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48.続報

 その日は一日中爆破事件の後片付けや現場検証に追われていた学院の面々だったが、翌日になってようやく爆破事件の全容が見えて来た。

 そこで、セバクターと特に面識のあるレウス、アレット、エルザ、ゴーシュ、エドガー、そして付き添いとしてレウスの母親ファラリアが、無事だった学院長エドガーの執務室に居る騎士団長ギルベルトの元に集められた。


「来たみてえだな。まずは集まってくれてありがとよ。……って言ってる暇すらねえ。事態は一刻を争う事態になったんだ」

「え、それって今回の爆破事件がかなりの大ごとって話ですか?」


 学院の現在のトップであるエルザがそう聞けば、ギルベルトは苦笑いしながら頷いた。


「学院がこうやって爆破されたのだってかなりの大ごとじゃねえかよ。だがな、これはただの爆破事件なんかじゃねえ。もっとやべえ事になったんだよ」

「それが何なのかを教えて下さい!」


 本来エドガーが座っている筈の椅子に座りながらもったいぶるギルベルトに対し、熱くなりやすい性格のアレットが机越しに身を乗り出して続きを促す。

 それを大きな手で制しながら、ギルベルトは一同に向かって続けた。


「わーったよ。じゃー結論から話すとなあ、この学院に置いてあるドラゴンの身体の欠片が無くなっちまったんだよ」

「ええっ!?」

「そ、それってとんでもない危機的状況じゃないですか!?」

「嘘だろ、そんな……」


 レウス、ファラリア、ゴーシュのアーヴィン一家が一様に驚くのを横目で見て、事前にギルベルトから話を聞いていたエドガーがかなり落ち込んだ様子で口を開いた。


「今回起きたこの爆破事件は、どうやら俺達の注意を爆発の方に向けておく為のカモフラージュだったらしいんだ」

「カモフラージュだって?」

「そうだよゴーシュ。爆発は学院の至る所で起こっていたんだが、あのドラゴンの身体の欠片をしまってある部屋のドアも爆破された形跡があったんだ。ギルベルト様と一緒に調べを進めていった結果、まだ仮定の段階にしか過ぎねえんだけど、学院中の至る所で爆発が起きたのは恐らくドラゴンの身体の欠片を奪う為なんじゃないかって思ってんだよ」

「そんな……」


 絶句するゴーシュを筆頭にして、その後この部屋に居るメンバー全員で立てた仮説はこうだった。

 今回のマウデル騎士学院の爆破事件は、学院の全ての階層で満遍なく爆発が起こっている。

 爆破に使われたのは、魔力エネルギーを限界ギリギリまで溜め込んで暴発一歩寸前までの状態になる様に作り上げた魔力の結晶石。

 それを学院の倉庫や裏庭、トイレ等の人気の無い場所に合計五十個もの数を配置しておき、一際大きく作り上げた結晶石をそのドラゴンの身体の欠片が保管されている部屋のドアを吹っ飛ばす為に使った形跡があったのだとか。


「それで、小さな爆弾の連続爆破によって気を逸らしている内に、お目当ての欠片を奪い去って逃げたって訳か……」

「そう考えると確かに辻褄が合うよな。しかも、そのドラゴンの部屋には侵入者を排除する為のトラップが仕掛けてあるんだが、それが一切作動しない様に大元の機動装置まで爆破してやがったんだよ。俺が前にセバクターに教えちまったのがいけなかったな」

「教えた……?」


 エドガーからの告白に、レウスを始めとして部屋中の全員の視線が彼に集中する。

 その視線に対して、エドガーはかなり気まずそうに頷いた。


「ああ。あいつは在学中から特に腕が立っていたから、卒業したら是非ここの警備も担当してくれって頼んじまったんだよ。他の生徒には内緒でな。それが裏目に出ちまった……くそおっ!!」


 茶色のロンググローブが嵌められた彼の左手が拳を作り、部屋中に振動が伝わる位に強く、心底悔しそうに壁に向かって叩き付けられた。

 そんなエドガーに対して、ギルベルトとゴーシュが慰めに掛かる。


「やっちまったもんは仕方がねえ。これから先でどうするかを考えろよ」

「ギルベルト様の言う通りだ。そのドラゴンの身体の欠片を奪った犯人を捕まえて、取り戻す事に集中すれば良い」

「そうか……そうだよな。ありがとうございます騎士団長。それからゴーシュも」


 しかし、そのやり取りを見ていたファラリアが呟く。


「でも、聞いた所によればその犯人かも知れないセバクターって人が、幾ら休日だとはしてもそんなに大掛かりな作業を一人で出来るものなのかしら?」

「母さん?」

「だって、およそ五十個の結晶石が学院中に仕掛けられていたのよね。しかも忘れ物を取りに来たって学院に入って行ったのに、そんなに長い時間学院から出て来なかったら幾ら警備兵の人でも怪しむと思うけど……」

「うーん、確かにそれは言えるな」


 母の推理にレウスも頷く。

 しかし、その疑問について補足情報を出したのはエルザだった。


「赤毛の二人を忘れていないか?」

「あっ、そうか……その二人とセバクターが手を組んでいたとしたら幾らでもやりようがあるじゃないか!」


 エルザの一言で線が繋がった。

 あれだけの爆発物を学院中に仕掛けるのは、確かに一人ではかなり時間も手間も掛かる作業。

 だが、協力者がその時一緒に居たなら話は別である。

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