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485.地下からの脱出

「……う、うわっ!!」


 ギギ、ギッと明らかにこちらに倒れて来る大砲の影を確認したサイカは、すぐに横っ飛びで右へと向かって飛んだ。

 そっちは自分が他のメンバー達と一緒にここに入って来た出入り口のある方とは逆だ、と気付いたのは避けて立ち上がってすぐの事だった。

 倒れて来た大砲はそのまま壁に向かって寄りかかってしまい、それで止まった……筈だったのだが。


「……ん!?」

「え、あれっ? 何この音……」

「何だかミシミシ言ってないか!?」


 大砲が思いっ切り壁に向かって倒れ込んだ事によって、どうやらこの地下室の構造そのものに異変が生じたらしい。

 部屋全体がメキメキと嫌な音を立て始めたばかりか、天井からパラパラとその天井の破片が落ちて来る。

 この展開は明らかにまずいと血の気が引いて行くサイカの耳に、叫ぶイレインの声が聞こえて来た。


「サイカさんっ、こっちのハシゴを上って脱出しますよ!!」

「ええっ、何よそのハシゴ!?」

「最初からここに取り付けられていたんですよ! さぁ早く……ここは崩れます!!」


 イレインが見つけたハシゴは、サイカが咄嗟に回避行動で飛んだ方向と同じく出入り口のある方とは逆。

 それが幸いし、素早くそのハシゴに駆け寄ったサイカは既に上り始めていた他の四人に続いて上り始める。

 だがその時、ふとある事に気が付いて大砲が倒れた場所を振り向くサイカ。


(そうだ、あの男を飛び蹴りで叩き付けた壁って確か大砲の砲台が倒れた方だったわよね……)


 しかし、徐々に大きく崩れ始めた天井や壁の状況に対してそれ以上の状況を確認する事が出来ないまま、一目散にハシゴを上り切ったサイカは他のメンバーと合流し、崩れ落ちて行く地下の大砲製造部屋の音を呆然とした表情で聞いているだけしか出来なかった。


「これで……大砲の計画は阻止出来たみたいね」

「ああ。あのコラードって言う男と一緒に計画は潰えたって訳だ」

「そうですね。ですがまだ僕達の進軍は終わっていませんよ。もう一つのイクバルトの町に向かって、そこにある人肉工場を潰さなければなりませんからね」

「そうか、そっちにもあるんだっけ……」


 この博物館に来るまでの間、イレインからこのリリヴィスの町の行動が終わった後の進軍に対して再確認した四人は、イクバルトの町の話を思い出して誰からともなく溜め息を吐いた。

 そして、あの銅像の下にあった階段を見つけた時の自分達のやり取りの一部も思い出していた。


『それなんですけど、どうやらカシュラーゼの連中はこの博物館の地下に新しい倉庫を増築するって話を通していたらしいんですよ。だからその作業だと偽って色々と材料を運ばせれば、大砲を造るって言うのも怪しまれないんじゃないかと思います』

『まぁ……それなら確かにこれをずらしっ放しにしていてもつじつまは合うけど、こんな銅像で隠す様な真似をするのは変よねえ?』

『やっぱりそれって、カシュラーゼの連中が他の同盟国の人物に階段を見つからない様にする為でしょうね。でもそれだったら、恐らくこの下の地下から外に出られる出入り口が別にあるんじゃないでしょうか? 僕が調べた所によれば、カシュラーゼのトップに君臨しているって言うディルクと言う男はなかなか頭が切れる男らしいですから』


 この会話の中に出て来たディルクが、そのイクバルトの町にも大砲を製造していないとも限らない。

 ならばその町についての話ももっと調べなければならないだろう、と思いながら博物館の出入り口のドアをドリスのハルバードで叩き壊し、脱出する事に成功した。


「ディルクがこの大砲製造計画を邪魔されて、大砲を地下室ごと破壊されたって言うのもすぐに伝わってしまうだろうな。だったらすぐにこのリリヴィスの町を脱出しなければならないな」

「そ、それは良いけど……人肉工場に向かった他の四人と合流しなければならないわよ!」

「それもそうですね。だったらドリスの言う通り、私達もその人肉工場へと向かいましょう。イレインさん、私達をその人肉工場へ案内して下さい」


 だが、イレインは首を横に振った。


「いいえ、その必要はありませんよ」

「何故です?」

「ほら……人肉工場へ向かった方々がやって来ましたよ。もう向こうの方は片付いたのでしょうか?」


 そう言いながら指を差すイレインの視線の先には、イレイン達の方に向かって走って来るレウス達……と、見覚えの無い赤毛の小柄な女の姿があった。

 そして博物館の方に向かって来たレウス達も、イレイン達に気が付いた様で口々に叫ぶ。


「あっ、おーい!! イレイン!!」

「ソランジュ、サイカ!!」

「みんなの方はもう終わったのー!?」

「ああ、私達の方は終わったぞ。お主達の方はどうなったんだ?」

「こっちも人肉工場を爆破して来た! ここの拠点制圧が終わったんならイクバルトの町に向かうぞ!」


 こうして無事に合流したレウス達一行とイレイン達一行は、新しい仲間を加えてイクバルトの町に向かう流れになった。

 だが、その前に新たな仲間のアニータから話があると言う事で、ワイバーンを使ってリリヴィスの町から離れつつその話を聞く事になった。

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