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528.洞窟迷路

 サイカが自分とレウスの通話の内容について、レウスがアークトゥルスの生まれ変わりだと言う事だけは伏せた上で事細かに説明し始めたその頃。

 レウスとエルザはイルダーと共に、魔術都市イズラルザを出発してかなりのハイペース東へと向かっていた。

 あの筒の詳細をイルダーが呼んで来た町の騎士団員達に話した後、その騎士団員の中の何人かがその赤毛の二人を目撃したのだ。その騎士団員達の証言によれば、町の出入り口から出て行った後に東へ向かってワイバーンに乗って去って行ったらしい。

 それを聞き、イルダーがその赤毛の二人の行きそうな場所を考えてみた結果が今の三人の向かっている場所らしい。

 魔術都市からずっと東に行った場所にある山の麓で、最近怪しい人影が何人も目撃されているのを騎士団員達が情報として聞いていた事もあって、こうしてレウス達にまでに伝わって急行しているのだ。



 この町にやって来るまでと同じ位のハイスピードなワイバーンの飛行ペースに、レウスに掴まるエルザも落ちない様に注意しながら目的地まで我慢する。

 そのワイバーンのスピードに揺られながらも、ある程度余裕が出来た時にレウスが隣に並んだイルダーに聞いてみる。

 赤毛の連中を追う為にすぐに出発するから、と質問をする時間も与えられなかったのだ。


「な、なぁ、俺達がこれから行くのってどう言う場所なんだ?」

「東の方には大きな山脈がある。その中には騎士団が今まで集めた鉱物の貯蔵庫にしている洞窟があるんだ。そしてその鉱物は騎士団で使っている武器や防具を生成する為に少しずつ取り崩して使っているんだ。だから今までの騎士団の駐屯地を狙っている所からすると、その鉱物を全てその怪物で破壊するつもりかも知れない!!」

「えっ、そ、それじゃあ……!!」

「ああ、あの赤毛の連中の目的はその鉱物かも知れないから、急いで貯蔵庫を守るんだ!!」


 もしその計画が本当だとするなら、あの二人が狙うのはカシュラーゼに送る為の鉱物の略奪と言う事だろうか。


 やっぱりあの赤毛の二人とは縁があるな……と思いつつも、そのままワイバーンの背中に乗って辿り着いた東の村。

 既にワイバーンは息切れを起こしており、最低でも一日は休ませなければ今までのスピードを出すのは難しいとイルダーに言われたので、そこの村で休ませて貰う事にしたので心配は無いだろう。

 むしろ心配するべきなのは、自分達がこれから向かう洞窟の中の鉱物だとレウスは洞窟の方を見ながら呟いた。


「この中か……」

「ああ。こうやって外から見るだけでもかなり奥まで掘られていそうな気がするな。実際、貴様の情報通りの騎士団が管理している場所だとしたらかなり広いんだろう?」

「そうだな。でも僕が気になるのは、どうして洞窟の出入り口に騎士団員が倒れているのかって事だ」


 この洞窟の見張りをしていたであろう騎士団員二人が、既に物言わぬ肉片となって大量の出血をして息絶えていた。

 その二人の死体を足元に見降ろしつつ、三人はそれぞれの武器を構えて洞窟の中に足を踏み入れる。

 そしてエルザの予想通り、確かに洞窟の中はかなり入り組んだ構造になっている。至る所にドアが造られ、その奥には様々な材料が貯蔵されているのだ。

 材料ごとに保存場所の区分けがされているらしく、道に迷わない様に立て看板が設置されているのも相まって何処に何があるかと言うのは分かりやすくなっている。

 天井も道幅も材料を出し入れする関係で広めに造られている様で、人間が三人こうして並んで歩いてもまだ余裕がある。

 しかしながら、ここにやって来た人間や獣人達の数が多すぎて人口密度が高くなっている為に、スペースが思った以上に無い様に感じてしまうのは気のせいでは無いだろう。

 それは今、自分達が先にやって来ていた武装集団とバトルを繰り広げていると余計に感じてしまうのだ。

 その発端は出入り口からある程度進んだ広場まで来た時に、イルダーが直感で嫌な気配に気が付いた事だった。


「……おい、この先は危険そうだな」

「ああ」


 エルザもそれは分かっていた様で、レウスの傍らで愛用のバトルアックスをゆっくりと両手に構え直す。それと同時にレウスが探査魔術を使って、洞窟の全域を探って気配がどの程度あるかを調べる。

 すると、段々レウスの顔が強張り始めた。


「エルザ、イルダー……この洞窟の中には物凄い数の人間や獣人が居るみたいだ」

「分かった。容赦はしないで良いか?」

「それは向こうの出方次第によるな。まぁ、十中八九あの赤毛の奴等の仲間だから容赦はしないで良いだろうけど」


 最初にこの洞窟に踏み込んだ時、自分達が歩く音以外はやけに静かなものだ……とレウスは感じた。

 余りにも静か過ぎて逆に不安になってしまうが、隣を歩くイルダーとエルザも緊張の色がその顔に明らかに滲み出ていたので、レウスはその緊張感に負けて口を開く事が出来なかった。

 だが、何か嫌な予感がするのは間違い無かったのだろう。

 洞窟の中に造られている、多数の通路に向かって分かれ道が伸びている広場。持って来た材料を運び出す量や、逆にしまい込む場所の打ち合わせをここでたまにする様だ。

 一種の休憩所とも言えるかも知れないこの場所で、レウス達は先に潜入していた武装集団の待ち伏せに遭ってしまったのである。

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