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524.吹き飛べ!!

 三人に行く手を阻まれたヴェラルとヨハンナだが、その顔には余裕が見て取れる。


「お前達が動いているって言う情報はカシュラーゼからチラホラと聞いていたが、まさかこんな小さな国の地方都市まで追い掛けて来るとは、余程暇人の様だな?」

「そうよね。師匠の言う通り、私達を追い掛けている暇があったらもっと別の有意義な事をしたらどうなのよ?」

「今、その有意義な事をしているんだがな」


 そう言いながら、既にエルザはバトルアックスを構えて臨戦態勢を取っている。

 レウスも自分とエルザとイルダーの三人に対して魔術防壁を掛け、槍を握り締めて何時でも戦える様に身構えている。

 だが、その中でイルダーだけが状況を呑み込めていない。


「あ……あんた等、知り合いなのか?」

「まあな。だが悪い事は言わない。お前はもうここでさっさと帰れ。今から俺達は多分殺し合いになると思うから」

「そうだ。私もさっきは貴様を誘ったが、ここから先は危険だ。今ならまだ間に合うからさっさと帰れ」


 だが、イルダーは妙に自信家な一面があるらしくここで引き下がろうとはしないばかりか、腰にぶら下げているロングソードを引き抜いた。


「嫌だね。この二人は僕の国で何か悪だくみをしているみたいだからな。だから僕もこの二人を捕まえるのに参加する」

「馬鹿野郎!!」

「っ!?」


 やる気満々の態度を見せるイルダーに対して、突然レウスが物凄い怒鳴り声を上げる。

 その怒鳴り声にイルダーのみならず、隣にいるエルザも敵対している筈のヨハンナとヴェラルまでもがビクッと驚く程の迫力があった。

 その迫力にたじろいだイルダーに対し、レウスは彼の気持ちも汲み取って譲歩案を提示する。


「そのやる気は気持ちだけ貰っておく。ならお前はさっさと騎士団に連絡して応援を呼んで来い。この二人は何をしでかすか分からないからな!!」

「……」


 その気迫に押されてしまったイルダーは、無言で踵を返して走り去って行った。

 イルダーが視界から消えたのを見て、改めて赤毛の二人の方に向き直るレウスとドリス。その間にヴェラルもヨハンナも律義に待っていてくれたらしい。


「殺し合いになる……か。確かに俺達とそっちは敵対関係だ。だが俺達はここで余り時間を食っている訳にはいかないんだよ」

「時間が無い?」

「そうよ。師匠と私はカシュラーゼからの命を受けてここまで来た。それにはしっかりとした理由があるの。だからその邪魔をするならこの場で吹き飛ばすわよ?」

「吹き飛ばす……?」


 風の魔術でも使うのか? とそのヨハンナの言い回しに違和感を覚える二人の目の前で、彼女の師匠であるヴェラルが肩に担いでいる大きな金属製の筒を構える。


「一度だけチャンスをやろう。吹き飛ばされたくなければ大人しく去るんだな」

「だから吹き飛ばすって何なんだ、貴様達は?」

「引き下がる気は無いの? せっかく師匠が忠告してくれているのに、そのチャンスを無駄にするのは賢くない選択だと思うけどね」


 呆れた様な口調でそう言うヨハンナだが、こちらには魔術防壁がある。

 よっぽどの事が無い限り、ドラゴンの爪の引っ掻きの一撃も防ぎ切ってくれる程の強力なタイプなのだから、そう簡単にやられはしないとレウスは踏んでいた。

 なのでこう返答するレウスだが、ヨハンナの言う通りその選択が誤りだった事に気が付くのはそのすぐ後だった。


「ああ、その気は無い。お前達をここで逃がす訳にはいかないからな!!」

「そうか。だったら吹き飛べ!!」


 そう叫んだヴェラルは、レウス達に向けてその筒についている引き金に指を掛けて一気に引いた。

 その瞬間、筒の先端から青白く光り輝く大きなエネルギーボールがレウスとエルザに向かって発射された。

 いや、正確には二人の後ろに立っている同じく廃墟となった民家の壁に向かって発射されたのだ。

 そしてエネルギーボールが廃墟の壁に当たった瞬間、大地を揺るがす程の大爆発が起こったのだ。


「ぶほっ!?」

「ぐわああっ!?」


 背中から感じる強烈な爆風に、レウスとエルザの二人は成す術無く前方に向かって吹っ飛ばされた。

 ヴェラルとヨハンナは筒の先端からエネルギーボールが発射されるとほぼ同時、その発射の反動までも利用して先程自分達が出て来た廃墟の中に飛び込んで難を逃れた。


「相変わらず凄い威力だ。さぁ、さっさと逃げるぞ!!」

「えっ、師匠……あの二人は放っておいて良いんですか?」

「ああ。無理して武器を合わせる事もあるまいし、魔術防壁で大したダメージは受けていないだろうが精神的なショックは大きいだろうからな。それに俺達はまだこの国で大きな実験も控えているんだから、その実験をするのが先だ!」

「分かりました、それじゃさっさと逃げましょう!」


 敬愛する師匠がそう言うのであれば、自分もそれに従ってさっさと逃げるだけである。

 そう決断して廃墟の裏口から逃げ始めるヨハンナの斜め後ろで、肩に担いだこの兵器の凄さを改めて思い知ったヴェラル。


(ディルク様の開発したハンドガンの亜種、このランチャーの威力は絶大だ。これならアークトゥルスの生まれ変わりだろうが大きなドラゴンだろうが何も怖くは無い!!)


 思わず口元に笑みが浮かんでしまう程の威力を有している、この新開発兵器を自分が持っていると言う事に優越感を覚えながら、ヴェラルも裏口からイズラルザの町の中へと駆け出して行った。

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