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49.協力者の影

「それにあの二人は前にも学院へ侵入しようとしていたし、セバクターが事前に学院の中に入ってセキュリティシステムを切り、その間にあの二人を中に入れさせて再びシステムを作動させ、三人で手分けして作業をこなした後で爆破させれば……」

「一層、これであのセバクターが犯人だって説が強まったな」


 レウスの推理にギルベルトも同意し、リーフォセリア王国中に大捜査網が張られる手筈が整った。

 しかし、それに対して待ったを掛けたのがアレットだ。


「ちょっと待って下さい。それにしては妙な事がありますよ」

「何が?」

「考えてみてよレウス。セバクターさんが最初にあの赤毛の侵入者達の事を教えてくれたでしょ? 普通、自分と協力する約束をした人間の情報をわざわざ私達に話したりするかしらね?」

「あー……それを考えると確かに変だな」

「いやいやいやいや、待ってレウス。別にその二人の情報を教えたって、その後に気が変わって改めて今回の事件の為にチームを組む事になった……って話も考えられない?」

「まあ、それもそうだよなあ……」


 アレットの話に納得しかけたレウスに対し、今度はファラリアが待ったを掛けた。

 こんなにそれぞれ別の方から待ったを掛けられたレウスは、自分の意見を見失いかけている。

 それにいち早く気が付いたエルガーが、レウスに対して問う。


「お前は結局の所、そのセバクターが犯人だって説に対してどう思ってるんだよ?」

「それは……正直に言えば、今でも俺はセバクターさんが犯人だと思っていますよ。確かにアレットの話も一理ありますし、母さんの話も一理あります。それを全部ひっくるめて飲み込んだ上で俺が考えるのは、セバクターさんが犯人かも知れない可能性が大きいって話です」

「そうか。だったらこれからどうしたい?」

「ど、どうしたい……?」

「これから、お前はセバクターを追い掛けたいとか思っているんじゃないのか?」

「ん? どういう事……?」


 おいおい、話が変な方向に転がっていないか?

 レウスは頭の中でそう考えるが、何時の間にか全員の視線が自分の方向に向いている。

 みんなが自分の意見を待っている。

 こんな状況になったのはどうしてなんだろう、と思いつつもレウスは今の自分の気持ちを正直に述べる。


「俺は……追いかけたい気持ちが二割、後は騎士団の人達に任せたい気持ちが八割です」

「それは本気か?」

「本気です。エルガーさんには申し訳ないですけど、俺は自分から進んでマウデル騎士学院に入った訳ではありませんからね。それに俺は元々戦いに興味は無かったんだし」

「ふざけるな。爆破事件の前のドラゴン襲撃で、あれだけの活躍をしておいて今更そんな言い訳が通じるとでも思っているのか? 幾らでも戦いを回避する術があった筈だろう?」


 そのレウスのセリフに憤りを見せたエルザだが、憤りを見せられた方のレウスは質問に質問で返答する。


「だったらさー……逆に聞くけど、今までの俺は成り行き上で仕方無しに戦って来ただけだ。最初にアレット達と出会った時の魔物の集団を始め、あんたとの決闘だってそうだ。それにギローヴァスだって俺達の住んでいる町に向かって来ていたから応戦したんだし、セバクターとの手合わせだって誤解から生じたもんだ。全部成り行き上の話で、俺は自分に掛かる火の粉を払っただけだ。ドラゴンだって俺達に向かって襲い掛かって来たし、あのままだったら学院そのものを破壊されてしまう危険があったからな」


 学院に入学する前も、それから入学した後も授業やら何やらで戦わざるを得ない状況が何回もあった。

 しかし、今の状況は違う。

 セバクターがカルヴィスの街の外へ逃げて行った。そしてそれを追い掛けるかどうかの選択を迫られているのだが、選ぶのは自分の自由である。


「だから今回の件に関しては、俺はこれ以上突っ込む気は無い。冷たい言い方かも知れないけど、俺はこの街に残って学院の再建の手伝いをする。セバクターを追い掛けるのは王国騎士団の人達に任せるよ。それが俺の答えだし、回避出来るんだったら戦いを回避させて貰う」

「それは無理だ」

「はい?」


 思わぬ所から聞こえて来た声に、レウスはそちらを振り向く。

 その方向には騎士団長のギルベルトの姿があり、大きな体格の虎の彼はとんでもない事を言い出した。


「レウス・アーヴィン。お前にはマウデル騎士学院を休学して、セバクターの追撃をして貰う」

「ちょちょちょ、ちょっと待って下さいよ!! 今の俺の話を聞いてたなら分かるでしょ!?」

「そうですよ騎士団長……少しはこの子の気持ちも考えてあげて下さい」


 レウス本人のみならず、その保護者の一人であるファラリアも自分の息子の意見を尊重して、今の命令を撤回して貰う様に頼む。

 だが、それでもギルベルトは首を横に振った。


「俺だって、騎士学院の生徒をあのセバクターの追撃に当たらせるのは気が進まねえんだ。だけどこの話を決めたのは俺じゃねえんだよ」

「え?」

「それは誰ですか、ギルベルト様?」

「ドゥドゥカス・マッツ・フォーセル。このリーフォセリア王国の国王陛下だ」

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