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50.直談判

 ドゥドゥカス・マッツ・フォーセル。

 このリーフォセリア王国を統治している、現在の若き国王として有名である。

 今年でようやく二十五歳になる年若い国王だが、その若さで甘く見られない様に日々の勉強は欠かさず、最近になって少しずつ国王としての貫禄が出て来たと言われている。

 今の時代に転生し、自分が生まれ育った田舎町の平穏な日々にしか興味が無かったレウスでさえも、彼が即位した時からの話を知っている。


「フォーセル陛下……確か五年前、彼が二十歳の時に父王が崩御してしまったんですよね?」

「そうだ。ハッキリ言ってまだまだ国王としては日が浅い。しかし、将来は先代の国王陛下の様になりたいと日々政務に精を出されておられる。そしてそのフォーセル陛下が直々に、今回逃亡してしまったセバクターの追撃にお前を指名して来たんだ、アーク……あー、悔しいだろうが、これも運命だと思って受け入れてくれ。レウス・アーヴィン」


 またうっかりアークトゥルスと言ってしまいそうになったギルベルトだが、レウスよりも先に抗議の声を上げたのはゴーシュだった。


「お言葉ですがギルベルト騎士団長、私もファラリアと同じく反対です。幾ら国王陛下のご命令であっても、大切な一人息子をそんなに簡単に追撃作戦に向かわせる事は出来ません」

「父さん……」


 良いぞ、そのまま親父パワーで押し切ってくれ!!

 自分の父親を見つつ、そんな期待をどんどん膨らませるレウスだが、ギルベルトはまた首を横に振った。


「だから、それは俺じゃなくてフォーセル陛下が決めてしまったんだから陛下に言ってくれ。あー……そう言えば陛下はこんな事もおっしゃってたな。「もし何か不満があるんだったら、直に俺の所に来て話を聞いてやるから」って。だから今からでもフォーセル陛下の元に向かうか?」

「そうですね。それなら行ってみましょう。レウス、文句無いわよね!」

「え、いや、あの……」


 自分の周りでどんどん話が大きくなっている。

 自分の意思とは関係無しに、こうしてレウスは勝手に話を決めてしまった国王フォーセルの元へと、自分の両親と共に向かうのであった。



 ◇



「ここか……」


 王国のトレードカラーである、紫を基調とした色合いが特徴的な大きなインハルト城がリーフォセリア王国の中心にそびえ立つ。

 そのインハルト城を中心に円形に街並みが広がっているのが王都カルヴィスなのだが、アーヴィン一家はギルベルトに連れられてここまでやって来てしまった。


「来てしまったわね、とうとう」

「でも俺達はこいつが危険な目に遭わない様に直談判しに来たんだ。幾ら国王陛下相手でも引けないさ」

「それでは中に向かうぞ」


 決意した様子のゴーシュとファラリアの様子を見て、ギルベルトがインハルト城の中に入る様に促す。

 王城の廊下は全体的に薄い紫で彩られており、目に良いんだか悪いんだか分からない……とレウスは思ってしまった。

 その廊下を抜けてギルベルトの背中を追って歩いて行くと、やがてフォーセルが執務をしている国王執務室の前に辿り着いた。


「ムカついてんのは分かるが、相手はこの国の陛下だからな。その辺りはしっかりわきまえろよ」

「分かりました、騎士団長」

「じゃあ行くぞ。……フォーセル陛下、騎士団長のキュヒラーですが、レウス・アーヴィンとその家族をお連れしました!」


 アーヴィン一家に念を押してから、ギルベルトは重厚な扉のドアノッカーをゴンゴンとドアにぶつける。

 すると、扉の向こうから意外そうな声色のセリフが返って来た。


「えー、本当に来たのか? まさかあのセリフを真に受けて来るとは思ってなかったけど……まあ、来ちゃったんならしょうがないや。中に入れてやってくれ」

(なんつー答え方だよ……)


 自分で言っておきながらこうやって来られる事を予想してなかったのか、と呆れるレウスを筆頭に、アーヴィン一家は執務室の中へと通された。

 その扉の向こうの豪華な椅子には、銀髪を無造作に伸ばしている若い男の姿があった。

 国王陛下らしく豪華な衣装に身を包み、机に積まれた膨大な書類の山を処理している彼こそがドゥドゥカス・マッツ・フォーセル。

 処理していた書類から顔を上げ、開口一番疑問形で話し掛けて来た。


「で、僕の決定に不満か?」

「そうですね。幾ら国王陛下のご命令でも、流石に見過ごせません」


 しかし、それを聞いたドゥドゥカスはふんと鼻で笑う。


「じゃあさあ、僕とその息子だけで話をさせて貰いたいんだ。少し席を外してくれないか?」

「……お二人でですか?」

「ああ。大丈夫だって。別に息子を殺そうとかそんなんじゃないから。話はすぐ終わるよ」


 それを聞き、ゴーシュはレウスに許可を求める。


「レウスが良いなら、俺達は出て行くぞ」

「ん……俺なら大丈夫だ」

「分かった。危ないと思ったらすぐに逃げるのよ」

「ああ」


 自分に対する不敬罪とも取られかねない発言を目の前でスルーしながら、ドゥドゥカスはレウスに対して今回の件についての説明を始める。

 そして結論から言えば、レウスは、いやアークトゥルスは結局セバクターを追撃するべく学院を休学する事になったのだった。



 二章 完

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