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492.正面突破

 しかし、今はそんな事よりも先にイクバルトの町に乗り込まなければならない。

 確かに自分達がアニータの存在をすっかり忘れてしまったのもあるが、レアナからテレパシーを使っての会話が来る事は全く予想出来ないので、咄嗟に色々と答えてしまった。

 しかもレアナの場合、テレパシーの冒頭に「アークトゥルス」とつけて来るので、わざわざそうやって呼ばれると一気に正体がバレてしまう事になる。

 レアナに悪気が無いのは分かるのだが、今回の様に全く事情を知らない人物が自分達の周りに居る場合も大いに考えられるので、また次にテレパシーが来たら注意しようと考えていた。


(けど、アニータにこうして聞かれてしまった以上は俺の事を話すしか無い。あれだけハッキリと脳内に向かってアークトゥルスって言われてしまったら、隠そうにも隠し切れないからな)


 だが、それもイクバルトに乗り込んでからの話である。

 アニータに対してまずはそう説明して事情説明を後回しにし、レウスはまず町の方に向けて探査魔術を展開して、レアナから得た情報を基にして町の中にどれだけの戦力があるのかを把握する。


「……どうやら出入り口付近に多数の戦力を集結させて、待ち伏せを用意しているみたいだ。となれば町の住民はそのほぼ全てが敵と言って良いだろう。となると戦力がかなりあるだろうな」

「皆殺しとかしちゃうの?」

「するかそんな事。そもそも俺はそんな話の為に動いている訳じゃないからな。あくまでこちらに対して敵意を向けて来る者だけに対して反撃するだけだ。無益な殺傷なんてしてたまるか。逆に聞くが、アニータはそう言う感情で動くの?」

「いいや、別に」


 口数少なく否定するアニータを見て、やっぱりこの女とは何だか話しづらいしそりも合わなさそうだ、と再確認するレウスは、槍を握りしめてイクバルトに向かって歩き出す。完全にやる気だ。


「行くのね?」

「ああ。戦力はこっちが断然不利と言うのは分かった。町の中の様子は細かい所までは分からないが、人肉工場までの道のりはイレインが知っているんだろう?」

「ええ、一応は」

「だったらまた道案内を頼む。それなりに広い地方都市なのは頭に入れたからな。言っておくが今回は小細工無しの正面突破だから、各自最初から戦闘が激化する事だけは頭に入れておけよ!」


 探査魔術にも限界があるので、後は実際に町の中に入ってみなければ分からない状況だらけである。

 だがその前に、レウスはもう一つだけアニータとイレインに聞きたい事があったのを思い出した。


「そうだ、イレインとアニータに聞きたいんだが……あのイクバルトの町には何か危険人物の情報は無いのか?」

「危険人物?」

「そう。ほら……あのコラードの様に指揮を執る新しい人間が派遣されたとか、ユフリーの様に使者が来るって情報があったとか、そう言うのだよ」


 そう問われた二人はお互いに顔を見合わせ、ほぼ同時に首を横に振った。


「私は知らない」

「僕も分かりません。イクバルトに関しては人肉工場があると言う状況しか掴めていませんから」

「そうか。だったらさっさと潰してしまおう。それとリリヴィスの方には、イレインの仲間達は既に向かっているのか?」

「はい、それは既に手配しております」

「ならここも制圧が終わり次第、仲間を回せるだけ向かわせて残りの奪還作業を頼むぞ」


 そうして正面突破へと向かうべくどんどんイクバルトの町に向かって近づくレウス一行。

 ディルク達の方にも既に情報が回っている事もあり、残りの人肉工場を破壊するだろうと踏んで待ち伏せを用意しているらしい。

 アニータにも、その待ち伏せでまずは戦闘が激しくなる事は十分予想出来た。


(アークトゥルスの生まれ変わり……それって嘘っぱちかも知れないけど、今までの人肉工場を呆気無く破壊したあの魔術とかを見ていると、信じて良いのか悪いのか微妙な所よね)


 内心ではレウスの素性を疑っているアニータだが、レウスがとんでもない技でその待ち伏せを突破すると彼女が目の当たりにするのは、町の出入り口に近付いてからだった。

 何故なら、レウスはイクバルトの出入り口に近付きながら詠唱を既に終わらせ、特大の魔力をその大技の為に溜めていたからである。

 それは久し振りに繰り出す「ナイト・プロヴィデンス」。

 闇属性と呼ばれる、この世界における五番目の魔力の属性を駆使する防御魔術を己の身体の周囲に展開する事で、物理攻撃も魔術攻撃も関係無しに全ての攻撃を吸収して無力化出来る。更に、使用者を囲っているその闇のオーラに向かって繰り出された攻撃の二倍のダメージを、その攻撃を繰り出した相手に跳ね返す。

 遥か昔に滅んだと言われている、世間に出回る事を恐れた魔術師達によって封印された禁断の魔術の一つでまさに規格外。闇属性の魔術のトップクラスに位置づけられているに相応しいものである。


「お前等はここで待て。まずは俺一人で行って交渉してみる」

「えっ? それじゃあやられるだけじゃあ……」

「まあ見ていろ。俺からは手を出さないが、ダメなら敵のど真ん中をそのまま通り抜けるだけだ。いずれにせよ、出入り口が開いたらこの笛を吹き鳴らして合図を送る。それが突入の時だ」

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