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507.背の高い人間

 こうして次の目的地はシルヴェン王国に決まったのだが、それを上で待っているエルザとティーナに伝えなければならない。


「あいつ等、さぞかし待ちくたびれてんだろーな」

「そうね。何だかんだでかなり時間掛かったけど、その代わりドラゴンを討伐出来たって言う報告が出来るんだからこれで良かったのよね」

「そうそう。これでとりあえず一件落着だ!」


 嬉しそうにそう話をするサィードとサイカだが、その横からその雰囲気を一気に破壊するソランジュの一言が二人に掛けられる。


「だが、同時に悪い事もしっかり報告しなければならないぞ。お主達はまさかそれを忘れている訳ではあるまい?」

「いいや、忘れてねえよ。俺達だってそのアニータが見たって言う、黒髪の背の高い人間を捜さなきゃならねえんだからな。でもアニータ、何で人間だって断定出来たんだ?」

「人間は獣人みたいに頭の形が極端じゃないから」

「あ、なーるほどなぁ」


 ライオンだったら毛むくじゃらだったり、狼であれば鼻が長かったり、象だったらもっと鼻が長かったり、牛だったら角が生えていたりと、獣人と言うのはその風貌に特徴がある。

 その特徴的な個性溢れる獣人達から見てみれば、人間なんて微々たる違いにしか過ぎないだろうと言うのがアニータの持論だった。

 ならばその黒髪の背の高い人間、との目撃情報から犯人捜しを進めようと考えるレウスやソランジュ、サイカにとってはその黒髪の背が高い人間について、ある程度推測出来ている状態である。


「なぁ、俺の予想からするとその黒髪の人間って恐らく、あのディルクの弟子だって言っていた男じゃないのか?」

「その線はあり得る。しかし、私は引っ掛かるんだ。あの男はそこまで背が高かっただろうか?」

「えっ?」


 思い掛けない疑問点を口に出され、レウスはその表情が固まる。

 その横で、サイカはそのソランジュの疑問に同意していた。


「私はソランジュの意見に同意だなあ。私もあの弟子の男がそこまで背が高い様に見えなかった記憶があるけどね」

「そう、か……」

「でもほら、アニータちゃんは小柄だから彼女の目線からすると、平均的な身長の人も背が高い様に見えちゃう事もあるんじゃないのかしら?」

「どうだろうな。おいアニータ、背が高い以外に何か思い出せる事は無いか? 例えば細身の体格だったとか、顔に髭が生えていたとか」


 しかし、アニータは相変わらずの抑揚の無い声で短く返答する。


「髪の色しか見えなかった。眉毛から下は閃光で良く分からなかった」

「あ、そう……」


 本当に話しづらい……と何度目になるのか分からない感想を頭の中で浮かべながら、レウスは黒髪で背が高い人間について考えてみる。


「俺が考えるに、そうなると今の状況で考えられるのは二人」

「二人?」

「そう。俺の記憶から導き出したのはまず、生き物の命を何とも思っていないあのカシュラーゼの魔術師のディルク。あの男はかなり背が高かった記憶がある。少なくとも俺より背が高かったからな」

「じゃあ、このパーティーの中で一番背の高いサィードよりも高かったって言える?」

「そうだな……サィードとは同じ位能勢の高さだったかな。ちょっとの違いなら本当に分からないから、多分同じだろう」


 一人目をカシュラーゼのディルクだと見当をつけるレウスに対し、横で話を聞いていたアレットがもう一人を早く教えて、と彼に予想の続きを促す。


「じゃあもう一人は誰なの? もう見当はついているんでしょ?」

「ああ。だが、俺やお前にとっては辛い現実になるかも知れない」

「辛い現実?」

「そうだ。俺達に深く関わる黒髪の人間で、背が高いのがもう一人居るだろう?」


 そこまで話を聞いた時、アレットの頭の中にもレウスが伝えたい人間のシルエットが浮かび始める。


「ま、まさか……」

「そう、マウデル騎士学院のエドガー学院長だよ。あの男はサィードやディルクよりも背が高い。だから一番可能性が高いのはこの男だろう。エドガーは人肉の話だって知っていた訳だし、騎士学院の爆破事件においても容疑者の一人なんだから、信憑性はかなり高いと見て良いだろうな」


 レウス曰く、今まで自分達が出会って来た中で背の高い人間と言うと、ディルクと同じくカシュラーゼで出会ったあの魔術師であるドミンゴがまず該当する。

 そしてもう一人……今まで自分達が関わった人間の中で一番可能性は低いものの、この条件に該当する者が居るらしい。


「えっ、そのもう一人って誰よ?」

「居るじゃないか。俺達がリーフォセリアに居た頃に出会った事のある人間がもう一人」

「だ……誰?」

「じゃあ教えよう。それはアンリだ」

「アンリ?」


 名前を言われてもすぐにピンと来ないアレットに対し、レウスは記憶を手繰る様に促す。


「ああ、覚えていないか? ほら……俺に色々情報提供をしてくれたり、ギルベルトの部屋まで道案内してくれたあの王国騎士団員の男だよ」

「あー……あ、あああああっ、そう言えば居たわね。と言うか貴方、良く彼の特徴を覚えているわね?」

「そりゃあ覚えているさ。初めて会った時、やたらと背が高いって思ったのが深く印象に残っているんだ」

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