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505.待ち構えていたあいつ

「あいつ等は俺に対して……うっぷんを溜めていただって?」

「どうもそうらしいな。だが、まだお主に対しての話は続いているみたいだぞ」

「あ、ああ……」


 ソランジュに促され、レウスは手紙の続きを読んで行く。

 読みたくないと言う気持ちから口が思う様に動かない上に、心臓の鼓動もどんどん早くなって行くのを必死に意思でねじ伏せながら読み進める。


『その蓄積されたうっぷんを爆発させたいと思っていたガラハッドは、やがてそれが殺意に変わりました。アークトゥルスが寝静まった隙を見計らって、事あるごとに私に対してあのキザったらしいカッコつけ野郎をぶっ殺したいと何時もぼやいていたんです。……実を言えば、私もアークトゥルスに対しては何時かガツンと言ってやりたいと思っていました』

「うっぷんがやっぱり溜まっていたみたいね」

『私は確かに、アークトゥルスの事を気に掛けていました。けど、それも少しずつ嫌になり始めたんです。変な感じで格好つける様になって、それが鼻につく様になったんです。それで……私達はアークトゥルスを殺す方向に話を持って行きました。勿論、エヴィル・ワンを倒すのが私達の使命でしたから、それは最優先の任務でした』

「まあ、それはそうでしょうね」


 相手も居ないのに、メンバーはレウスの読み上げが途切れるタイミングで相槌を入れながら更に読み進める。

 段々と不穏な空気がその手紙の文面から漂い始めたが、それでも読み上げるのを止める事は出来ない。


『ですが、エヴィル・ワン討伐と並行して最終的に口裏を合わせてアークトゥルスを殺す。それをもう一つの最終的な目的として、リーダーの彼にひた隠して旅を続けました。その途中で彼を殺す為にどうすれば良いか、彼を殺した後の世界で自分達はどうなるのか、アークトゥルスが私に対して思いを抱いていたのも知っていましたから、私はそれに対してかなり複雑な心境でした。そう、私はガラハッドとアークトゥルスの二人に恋心を抱かれていたんです。でも、私はその二人の恋心に同時に応える事は出来ず、結局ガラハッドを最終的に選びました。でも、それももう終わり。私はもう行かなければなりません。もっと西へ……そう、今度はシルヴェン王国にでも身を隠そうと思います』


 この文面を読んでいた時、サィードが率直な感想を述べる。


「これ……あれだな。このエレインって女も相当自分に酔っている気がするんだよな」

「エレインも?」

「ああ。だって何だか今の文面って、手紙って言うより詩みたいだし。いかにもこう……自分は罪作りな女ですみたいなのが、こうやってレウスの声で読み上げられているだけでも伝わって来るって言うかさ」

「そうよねー。私もそう思うわ。大体、アークトゥルスはエレインに対して恋心を抱いていたの?」

「いいや、全然」

「だったら相当な勘違い女じゃねえか、こいつもよ!」


 サィードの呆れた声に対して、レウス……いや、アークトゥルスも変な汗を額から流しながら頷いた。

 自分はどうして、こんな場所でこんなバカげた手紙を読んでいるんだ?

 そもそも自分がエレインに対して恋心を抱いていたなんて、勝手な妄想を手紙につづられていたのが腹立たしくてしょうがない。

 そう考えると無性に腹が立って来るアークトゥルスだが、手紙はここで終わってしまっているのでそれ以上の真実の追求は出来そうに無かった。


「くそっ、手紙はここで終わりか!」

「秘密の日記がどうのこうのって言っていたから、エレインだけにしか知らない日記が何処かにあると言う話だよな?」

「そうそう。って事は、それを探しに行けばまた何か分かるかも知れないわね」


 しかし次の目的地が定まっていない以上、ひとまずこの地下の個室から出て自分達が何処に居るのかを把握しなければならない。

 なので手に入れたエヴィル・ワンの身体の欠片と水晶と手紙を持ち、唯一の出入り口となっているドアのかんぬきを外して外へと出た……その瞬間!!


「ぶほっ!?」

「ぐああああっ!」

「うわ、まぶしっ!!」


 突然、何の前触れも無しにバシュウウウッと音を立てながらまばゆい光が激しく点滅しながらパーティーメンバー全員に襲い掛かる。

 それと同時に誰かに体当たりを食らったアークトゥルス……いや、レウスはその身体の欠片が入った袋を落としてしまったのだ。

 それに気づくとほぼ同時、アニータの声がパーティーメンバー達に向かって届く。


「あ、ちょっと待ちなさいよ!!」

「く、くそっ……何があったんだ?」

「人影が袋を持って行ったわ! 急いで追わないと!!」

「何だと!?」


 光の発生源はいきなり投げ込まれた魔晶石によるもの。

 この魔晶石は閃光を発して目くらましをさせる物らしく、全くの無防備だった一行は直接その光で目をやられてしまい、完全にそのショックで攻撃も防御も出来なかった。

 そしてその隙を突いた誰かに、エヴィル・ワンの身体の欠片が入っている袋を奪われて逃げられてしまった。

 唯一、最後に部屋を出ようとしていたアニータは魔晶石の閃光から一番離れた場所に居たので、その持ち去った人影がチラリと見えたらしい。


「アニータ、持ち去ったのってどんな奴だった!?」

「確か……黒い髪の毛で背の高い人よ!」



 八章 完

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