に接近されてしまうからである。

 それに先程、男を足止めする為に自分の愛用の槍を投げ付けてしまったレウスは丸腰である。

 が、この状況でもレウスは冷静に相手の動きを見ながら体術で対処を始めた。

 男とのリーチの差はかなりある上に、ロングバトルアックスを振るスピードもそこそこ速い。

 しかし、それもレウスにとっては「そこそこ」のレベルで見切れないスピードでは無い。

 足場の不安定さに注意しながら徐々に間合いを詰め、振るわれるロングバトルアックスを身体を捻ったり屈んだりしてしっかり回避。

 レウスに自分の攻撃を避け続けられる事で、男は段々とフラストレーションを溜める一方で体力も消耗する。防御よりも攻撃をする方が体力の消耗が激しいのが一般的であり、ゼエゼエと息が荒くなり始める。

 勿論、体力が消耗するに従って攻撃のスピードも遅くなる。

 そこに隙を見い出したレウスは大振りの攻撃を再び屈んで回避し、その姿勢を利用して両手を使って身体を前に押し出しつつ、両足をまっすぐ男の足目掛けて突き出した。


「がっ!?」

「まだまだだな」


 両足を同時にレウスの両足で蹴り飛ばされた男は、前方に転ぶ形で地面に倒れ込んだ。

 レウスはこれ以上彼が攻撃出来ない様に、ロングバトルアックスの柄の部分を右足で踏み付けて持てない様に押さえ付けながら、左足で男の手を踏み付ける。


「ぎゃああああっ、いでえええええっ!!」

「これ以上このまま痛い目を見続けたくなかったら、素直にあの赤毛の二人の情報を喋るんだな」

「だ、だから知らねえって言ってんだろうがああああああっ!?」


 この期に及んでまだ口を割らないらしいので、レウスは手を踏み付ける足に力を込める。


「手が一生使い物にならない様にされたいか、それとも前歯を俺のブーツの先端で叩き折られるか……他にも色々とこっちには考えがあるんだけどな」

「だから知らねえって、赤毛の二人は知らねえって!!」

「なら、骨の二本や三本の覚悟は出来ているって事だな」

「そうじゃねえよ、本当に知らねえんだよっ……こ、この奪った物は全て返すから見逃してくれよ!」

「ふむ、それでは質問を変えようか。お前は一体何者だ?」


 これ以上同じ質問を続けても同じ答えが返って来るだけだと悟ったレウスは、赤毛の二人に関する質問から変更して男の正体を問う。

 すると男はこれ以上の苦痛には耐えられないと思ったらしく、素直に自分の身分を明かし始めた。


「お、俺はシンベリ盗賊団のメンバーのエルマンだ!」

「シンベリ盗賊団?」

「そうだよ、世界中で盗みを働いたり殺人を含む犯罪をしている盗賊団だよっ!!」

「へー、だからあの赤毛の二人とも手を組んだって訳か?」

「だからそれは知らねえってあああああっ!!」

「……ん?」


 更にレウスが足に力を込め、エルマンと名乗った男の手からミシミシと言う音がし始めたその時、自分の目に思いも寄らない光景が飛び込んで来たのに気が付いた。

 それは、太く青白い光が空に伸びる異様な光景。

 更に北の方に一直線に伸びているその光は、異様でもあり何処か神秘的なものでもあった。

 だがこの胸騒ぎは一体何なのだろうか。

 とにかく悪い事が起こっている気がして気が気では無くなったレウスは、エルマンが奪い取った物が入っている袋を肩に担いで、別の場所に居るであろうエルザに魔晶石で通話を開始した。

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