表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

512/875

509.襲撃報告

「報告します。ベリザッコ城の襲撃が終了しました」

「あー、そう。それでどうなの? 捕まっちゃったって言っていた、あのホルガーってのは無事なの?」

「はい。現在は別室にて休んでいます」


 研究が一段落して、自分の執務室の中で食事中のディルクの元に彼の弟子がやって来た。

 ディルクは手に持ったフォークの先で人肉のステーキをつつきながら、弟子の報告に耳を傾けていた。

 イレイデンの地下通路に潜入させるべく弟子とその大勢の仲間達をヴァーンイレスに向かわせていた彼は、ついでにベリザッコ城の中を調べる様に命令を下していた。

 命令を受けた方のラスラットは、ディルクからの指示に基づいて一旦はあの地下通路の奥にある開かずの間へとやって来た。

 しかし流石の彼でも解除出来ない程の強力な封印が施されており、何かその封印を解除する為のヒントが無いかをベリザッコ城の調査で探してみる事にしたのだが、そこで衝撃的な事実が発覚する。


(あ、あれは……!?)


 ヒントを探して国王の執務室までやって来た自分の目に、いきなり衝撃的な光景が飛び込んで来た。

 探査魔術で人の気配が無いかどうかを確かめつつ進んでいたのが功を奏し、執務室の中に三人の人間の気配がある事に気が付いた彼は、少しだけドアを開けて中の様子を窺った。

 すると赤いコートを着込んだ茶髪の女と、ロングソードを腰にぶら下げているショートカットの金髪が特徴的な女の二人の姿がまず目に入った。

 そして彼女達の足元には、口に布を噛まされてうーうーと唸り声をあげながら何とか自分を縛っているロープをほどこうとしている黒髪の男の姿があったのだ!


(あの女二人は確か、アークトゥルスの生まれ変わりの男と一緒にやって来た奴じゃねえのか? 俺がこの城の玉座に座っていた時に見た記憶があるぞ……)


 そしてそのうーうー唸っている男が、ゴロリと身体を転がして顔をこちらに向けた瞬間にラスラットは驚きに目を見開いた。


(あれは……確か師匠が雇い入れたって言っていた便利屋のホルガーだったか!? 一度だけ紹介された事があるから知っているが、あいつは確かイクバルトの人肉工場を守る様に指示されていた筈。それが何でここに居るのかってなると……)


 イクバルトの人肉工場を守る事に失敗した挙句、こうして捕まって色々と情報を喋る為に連れて来られてしまったらしい。

 つまり人肉工場も既に破壊されてしまっているだろうと考えたラスラットは、とりあえずあのホルガーが布をほどいて変な事を喋らない内に助け出し、ついでにあの女達も倒してしまおうと考える。

 しかし前回は彼女達の仲間である銀髪の男に負けてしまったので、ここは自分一人で乗り込むよりも二人を確実に倒すべく通話用の魔晶石を取り出した。


「……俺だ。ちょっと問題が発生。国王の執務室で仲間が捕らわれている。至急十人程の応援を頼む。それと城の中に油を撒いて火をつけろ。それも爆発物が置いてある場所は重点的に撒くんだ。この城を爆破して地下通路の探索に向かうぞ」


 そう連絡を入れてから、自分の仲間達が集まるまで執務室のすぐそばで待機しつつ、更に様子を窺うラスラット。

 どうやらこちらの気配には完全に気が付いていないらしく、女二人はのんきにお喋りも楽しんでいる。


(ふっ、油断してやがるぜ。その油断が命取りになるって事も知らずにのんきにやってやがる。そう……このご時世、平和だった場所が突然戦場に変わる事なんて、幾らでもあり得るんだぜ!!)


 手の中に魔力を充填させ、大きめのファイヤ-ボールを生み出すラスラット。

 すると鼻の中に油の臭いが入って来るのが分かり、周囲に視線を巡らせると自分の仲間達の姿が階段の下から見えて来ていた。

 仲間達も執務室前で待機するラスラットに気が付いたらしく、彼の姿を見て無言で頷いた。

 それを合図にして、ラスラットは仲間から受け取った油の入っている金属の缶のふたを開けてから執務室の扉を蹴破り、缶を部屋の中に投げ込んだ。


「え、ちょっ……何!?」

「き、貴様は……ぐはっ!?」

「燃えろおおおおおおっ!!」


 油の直撃こそ免れたものの、その後に放たれたファイヤーボールが油の入っている缶に直撃するのは防げなかった。

 缶に直撃したファイヤーボールによって爆発が起こり、一瞬で執務室の中が火の海になる。


「う、うわあああああっ!!」

「きゃああああっ!?」

「良し、逃げるぞっ!!」


 火の直撃こそギリギリで免れたものの、女二人がその爆発で満足に迎撃態勢を取れずに回避するのが精一杯の中で、ラスラットは縛られたままのホルガーを素早く担ぎ上げる。

 だが、そんな彼に対して茶髪の女がバトルアックスを使って斬り掛かって来た。


「貴様っ、何をするっ!!」

「うおっと、そんなの振り回しちゃ危ないぜ?」

「馬鹿にするなっ!! これでも私は学院の首席だ!!」


 その女の言葉通り、なかなかのバトルアックスさばきを見せる女。

 しかしそれは後から部屋の中に飛び込んで来た、ラスラットの仲間の内の一人男の強烈な前蹴りによって中断されてしまった。


「こんなのいちいち相手にするな。焼かれる前にさっさと逃げっぞ!!」

「ああ、助かったよ……エドガー学院長!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お気に召しましたら、ブックマークや評価等をぜひよろしくお願い致します。
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ