表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

521/875

518.赤毛の二人の目撃情報

 そのワイバーン部隊の話をしながら自分達もワイバーンを飛ばし、さほど時間も掛からずにレウス達はシルヴェン王国の王都であるシロッコへと辿り着いた。

 だが、着いて早々に余り好ましくないシルヴェンの現状を把握する。


「町の出入り口で検問とかってやっていないみたいだな」

「ええ。あの国境の検問を通ってしまったら、残りはどうでも良いって感じでノーチェック状態よね……」


 打って変わって、レウスとサイカの口からはこのシルヴェンに対する批判的な評価が出て来る。それは王都シロッコの出入り口を見て、完全にフリーパス状態で行き交う人々を見ての話だった。

 現世におけるレウスの地元の田舎町でも、簡単にではあるが出入り口で検問をやっている。リーフォセリア王都のカルヴィスになるともっと厳しい検問が行なわれる。

 サイカからしてみれば、あの暴君が治めているソルイールでさえ帝都のランダリルを始めとした町や村の出入り口で、各種検問をやっているのでこの光景は信じられなかった。

 だが、その二人の会話を横で聞いていたアニータがシルヴェンのフォロー(?)に回る。


「シルヴェン王国は大きな戦争や内乱が今まで滅多に無かった。あってもすぐに収まった。どっちかって言えば魔物との戦いがメインだから」

「ああ、だから人々のチェックに関してはノーガード状態なのねー」


 アレットも納得するが、その納得しているシルヴェンの状態が一行にとっては危険だと思ってしまう。

 何せ、相手は謎の筒状の兵器を使って国境の城門にあれだけの大穴を開けてしまうレベルの危険人物達なのだから、そう言う相手を想定して検問もやるべきだろうと思ってしまうのだ。

 とにかくシロッコの中に入ってみれば何か分かるかも知れないので、ここでまた以前の様にパーティーを幾つかのグループに分けて情報収集をスタートする。


「えーっと、それじゃ俺とアレットとエルザのマウデル騎士学院トリオで一つ、それからアニータとヒルトン姉妹の三人で一つのグループ、ソランジュとサイカの二人で最後のグループでどうだ?」

「別に私は貴様のグループ分けで構わないが」

「私も問題ございませんわ」

「お主の分け方で大丈夫だと思うぞ」


 エルザ、ティーナ、ソランジュの三人を筆頭に何も反対意見が出なかったので、あっさりと決まったこのグループ分けでシロッコの城下町の中に入る。

 すると、早速ソランジュとサイカの二人が赤毛の二人の目撃情報を手に入れた。


「お主はその赤毛の二人を見たのか?」

「ええ。私はハッキリと見たわよ」


 城下町を巡回していた王国騎士団員の茶髪の女が、その赤毛の二人を目撃したらしい。

 その二人はどうやら冒険者らしいのだが、余り見慣れない人間でしかも赤毛の二人組と言うのも相まって、その女の騎士団員からするとかなり印象に残っていたらしい。

 だがそこまでの関係でしか無く、ヴェラルとヨハンナの二人が何処に向かったのかまでは分からないと言われた。

 その一方で、サイカはその騎士団員にこんな質問をしてみる。


「ねえ、ちょっとその二人についてもっと知りたいんだけどね」

「知りたいって言っても……これ以上何も話す事は無いわよ?」

「いや、あの……その二人組の持ち物について聞きたいのよ。その二人の内のどっちかが、長くて太い筒状の物体を持っていなかったかしら?」

「筒?」

「そう。その筒でシルヴェン王国の国境が大惨事になってしまったらしいんだけど、それについてはもう既に騎士団の耳に入っているんでしょ?」


 しかし、女の騎士団員のリアクションはソランジュとサイカの想定外のものだった。

 彼女は何の迷いも無い様子で、サイカの質問に対して首を横に振ったのだ。


「いいえ、国境が大惨事なんて連絡は来ていないわよ? 何の話なの?」

「はい?」

「えっ……お主、何をふざけているんだ?」


 呆気に取られるサイカと唖然とするソランジュだが、それでもこの女の騎士団員のリアクションに変化は見られないばかりか、逆に疑いの目を向けられる。


「ねえ、国境が大惨事ってどう言う事なの? このシルヴェン王国の国境で何か事件でもあったの?」

「いやいや、あっただろう。アイクアルとの西の国境の方で、城門に大穴を開けられた上に城門の警備や検問を担当している担当者達が全員死んでいたって」

「ええっ、何よその話……初耳なんだけど!?」

「ほ、本当に貴女は知らないの? 騎士団員なのに?」

「全く知らなかったわ。だって私の管轄じゃないから入って来ないのよ、国境の情報は」


 迷い無くそう言い切られ、ソランジュとサイカは変に脱力してしまう。

 あれだけの大騒動が起こっている。しかもその場所は国境と言う、他国との境目を認識する重要な拠点なのだから。

 あの襲撃があれば伝令の一つや二つがすぐにこのシロッコに飛んで来る筈なのに、それをこの女が知らないと言うのは不自然過ぎる。例えそれが管轄外の場所で起こった事件だったとしてもだ。


「と、とにかく誰か他の騎士団員に確認してくれ! 絶対にその事件があったって分かるから!」

「ん~、分かったわ。でも貴女達も一緒にボーセン城まで来てよね。私はその国境であったって言う事件を、貴女達の証言で確認するんだから」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お気に召しましたら、ブックマークや評価等をぜひよろしくお願い致します。
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ