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493.防御は最大の攻撃

 レウスは左手に持った槍と笛を掲げてそう言いながら、自分の右手にどす黒いオーラを纏わせて目をカッと見開き、それと同時に身体を一回転させつつ右手を大きく薙ぎ払う。

 すると一瞬にして、そのどす黒いオーラがレウスの身体の周囲に円形の壁となって展開し、見る者全てに威圧感を与える。


「う、うえぇ!?」

「何度見ても不気味なものだな……」

「こ、これが禁断の闇の魔術……!?」


 驚くパーティーメンバーを尻目に、レウスは笛を一度コートの内側にしまい込み、そのオーラを纏ったまま町の出入り口に向かって歩き出した。

 その威圧感たっぷりの姿はパーティーメンバーのみならず、イクバルトの出入り口を固めている、アイクアル王国騎士団の団員を中心とした敵にも恐怖の対象として効果抜群だった。


「な、何だありゃあっ!?」

「ひぃぃっ、化け物!?」

「う、うろたえるな!! 全員戦闘準備だ!!」


 真っ黒なオーラを全身に纏いながら歩いている一人の人間が、確実に徐々に自分達の方に向かって歩いて来るのを見て、驚かない者はまず居ないだろう。

 手に槍を持っている姿から戦士の類かと思ったが、それにしては余りにも異様な人物なのは間違いない。

 その人物は一行の目の前でピタリと止まり、おもむろに口を開いた。


「ここはイクバルトの町で合っているか?」

「え……え?」

「イクバルトの町なのか、ここは?」

「そ、そうだが……貴様は何者だ!?」


 明らかに裏返った声でレウスに対して正体を問い掛ける、騎士団員達のリーダー格の男。

 そんな彼に向かってレウスは簡単に答えた後、次の質問をぶつける。


「俺はこのヴァーンイレス王国の国王となる男から命を受け、この町の奪還をするべくやって来た旅人だ。……次の質問をさせて貰うが、ここに人肉工場を建てたと言うのは間違いないか?」

「そ、そんな事は貴様に関係無いだろう!」


 身体と声が震えながらも精一杯のボリュームの声で返答する男だが、レウスはその態度が気に食わないのでムッとしながらもう一度同じ質問をする。


「そんな事は聞いていない。俺はこのイクバルトの町の中に人肉工場を建てたのか、建てていないのかどっちだと聞いている。同じ質問を何度もさせるな」

「く、くそっ……国王となる男からの命だか何か知らないが、これ以上この町の中を探ろうと探るのなら、国家反逆罪でひっ捕らえるぞ!!」

「やれやれ……」


 どうやら、質問には答えて貰えそうに無いらしい。

 ならば仕方無いとばかりに、レウスはハァーッとわざとらしく溜め息を吐いて一歩前に踏み出した。


「残念だが、お前達には俺を捕まえる事は出来ない」

「何だと?」

「一つだけ忠告しておいてやる。俺に攻撃をしたら、お前達にはその倍のダメージが襲い掛かるぞ。つまり大きなダメージを与える攻撃をすればするほど、俺はお前達に対してその倍のダメージを与える事が出来る。場合によっては一撃死もあり得るかも知れない。それが嫌なら、さっさと塞いでいるこ出入り口を開けて俺を通すんだな」

「一撃死だと……? 貴様、まさかディルク様からの連絡にあった……アークトゥルスの生まれ変わりだとか名乗っている奴か!?」

「お前達がそれを知る必要は無い。さぁ、分かったならさっさと大人しく道を開けるんだ」


 堂々としたその立ち振る舞いの男に対し、リーダー格の男は右手を大きく振るって叫んだ。


「だ、誰であろうとここを通す訳には行かない! お前達、この分からず屋を叩き潰せ!!」

「なら、このまま通させて貰うぞ」

「ごはぁっ!?」


 一斉に襲い掛かって来る、出入り口を固めている敵の群れ。

 しかしレウスはその誰にも自分から手を出す事をせず、ただまっすぐに自分の通るべき道を地面を踏みしめながら歩いて行く。

 ただそれだけなのに、彼に向かって攻撃をした筈の敵が次々に地面に倒れてしまう、遠目から見ても異様な光景が繰り広げられていた。


「ぎゃっ!」

「うぐぇ!?」

「ぐほあああっ……」


 既にリーダー格の男は地面に倒れて絶命し、その他の仲間も次から次へと倒れる光景に戦意を喪失し、町の中へと逃げ込んで行く敵もチラホラ現われ始めた。

 だが、レウスはその敵を追おうとはせずに敵の群れをゆっくりと歩いて通り抜けた後、グルリと周囲を見渡して哀れみの言葉を簡潔に呟いた。


「忠告した筈だ。愚か者が……!」


 彼の周りには、既に物言わぬ肉塊となって倒れている敵の姿しか存在しなかった。

 それを確認したレウスは、制服のコートのポケットから再び警笛を取り出して咥え、ありったけの力で笛を吹き鳴らした。

 その警笛の音を聞いて、待機していたパーティーメンバー達が反応する。


「出入り口、開いたのかしら?」

「そうらしいな。だが、この望遠鏡で見ている限りでは確かにレウスは自分から攻撃していなかった。やはり、あの闇のオーラを纏う魔術が遥か昔に滅びたものだったと言うのは本当だったのか!」

「感心している場合じゃないだろう、エルザ。お主も私達と一緒にさっさとあそこに向かうぞ」

「分かっている」


 これで出入り口は開いた。

 残るは人肉工場を見つけて破壊するだけなのだが、そこには意外過ぎる人物がまた待ち構えていたのである……。

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