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506.行き先の決定

「背の高い人だって?」

「そう。私に見えたのはそれだけだった。それと黒い髪の毛なのも分かったわ」

「くっ……何処の誰だか知らないが、私達に対して良くもやってくれたな」


 やっと閃光も収まり、状況を把握した一行は先程の個室から出て地下通路の中を歩き続けていた。

 ちなみにサィードとイレイン曰く、あの個室は地下通路の奥にある「開かずの間」として有名な場所だったらしく、まさかその開かずの間の先にエヴィル・ワンの身体の欠片が眠っているとは思いもしなかった様だ。


「あの部屋はかなり強い魔力の封印が施されていて、今までどんな魔術師がどんな手を使ってもあの扉を開ける事は出来ませんでした。それならばと力技で壊そうとしても、物理攻撃を全て跳ね返してしまう魔術防壁も施されているらしくて、それもまたダメでした。でもまさか、あの壁画にあんな仕掛けがあったとは……」

「逆に聞きたいんだが、この遺跡になっている地下通路が発見されてから今まであの壁画の秘密に気が付かなかったのか?」

「ええ……」


 落胆した様子でそう言うイレインだが、サィードはこれでようやく謎が一つ解けたとご満悦の様である。


「まぁ、そう落ち込むなよイレイン。これで俺達も謎が解けたんだからさ」

「ですが王子、あのエヴィル・ワンの身体の欠片が何者かに奪われてしまったんですよ。まだまだやらなければならない事は沢山あるんです」

「……そうなんだよなぁ」


 イレインから現実を指摘され、今までのテンションが嘘の様に下がってしまうサィード。

 とりあえず、その欠片が入っている袋を持ち去って行ってしまった人物を特定するべく目撃者のアニータに話を聞きながら、地上に戻る為に歩き続ける一行。

 そしてアニータから聞き出せたのは、黒い髪の毛の背が高い人間だと言う情報だけであった。


「服装とか、それから顔とか見えなかったのか?」

「そこまでは分からなかった。光に阻まれて見えなかった。でも、黒い髪の毛の部分が見えている位に背が高かったのは覚えている」

「そうか……でも手掛かりにはなるよな。その黒い髪で背が高い人間を追い掛ける為に、俺達が動かなきゃならねえよな!!」


 その一方で、サィードとは違う理由でテンションがダダ下がりのレウスはパーティーの後方を歩いている上に口数が何時も以上に少なかった。

 自分がアニータやイレインにそんなに気持ち悪いと思われていたなんて……と凹むのは当たり前なのだが、そもそもうっぷんが溜まっていて殺されてしまったのがあの五百年前の事だと思うと更に凹んでしまう。


(くそ……俺は別に格好つけていたって訳じゃないんだが……何故だ、何故こうなったんだ!?)


 自分に酔っていると言われても、今までそうやって生きて来て何も言われなかったのだから別に問題は無かったと思っているし、そもそもそれで誰かに迷惑を掛けたのかと言われれば自分の中の答えは「いいえ」になってしまう。

 だが実際アニータやイレインにそう言われているし、五百年前に自分の性格が原因で殺されてしまったのだから、そこは事実として受け入れるしか無いだろう。

 そう決意するレウスの前方では、他のメンバー達がこれからの行き先について相談を始めていた。


「ねえ、これから先……どうするの?」

「どうするって言われてもな。お主は何か思い浮かばないのか、アレット?」

「ううん、あんまり。どうするのって聞いたドリスこそどうするのよ?」

「ん~、とりあえず姉様やエルザとも相談して決めようと思っているけど、行先は西の方で決まりになると思うわ。だってカシュラーゼには入れないし、エスヴァリーク帝国だって戻る必要が無いし」

「それもそうよねえ……あ!」


 これからの行き先を話し合っていたドリス、ソランジュ、アレット、サイカの四人の中で、サイカがその行き先を決める重要な単語を思い出した。


「そうか、あれよ!! エレインの手紙の内容に書いてあった国に行けば良いのよ!」

「書いてあった国?」

「そうそう! ほら、何処かに書いてあったでしょ。今度はシルヴェン王国にでも身を隠そうと思いますって。だから今度はシルヴェン王国よ!」

「そうか……エレインの行き先であるシルヴェン王国だったら、また何か手掛かりが見つかるかも知れないな」


 シルヴェン王国なら確かに何か分かるかも知れないが、そのやり取りを聞いていたレウスが違和感を覚えた。


「おいちょっと待て。シルヴェン王国ってのは確かエルザ曰く、アイクアルの領土の中にある小国だった筈だが、五百年前からあった国だったか?」

「え? 知らないの?」

「少なくとも俺は聞いた事が無いな。多分行った事が無いだけだと思うが……そんなに昔からあったのか?」


 しかし、それについて答えたのは先頭を歩くイレインだった。


「それは恐らく、昔のシルヴェン王国ですね」

「昔の? どう言う事だ?」

「シルヴェン王国は小さな国だった故に、アイクアル王国に飲み込まれる形で一度百五十年前に滅びたんですよ。ですがその後にシルヴェン王国を国家として復興させたい人々が尽力して、百年前に復活して、徐々に勢力を伸ばして来ているんです」

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