486.アニータによるドラゴンの対処法伝授
ついに累計100万PV突破しました。感謝感謝です。
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「それじゃ、イレインが言っていたカシュラーゼ側から抜けたがっているって人がこの……」
「アニータさんですね」
リリヴィスの町からワイバーンで一気に離れ、全方位が見渡せる見晴らしの良い平原の中に着陸した一行の中で、イレインから紹介されたアニータはコクリと頷いた。
人見知りな性格なのか、そもそも不愛想なだけなのかは分からないが自分から言葉を発しようとはしないので、レウス達がアニータに話し掛けるスタイルで会話が進んで行く。
そう考えてみると、アニータの方から自分達に話し掛けて来たあの時の展開は奇跡みたいなもんだったんだなー、とレウス達は考えていた。
そんな無口で冷たい態度のアニータによる話は、まさかのかなり意外な話だった。
「ドラゴンの対処法!?」
「そう。カシュラーゼがこのヴァーンイレスの王都のイレイデンの地下に配備した、あの生物兵器の対処法を話しておこうと思って。私もカシュラーゼの非人道的な行為には、これ以上目をつぶれないから」
「淡々と話すのが何だか怖いが……なら、貴様が知っている事を全て教えてくれ」
エルザの要望に対し、アニータは同じ様に淡々とした口調のままで話を続ける。
「あの地下のドラゴンは、カシュラーゼが生み出した生物兵器。あれは物理攻撃も魔術攻撃も効かない、まさに無敵の存在。そもそも、あのドラゴンには魔力が無いの」
「魔力が……無い?」
「ええっ!? そんなのってこの世界であり得ないわよ!!」
レウスよりも驚いているのはアレットだ。
魔術師と言う立場の彼女からしてみれば、この世界の生物に魔力が無いと言うのはあり得ない話なのだ。
その辺りに生えている草の一本にさえも、絶対に魔力が存在するのがこのエンヴィルーク・アンフェレイアと呼ばれる世界の、絶対の話の筈なのに。
それなのに……魔力が無い生物と言うのはこの世界に存在しない。そう考えるのが自然である。
「じゃあもしかして、あのドラゴンは幽霊とかそう言う類って事なの?」
「違う。さっきも言ったけど、あれはカシュラーゼの生み出した生物兵器。だから魔力が無くても動くの。魔力が無いから探査魔術にも反応しないと思う。それから魔力が無い存在だからこそ魔術も通用しないし、物理攻撃が通用しないのは、魔力が無いからこの世界の存在として実体化していないって事かしらね」
「さっき貴様は言っていたな。無敵の存在だって。そう言われれば確かに納得するし、実体化していないのであれば扉や壁をすり抜けて追い掛けて来る事が出来るのは納得が行くが……ならどうやって倒せば良いんだ?」
そんな無敵の存在を相手にして、どうやって勝てば良いのか?
頭を悩ませる冒険者達に対して、アニータはやっぱり淡々とした口調で方法を口に出し始める。
「一つだけある。あのドラゴンを実体化させて倒すのよ」
「実体化するって、今までの貴女の話からすると魔力をそのドラゴンの体内の中に入れるって事になるわよね?」
メンバー達が乗って来たワイバーン達にエサを与えながらそう言うドリスの指摘に、無表情のままではあるもののアニータは頷いて肯定した。
「そう。……それから聞くけど、貴方達が出会ったそのドラゴンは身体が透けていなかったかしら?」
「ああ、そういやー透けてた様な気がするな。でもその対処法をこうやって教えてくれたとは言え、実体化させて倒すってなるとやれる事って限られるんじゃねえの? あいつはバケモンだしよぉ」
「そうよねぇ。サィードの言う通り、あのドラゴンに立ち向かうだけでもかなり危険そうよ。それなのに実体化させるなんて……」
そんな事が本当に出来るのか? と疑わしく思うサィードの横で、サイカも腕を組みながらうんうんと頷いて彼のセリフに同調する。
しかし、アニータはそれに対してとんでもない事を言い出した。
「対処法はあるわ。簡単よ」
「え?」
「簡単って……そんなに簡単に行くものなのですか? 私はそうは思えないのですが……」
「そう思って欲しい。やり方は人肉を食べさせて魔力を充填させ、実体化させて攻撃する。これだけよ」
「じ、人肉って……もしかして……」
青ざめるティーナに対して、当たり前だと言わんばかりにアニータは頷いた。
「そう、この国には人肉が山程あるじゃない。あのまま命を無駄にされて焼却処分されてしまうよりは、ドラゴンの対策の為に食べられる方が役に立つと思うわ」
「で、でもな……お主の言いたい事も分かるが、それこそ人道的にダメな話なんじゃないのか?」
まさかの人肉を食べさせると言う対処法に対して、引き気味になりながらそう言うソランジュ。しかし、アニータは冷たい横目でソランジュを睨みつけながら言った。
「なら、貴女はこれ以上カシュラーゼの横暴を許しておけるのかしら?」
「いや、それは許しておけないが……」
「それだったら多少の犠牲は必要でしょ。そもそももう犠牲になっちゃっているんだから、最後に役に立てる方がその犠牲になった人も浮かばれると思うけど」
「……俺は、アニータの考えに賛成だ」
「レウス!?」
何とも言えない空気がアニータとソランジュの間に流れた次の瞬間、レウスがアニータに賛同するセリフを言い出したので、更に空気がカオスになり始めた。
7月1日から仕事が再開しますので、更新ペースが遅くなるかと思います。
それでも最低、1日1話は投稿出来る様に頑張ります。




