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521.えっ、ここにも居たの?

「まさかこうやって足止めを食らう事になるとは思わなかったわ……」

「そうね。でもこうなったらもうレウスとエルザと、それからその銀髪のイルダーって人に任せるしか無いわね」


 単純に国境襲撃事件の話を聞いただけだった筈なのに、まさかこうして城まで連れて来られるとは思ってもみなかった一行は、もうレウスとエルザに任せるしか無いと覚悟する。

 その一行に対して妙に高圧的な態度で接するのは、このシルヴェン王国の第三騎士団長だと身分を明かした黒髪のレメディオスと言う男。それから同じく第三騎士団に所属し、レメディオスの直属の部下である副騎士団長のロルフと言う青髪の男の二人だった。

 ちなみにヒルトン姉妹とアニータが出会ったエリアスと言う傭兵は、三人を騎士団の本部まで送り届けた後に「用事がある」と言い残して去って行ってしまったのだ。

 本来であればそのエリアスと言う男にも一緒に話を聞いて貰おうと思っていたのだが、もう去って行ってしまった以上はどうしようも無かった。


「で、その代わりにクラリッサに襲撃事件の話をしたって報告のあったそっちの二人、それからそのワイバーンを使ってイルダーと言う男とともにイズラルザへ向かった二人の仲間のお前がこの騎士団の本部で合流した……と言う流れだな?」

「はい、間違いありません」


 レメディオスからの取り調べに素直に答えるアレットだが、内心は気が気では無い。

 今、レウスとエルザがワイバーンをトップスピードで飛行させてその赤毛の二人が向かったらしいイズラルザの町に向かっているのに、自分達はこのボーセン城の中で取り調べを受けているだけなのだ。

 こんな事になるんだったら、国境の話をするべきじゃなかったと後悔しても後の祭りである。

 その心の中で悔しがっているアレットに対し、レメディオスと一緒に一行の取り調べをしていたロルフが妙な事を言い出したのはその時だった。


「ってか、その国境の大穴ってあいつの仕業じゃねえの?」

「あいつ?」

「ほら、噂になってるじゃんよ。最近このシルヴェンの全土で目撃されているドラゴン」

「えっ?」

「ドラゴンですって……?」


 ドラゴンと言う単語に反応したサイカやドリスを見て、レメディオスの茶色い瞳が鋭く光った。


「何か知っているのか?」

「え……ああ、まあそれなりにですけど」

「えーっと、もしかしてそのドラゴンって黒かったりします?」

「……何故お前達がその事を知っている?」

「おいっ、知っているんだったら素直に全部吐かねえと後悔すっぞ!!」


 更に目つきを鋭くするレメディオスの横で、ロルフが取り調べの為に用意された金属製のデスクに両手をバンッと叩き付けて一行を怒鳴りつける。

 だが、今のこのパーティー一行にとってはそんな怒鳴り声よりも自分達の疲れの方が勝っていた。


「ああ……まさかこのシルヴェンにまであのドラゴンの仲間が来ているなんて……」

「そうだな。お主達の言っているそのドラゴンがもし、本当にあのドラゴンと同じ生物兵器だったとしたら、私達はそれを討伐しに向かわなければならないな」

「そうですわ。それにこのシルヴェンはアイクアルの中に位置している国家ですから、放っておいたらいずれアイクアルをも荒らし回る可能性もありますわね」


 既に騎士団の二人の視線も何処吹く風の状態で、レウスとエルザが不在のパーティーメンバー達は早くもドラゴンの対処について議論を始めていた。

 それに対して声を掛けたのはレメディオスでもロルフでも無く、ソランジュとサイカに出会ったあの茶髪の女騎士団員であるクラリッサだった。


「ねえ、ねえ……そのドラゴンについて何か知っているのかしら?」

「ん? ええ。ちょっと色々あってね」

「良かったら私達にも話を聞かせてくれないかしら? このレメディオス団長とロルフ副団長が率いる第三騎士団は、前線で活躍する部隊なのよ。だから魔物討伐の経験も豊富だし、ドラゴンについて知っているなら色々と情報共有をしてくれた方がこっちとしても助かるし」


 しかし、それでもかなり不安な気がするのは多分気のせいでは無いだろう。

 あのカシュラーゼの生み出した生物兵器であるが故に、普通の戦い方では通用しないタイプのドラゴン達であるのは、パーティーメンバー達の今までの経験で嫌と言う位に知っているからだ。

 それでも今までのその戦いを話さなければここから出してくれないだろうなと思い、レウスの正体は伏せた上で、各国で撃破して来たカシュラーゼの生物兵器について話し始めた。


「……ああ、カシュラーゼの生物兵器の噂なら確かにこちらにも届いているが」

(良かった、それは知っているのね)


 口にこそ出さないものの、まさかその生物兵器の話まで知らないと言う事になれば本気でこの国の危機意識を疑うアレットだったが、流石にそこまでのレベルでは無かったので一安心である。

 だが、そのドラゴンもまた厄介な相手だと言うのがこの後のレメディオスの発言で分かり、そっちに奔走しているせいで国境への気配りが疎かになっていたとも伝えられる流れになったのだ。

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