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481.博物館の気配

 しかし、その抜けたがっている人物に色々と喋ってしまった人物はかなりうっかりしていたらしく、こうしてイレイン経由で話が伝わってしまった。

 何にせよ、こうして博物館の地下に大砲を建造している場所があると言うのが分かっただけでも大きな収穫なので、一行は即座にその大砲の製造場所へと向かう事にする。


「あそこですか?」

「そうです。あの馬のオブジェクトが屋上に飾られている、特徴のある博物館ですよ」


 ティーナが指差した先を見てイレインが頷いた。

 彼の言う通り、その博物館の建物の屋上には茶色い馬の大きなオブジェクトがドーンと置かれている。イレイン曰く、あのオブジェクトによって博物館であるとすぐに分かる様に建てられた目印らしい。

 何故馬のオブジェクトなのか、とティーナが聞いてみれば、何代か前の国王が馬が好きだったのでその影響でオブジェクトが設置されたのだと言う。


「ベリザッコ城の至る所にも、実はそれと無しに馬のオブジェクトが設置されていたんですけど……皆さんはサィード王子とともに敷地内に入ってから気付きませんでした?」

「全然気が付かなかったわ。そもそもあの時は地下でドラゴンに追い掛け回されていた後だったし、城の中でも敵と戦いながら進んでいたからそんな余裕は無かったわよ」

「そうですか、でしたらそれは仕方が無いですね。……しかし妙ですね、何でこんなに静かなんでしょうか?」

「えっ?」


 イレインが疑問を呈したのは、博物館の周囲や中の気配がかなり希薄な事である。

 リリヴィスの町を調べていた時も確かに人通りは少なかったが、だからと言ってここまで静まり返っているのは気持ちが悪い。

 これは絶対に何かがあると思いながらも、とにかく博物館を調べなければならないので、全員が武器を構えながら用心してその目的地の前へと辿り着いた。


「罠か?」

「その可能性は高いわね。何処で誰が襲って来るか分からないから慎重に行きましょ」

「そうですね。ねえイレインさん、その地下への道があるって言う場所まで案内をお願いしますわ」

「はい、勿論です」


 ティーナの一言で、イレインが先頭になって博物館の中を用心しながら進む一行。

 こう言った歴史ものの展示物に疎い一行には良く分からない様な、古代の石だの武器だの更にはモニュメントだの、ここに置かれている理由が分からない物まで多数存在しているのである意味で不気味な場所である。


「うう……何でこんなに気味が悪いんでしょう?」

「私もお主と同じだよ。恐らく……私達以外に人影が微塵も見えないのがその理由だろうな。気配が全然感じられないのが不気味さになっているんだろう」


 ティーナの一言にソランジュがそう返答したその時、出入り口の方でカチリと不思議な音がした。

 その音を、一行の最後尾を進んでいたドリスの耳がキャッチして振り返る。


「……ん?」

「どうしたの、ドリス?」

「いや、何か……後ろの方から物音がしたのよ。姉様には聞こえなかったの?」

「いいえ、全然……どんな物音でした?」

「カチッて何だかこう、鍵が閉まる様な音だったわ」

「えっ?」


 何でそんな音が聞こえるんだろう? と彼女の前に居るティーナがそう思った次の瞬間、五人の内の誰でも無い声が響いて来たのはその時だった。


「それはお前達をここに閉じ込める音だ」

「っ!?」

「な、何者だっ!?」


 突然聞こえて来た……声のトーンからすると恐らく男の声に、一行は武器を構えながら周囲を素早く見渡す。

 その瞬間、その戦闘態勢に入るのをまるで見計らっていたかの様に博物館の中からバラバラと武装した人間や獣人が姿を現わした。


「くっ、どうやら待ち伏せをされていたようね!!」

「ああ、その様だな。だがこの連中を全て相手にしていてもキリが無い。適当に相手をしながら地下への出入り口に向かうぞ。お主は再び道案内を頼む!!」

「わ、分かりました!」


 サイカがシャムシールを構えるその横で、ソランジュがイレインに対して素早く指示を出す。

 もしかしたらこの集団の中に今の声の主が居るのかも知れないが、そうだとしてもそうでは無かったとしても、自分達の敵であると言う事実は変わらない。

 それにあの聞こえて来た声の内容からすると、どうやら自分達はこの博物館の中に閉じ込められてしまったらしいので、どちらにせよ後戻りは出来ないらしい。

 そして、サイカはその声に引っ掛かるものを感じていた。


(あれ……? でも、確かさっきの声って私、何処かで聞いた事があった様な無かった様な……?)


 襲い掛かって来る牛獣人のバトルアックスを回避し、シャムシールで的確に斬り裂きながらそう考えるサイカ。

 もしかしたら自分の思い違いかも知れないが、その答えはこの博物館の中を進んで行けば分かるだろう。

 思い違いであれば存分にやれるし、そうでなかったとしたらその相手を確かめるまで力尽きる訳には行かない。

 その為にもサイカは先に進むべく、また自分に躍り掛かって来た敵を倒しながら他のメンバーとともに少しずつ先に進む。まさかこの後、地下であの人物に遭遇する等とは思わないままに……。

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