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511.何がどうしてこうなった?

「え、エルザ!? それにティーナも……一体どうして!?」

「だから窓ガラスを割って外に出たんですよ。ほら……下の方がああやってバルコニーになっていますので飛び下りました」

「えっ、そうなのか?」


 そんなまさか……とレウスが割れた窓の下を覗いてみると、確かに一階分の下の部屋からバルコニーが突き出していた。

 それを見て、サィードはそう言えば……と思い出した事があった。


「あーそっか、そういやこの下ってバルコニーに繋がる部屋だったわ。執務室から直接中庭が見下ろせる様に造ったんだよ、このベリザッコ城って」

「と言う事は、ドリスもティーナもこの窓を割ってバルコニーに飛び下りて脱出したって事か?」

「だからそうだと言っているだろう」

「なっ……だったら俺やレウス達は何の為に……」


 この灼熱地獄の中を、瓦礫や炎に阻まれながら死ぬかも知れないと覚悟しながらやっとここまで全員無事で進んで来たのに……とガックリ肩を落とすサィードを、斜め後ろから肩を叩いて慰めるサイカ。


「まあ、ほら助かって良かったじゃない。二人とも無事だってこれで分かったんだし」

「そりゃそうだが、何か腑に落ちない……」

「だが、あのホルガーには逃げられてしまった。正確に言えばあのディルクの弟子がこの執務室に火を放ったんだ!」

「えっ?」


 その後のエルザとティーナの報告を聞きたい所だが、先にこのベリザッコ城の中の完全鎮火が先である。

 なのでその知りたい気持ちを抑えつつも、まずはこのベリザッコ城の中で先に鎮火活動にあたっているイレインの仲間達に協力するべく、全員が揃ったパーティーメンバー達は動き出す。

 ここまでの酷い大火事となると何が原因なのか見当が付かなかったが、ディルクの弟子であるあの若い黒髪の男が放火したのであれば納得出来る。

 彼はあのディルクの弟子なので、その残虐性も師匠の影響なのだろう。

 それはようやく鎮火が全て終了し、エルザとティーナの証言でもっと詳しい事情が明らかになった。


「いきなり油の入った缶を投げ込んで来たの?」

「そうなんです。燃えろって大声で叫びながら、本当に何の前触れも無くいきなりこの執務室の中に入って来て、私とエルザさんの目の前に油の入った缶を投げ付けたんです」

「そして奴はファイヤーボールで缶を爆発させ、一瞬にしてこの執務室を火の海に変えたんだ。目的は恐らくホルガーの奪還だろう。だが、そうはさせまいと私はあの男の目の前に立ち塞がろうとした」


 しかし、そこでエルザが驚きとショックで動けなくなってしまうレベルの人物がディルクの弟子に加勢しにやって来た。

 その人物に死角から思いっ切り蹴り飛ばされたエルザの隙を突いて、そのままホルガーを連れて逃亡してしまったのだ。

 その加勢して来た人物については、弟子の彼が口走った名前も相まってエルザに衝撃を与えたのだ。


「あのラスラットってディルクの弟子は、確かにエドガーの名前を呼んだんだな?」

「そうだ。それに私はハッキリこの目で見た。リーフォセリアのマウデル騎士学院に居る筈のエドガー叔父さんの顔をな!」

「それが事実だとしたら、背の高い黒髪の人間って言うのがどうやらエドガーって事になりそうだな」


 エルザには非常に気の毒だが、アニータの証言で判明した黒髪の背が高い人間の正体は、恐らくエドガーである。

 なのでレウス達も地下通路でのドラゴンとのバトルを始め、壁画の謎や魔法の転送陣の先で見つけたエヴィル・ワンの身体の欠片等の話をする。


「そうか、その黒い髪の毛の背の高い人物の正体がエドガー叔父さんだって言うのなら、確かに納得が出来るな」

「それはそうなんだが……そのエドガーって人は貴女が通っているマウデル騎士学院の学院長である前に、貴女の親戚なんでしょ? 貴女は辛くないの?」


 ドリスからの率直な質問に対し、エルザは腕を組んで頷いた。


「辛くないと言えば嘘になる。だが、エドガー叔父さんは人肉工場の下見にも来ていたし、何より今回の地下通路の奥で見つけたエヴィル・ワンの身体の欠片を奪い取った張本人かも知れないだろう。だから私は、例えエドガー叔父さんが敵に回ったとしても戦うしか無いと思っている」

「そう……それなら安心したわ」


 もしかしたら、相手が自分の親戚であり騎士学院の学院長でもあるエドガーだと言う事でかなりショックを受けているのでは? とドリスは思っていたのだが、彼女の様子を見るとそこまでのショックは無いらしいので一安心する。

 その一方で、レウスが見つけたあの手紙の内容から察するにエレインはシルヴェン王国へと向かったらしいので、ならばこのパーティーメンバーでシルヴェン王国へ向かえば何かが掴めるかも知れない。

 そう考えたレウスは早速シルヴェン王国に向かうべくメンバーを促すが、思わぬ所からストップが掛かった。


「あー、それなんですけど……僕とサィード王子は一緒に行く事が出来ません。申し訳無いです」

「えっ?」

「ああ。俺は最初から行く気満々だったんだがよぉ……やっぱちょっと無理だわ」


 そのストップを掛けたのは、このヴァーンイレス王国の重要人物であるサィードとイレインの二人だったのだ。

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