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494.お前、居たの?

「まさかお前とこんな場所で再会するなんてな」

「ふんっ、ここで会ったが百年目。この機会に俺はお前をぶっ殺すしか無いよな!!」


 イレインの道案内によって案内された人肉工場。

 その最深部において、レウス達はまさかの人物と再会した。それはレウス達がこのイクバルトの町に入って来た時から全てが始まった。


「おい、お前達も向こうから攻撃されない限りは自分から攻撃はするなよ」

「え……何で?」

「王都のイレイデンでも、北のカシュラーゼに近いリリヴィスでも、もっと言うならベリザッコ城でも俺達の方からは攻撃していない。この事実があれば正当防衛だと言い張る事が出来るからな」

「でも、このヴァーンイレスに来たのは不法入国だって思われないかしら?」


 ドリスの言い分に対し、レウスは「お前は一体何を言っているんだ?」と言いたげな顔をして続ける。


「あのな、このヴァーンイレスは元々サィードの国だぞ? そのサィードが自分の国を取り戻す為に自分の国に入るのに、何も遠慮する事は無いだろう?」

「まあ、それはそうだけど……」

「それに俺達がこの国に入らなければ、あの地下で秘密裏に製造されていた大砲の存在を知る事も無いまま、他の国が砲撃されていた可能性だってあるんだからな」


 だからむしろ、カシュラーゼ以外の国からは攻撃対象になっていた事を先に知らせてくれて感謝して欲しいもんだ、とレウスは思う。

 事実、このイクバルトを奪還して王都のイレイデンに戻った時に、地下のドラゴンを討伐しに行くよりも先にこの大砲の話をカシュラーゼ以外の全ての国に伝えるつもりであるからだ。

 レウスがそう考えていた矢先、またバタバタと身の程知らずな敵達が姿を見せて襲い掛かって来た。


「良いか、向こうから攻撃されたら反撃するんだぞ」

「防御して反撃でも良い?」

「勿論だ。さぁ、人肉工場を潰しに行くぞ!!」


 そう意気込んで人肉工場に向かい始めた一行は、その目的とする人肉工場以外にも食品を加工する為の工場が幾つもある事に気が付いた。

 サィードとイレイン曰く、農耕を主な産業としているアイクアル王国から食材を輸入する事が多かたこのイクバルトには、そうした鮮度がまだ落ちていないなるべく新鮮な食材を加工して、ヴァーンイレスの全国各地へと流す為の工場が稼働していたらしい。


「でも、お前達が見つけた人肉工場って言うのはその一つだけなのかよ? 敵の立場に立って考えてみると、既にここには食材を加工する為の工場が色々あるんだから、もっと人肉工場が沢山あってもおかしくねえと思うけどよぉ」

「それは王子のおっしゃる通り、僕も最初は同じ疑問を抱きました。ですが調べを進めて行くと、やはり人肉工場はあそこの一つだけでした。どうやら元々あったその他の工場は本来の使い方をされていて、このヴァーンイレスを占拠したカシュラーゼの国民を始め、同盟国の国民達に向けた食品加工場となっていたらしいで」

「はーん、それってつまり設備を無駄にしたくねえって事か。それに同盟国があるんだったら確かにそっちとも食料を使って取り引きが出来るしな。でも、そうなると人肉工場が一つだけってのは犠牲者が少ないだけ、まだ不幸中の幸いって言えるぜ」


 その後も町中で自分達に襲い掛かって来る敵を倒しながら、不幸中の幸いである人肉工場にようやく辿り着いた一行。

 しかし、レウスやサィードがそこで思わぬ人物に再会する事になったのである。


「よぉー、待ってたぜ……この依頼を受けて正解だった」

「んっ!?」

「え、あ、貴方って確か……」

「おいちょっと待て、貴様は確かレウスの両親に喧嘩を売って捕まった、あの便利屋じゃないのか!?」

「そーだよ。良く覚えてんなー」

「そりゃあ覚えているさ。レウスだけじゃなくて俺もてめぇを覚えているからな、ホルガー!!」


 人肉工場の最深部で待ち構えていたのは、何と意外にもイーディクト帝国で出会った便利屋のホルガー・アンハイサーだったのだ。

 本当に意外過ぎる人物の再登場に、彼を知らないヒルトン姉妹とイレイン、そしてアニータ以外のパーティーメンバーは驚きを隠せない。


「何で貴方がここに居るのよ? だって貴方……イーディクト帝国でレウスの両親を襲撃して捕まったでしょ!?」

「そうだよ。イーディクト帝国の帝都グラディシラのスラム街にある、小さな倉庫の一角にそいつの両親を連れて行ったさ。それで俺は捕まった。だけど、その俺をイーディクト帝国の路也の中から逃がしてくれたのもそいつの両親なんだよな」

「……はい?」

「ちょっと待て、話が見えないんだが……」


 自分が捕まる原因になった人間達が、自分を牢屋から出してくれた?

 全く話が見えて来ないので、これには五百年前の勇者であるアークトゥルスの生まれ変わりも腕を組んで、頭の中にハテナマークを浮かべて悩んでしまう。

 そんな様子のレウス達に対して、ホルガーは自信満々にこう言い放ったのだ。


「つまり、便利屋の俺に依頼を頼みたいって事で脱獄させてくれたのさ」

「まさか……皇帝のシャロットさんも私達の敵に回ったの!?」

「それは違う。そこの金色の無造作ヘアー男の両親がお前達の敵に回ったってのは確かだがな。俺に利用価値があるって事で、わざわざもう一度イーディクトまで来てくれて、地下牢に忍び込んで助けてくれたんだよ!」

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