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501.壁画の謎

 やっとの事でこの透明な、黒と紫のまだら模様のドラゴンを倒した一行だが、まだ地下通路の探索は終わっていない。

 何故なら、イーディクト帝国の北にあるウェイスの町の転送陣から初めてこの通路の中に入って来た時、ディルクと対面したあの壁画の部屋の謎が解けていないのだ。

 それから以前、何処かで聞いた覚えのある地下通路の奥の封印とドラゴンの身体の欠片に関しても、まだこの中から見つかっていない以上ここで引き上げる訳には行かない。

 休憩がてら、その事をサィード達から聞いたイレインは顎に手を当てて考える。


「壁画の部屋……確かにありましたね、その部屋。確か壁画が回転する仕組みになっていたかと」

「そうだな。確かあの時は俺とエルザとギルベルトの三人であそこに行って、そしてディルクに出会ったんだっけ」

「そうね。その時の事、もっと良く思い出せないかしら?」

「その時の事か……」


 ギルベルトは既にリーフォセリアに帰ってしまっているし、エルザは上でティーナと一緒にホルガーの見張りをして貰っているので、記憶の頼りはこのレウスだけなのである。

 その頼りにされているレウスはパーティーメンバー達全員の視線を受けながら、あの時のディルクとのやり取りを思い出し始めた。


『もしかしてあの町の中に居た、カシュラーゼから命令を受けた傭兵集団はてめえの仲間か?』

『そうさ。僕が都合の良い様に動かしていた人足みたいな奴等だよ。さっきも大きな魚を土産にくれてやったらそれだけで喜んでいたからね。その日暮らしで食うのにも困っていた様な奴等をここまで使ってあげたんだから、感謝して欲しいもんだよ』

『何だと? てめえは一体何もんだぁ?』

『ふん、僕の研究の邪魔をしておいて僕の素性を明かせだなんて、勘違いも程々にして貰いたいね』

『んだとぉ!? そもそも研究って何を研究してんだよ?』

『研究はこれだよ』



 ニヤリと嫌らしい笑みを浮かべたディルクは、そう言いながら壁の一部分をドンっと拳で叩く。

 するとその瞬間、彼が拳を叩き付けたすぐ横の部分の壁が隠し扉の如く横にグルリと半回転した。


「その壁の裏にあったのが、あの壁画だったんだよな。古びてボロボロで、所々が剥がれ落ちているがそれは間違い無く壁画だったよ」


 それを見せたディルクはこうも言っていた、とレウスは立て続けに思い出して行く。


『僕が三か月前に色々と探検していた時にここで見つけた壁画だ。この滅亡した国にこんな物があるなんて興味深かったから色々調べて研究していたんだけど……君達にこうやって邪魔されたんだよね』


 その記憶を辿るレウスの呟きを聞いていたアレットが、そう言えば……とレアナからのテレパシーの話を思い出した。


「あれ、確かレアナ様もエヴィル・ワンの話をしていなかったかしら?」

「ええ、それは確か……ディルクがこの地下通路の奥に、エヴィル・ワンの波動を感じたってわざわざレアナ様に報告して来たので良く覚えているって話だったわね」


 アレットに続いてサイカも思い出す。

 ディルクが心底、エヴィル・ワンの復活を楽しみにしている様だったと言う事、しかし前に一度ヴァーンイレスの地下通路に向かった時にはそれを見つける事が出来ず、一度カシュラーゼに戻ってエヴィル・ワンの研究と波動の解析を進めていたらしいと言う話もしていた。


「なぁイレインとサィード、お主達はその波動について何か知らないか?」

「いいえ……僕は聞いた事が無いですね。エヴィル・ワンの波動と言うのも聞いた事は無いですし」

「俺も知らねえな。その波動ってのはどうやらあのディルクが感じている特殊なもんらしいし」

「そうか……だったらさぁ、まずあの壁画の部屋にもう一度行ってみるって言うのはどうだ? 何か手掛かりが見つかるかも知れないだろう?」

「うーん、そうね」


 今の所、それしか手掛かりが無いのであればすぐにそれを調べるべきだと考える。

 と言う訳でレウス達は、イレインとサィードの道案内によって再びあの壁画の部屋までやって来たのだが、パッと見ても何か仕掛けがある様には思えなかった。


「ただボロボロの壁画にしか見えないわね、これ」

「そうだよな。お主は何か見えないか、レウス?」

「いいや全然。何かしらの仕掛けがあるのかと思ったけど、別に壁画が回転したり壁の中に入り込んだりってのは無いみたいだ」

「そうですか……でも、確か僕が先程レウスさんのお話を聞いていた限り、ディルクは貴方と初めて出会った時に壁を叩いてこの壁画を出現させたんですよね?」

「ああ。だからこそなんだよ。そんな仕掛けを作ったって事は、この壁画をどうしても隠しておきたかったからだと思うんだ」


 意味も無しに、そんな壁が回転する様な大掛かりな仕掛けを作ってまでこの壁画を隠しておく理由が見つからない。

 絶対にここには何かがある。それを見つけられれば、きっとそのエヴィル・ワンの身体の欠片に辿り着けるだろう。

 そう考えていたレウス達だったが、ふとアニータがポツリと呟いた事が切っ掛けで、壁画に関する話が急展開を見せ始めた。

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