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515.国境越えの一幕

 イレイデンから出発したレウス達は、ワイバーンを使って相乗りで移動している事もあってさほど時間も掛からずに国境へとやって来た。

 しかし問題はここからである。幾らアイクアル王国がヒルトン姉妹の地元であるとは言え、元々はヴァーンイレス王国に対して戦争を仕掛けた国々の内の一刻であるのは明白。

 そして占領したヴァーンイレス王国の中にはアイクアル王国騎士団の団員も駐屯しているので、国を取り戻すとは言えレウス達がやった事は、アイクアル王国への宣戦布告と言って良いだろう。

 しかもアイクアルはその戦争を通じてカシュラーゼとの交流もあるが故に、既にレウスがアークトゥルスの生まれ変わりであると言う事を始めとした、色々な話が伝わっていたとしても不思議では無い。


「しかし、もうやってしまったものは取り返しがつかないわ。問題はここからどうするかなのよね」

「そうね。有名になっているのはレウスが勿論圧倒的だろうけど、私達も何だかんだでレウスと一緒に死線をくぐり抜けて来ているから、ネームバリューはそれなりにあるかも知れないわね」


 アレットとサイカがそんな会話をしている一方で、レウスはこの状況でどうやってアイクアルとヴァーンイレスの国境を越えるかを考えていた。


(ネームバリュー云々の問題じゃない。問題は俺達がヴァーンイレスに駐屯しているアイクアルの連中に攻撃をした事だ。正当防衛として押し返す事は出来なくは無いだろうが、いかんせん多勢に無勢か……)


 アイクアルから入国拒否をされてしまう可能性もあるのだが、その場合は最終手段として一旦引き返した振りをして密入国と言う形になってしまう。

 それもこれもカシュラーゼのせいになるので、最終的には全面戦争になる可能性も否定出来ない。

 何かなるべくトラブルを起こさない様にアイクアルの中に入る方法は無いだろうかと考えているレウスに向かい、横からヒルトン姉妹の妹の方であるドリスが声を掛けて来た。


「ねえ、もしかしてアイクアルへの入国方法を考えているの?」

「ん、ああ……そうだが今の所はどう転んでも穏便に行きそうに無いんだ。幾らサィードが発行した通行証があるとは言っても、物事には限度がありそうだからな」


 サィードは十年前に逃亡した王子、と言うのを戦争に参加していたアイクアルの国民達が知らない訳が無いので、その彼から発行して貰った通行証と言っても疑問に思われる可能性が高いだろう。

 ましてや、自分達はこの国境から一番近いイクバルトの町において、人肉工場を壊滅させると言う大騒動を起こしているのもあってその一報はアイクアル側にも伝わっているだろう。

 通行証を手に握りしめながらそう話すレウスに対し、今度は姉のティーナが提案する。


「では、いざとなった時には私達にお任せ下さい」

「任せて良いのか?」

「はい、自慢になりますが、私達はそれなりにアイクアル王国の中でも顔が利くんですよ。王族の周りの関係者にも何人か私達の知り合いが居ます」


 それを聞き、エルザが意外そうな顔をヒルトン姉妹に向ける。


「王族関係にもだって? そうなると、貴様達の家柄はそれなりに良いと言う事になりそうだな」

「ええ、それなりには。私達はアイクアル王国の殆んどに飼育をしたワイバーンを納入していますのよ」

「だからか。農耕に秀でているアイクアルらしい職業だな」


 ヒルトン姉妹の家柄についてある程度理解出来た所で、いよいよアイクアルの東の国境へと辿り着いた。

 高所恐怖症のエルザはワイバーンに乗っている間、怖くて下を見られなかったのだがそれももう地上に降り立ってから収まった。

 そしてヒルトン姉妹を自分の後ろに従えながら、レウスは国境の検問に近付く……が、何だか様子がおかしい。


「ちょっと待って、何か変じゃないかしら?」

「そうだな。あそこに見える人込みは恐らく検問だと思うが、それにしては人だかりが多過ぎじゃないか?」


 アレットとソランジュが真っ先にそれに気が付いた。

 検問の人混みであればもっと静かな中で行なわれている筈なのに、変にざわついているのはきっと何かがある。

 何かがあるとこうやって予感出来てしまうのが怖いのだが、行かない訳にはいかなかった。

 それは国境となっている城門が、大きな風穴を開けられてフリーパス状態になってしまっているのだ。


「普段は固く閉ざされて見張りも居るのに、その見張りも殺されてしまったらしいわね」

「ええ。それも風の魔術と思わしき無数の切り傷を受けてね」

「そばにある詰め所には三十人の担当者が居るらしいが、その全員が殺されて何者かが通り抜けたらしい。今はその城門破壊事件によって国境が閉ざされている状態だから、引き返すしか無いみたいだな」


 だが、アレットとサイカとエルザの三人がそう判断した横からアニータが口を挟んで来た。


「でも、あのアークトゥルスの生まれ変わりはそうは思っていないみたい」

「えっ?」

「どうやらこの話、ただの襲撃じゃないって考えている様ね。まあ、あの城門の穴の開き方を見てみると只者がやったんじゃないって言うのは遠目でも分かる。戦場で使う攻城兵器の破城槌はじょうついでもそう簡単に破れない城門が、あんなに綺麗に穴を開けられているんだからね」

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