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480.大砲目指して

 時間は少しさかのぼり、マウデル騎士学院グループが人肉工場の調査を開始するべくその工場へと向かい始めたその頃。

 イレイン率いる残りの冒険者五人は、大砲が製造されていると言う場所へと急行する。


「なぁ、お主は大砲の場所に見当がついていたりするのか?」

「ええ。このリリヴィスの町には博物館があるんですよ。そこにやたら人の出入りが多い日があって、夜の内に博物館を徹底的に調べたんです。そうしたらそこに、地下への入り口になっている階段を見つけました」

「地下への入り口……ってまさか、そこから……?」

「ええ、見つけましたよ。全部で一か月位ここの調査に使いました所、人肉の材料を運んでいる馬車が来る日が週に二回ありました。そしてこの博物館に馬車が来る日も週に二回ありましたので、怪しいと思って調べたんです」

「そうしたら、そこの博物館に地下への入り口を見つけたって言う訳ね」


 サイカのセリフに、イレインは満足そうな表情で頷いて続ける。


「そうです。そしてその後に出会った、カシュラーゼ側から抜けたがっているって言う人の証言から、大砲がその博物館の地下を通って材料を運び入れて製造されているって言うのも突き止めました」

「なら、早くその地下に向かうべきだと思いますが」

「ええ、そうなんですけど……」

「けど?」


 ティーナの指摘に対して困った様な素振りを見せるイレインを見て、ドリスが先を促す様に問う。

 すると、イレインはとんでもない事を言い出した。


「けど、そこの地下に向かう道の先はまだ見ていないんです」

「えっ、と言う事はその大砲を造っているって場所の構造も分からないって話なの!?」

「そうなんです」

「おいおい……それはお主も道案内のしようが無いだろう。さっき博物館の事を徹底的に調べたって言っていたから、てっきり私達はお主がその地下に続く道の先まで調べたものかとばかり思っていたんだぞ?」


 ソランジュが呆れた顔をしながらイレインにそう言うと、イレインは頭の後ろをバリバリと左手で掻きながら弁解を始める。


「すみません……僕もその先まで調べてもっとしっかりとした情報を掴みたかったんですが、地下にはかなりの人の気配がありまして。それから獣の臭いもありましたから、人間も獣人も問わずに大砲を製造しているらしいですね」

「見つかる可能性を考えて、そこで引き返したって事?」

「はい。それにその逃げ出したがっているって人から、大砲に関してもう一つ気になる話を聞いたんです。何でも最近、その大砲を製造するに当たってちゃんとした指示を出せる人をカシュラーゼが派遣したらしくて、その人のおかげで製造のスピードが上がっているって話なんです」


 その抜けたがっている人物曰く、地下の大砲を製造するスピードが上がっているのはこの占拠したヴァーンイレスの軍備を整える為らしい。

 だが、実際にどんな人物がカシュラーゼから派遣されて来たのかまでは知らないので、ますますその地下の製造拠点に踏み込みづらくなってしまったらしい。


「仲間は? 貴方達の仲間はそこに踏み込んだりしなかったの?」

「はい。踏み込まなかった……と言うよりは踏み込めなかったと言う方が正しいですね。その博物館の事を調べていた時も、逃げ出そうと考えている人からこのリリヴィスの町で話を聞いた時も、僕を含めて全部で三人しか居なかったんですよ」

「三人? それは余りにも調査する人数として少な過ぎるのでは?」

「その人数がベストだと思ったからそうしたんですよ。僕達はこのリリヴィスの町にその馬車が休憩している隙を見計らって荷台に潜り込み、一緒に城門をくぐって中に入った部外者なんですから」


 つまり、カシュラーゼ側から見れば完全なる不審人物である。

 その不審人物のイレイン達がこのリリヴィスの町で調査活動をし、そしてバレない様にリリヴィスの町の外まで抜け出す為に再び馬車の荷台……帰りの馬車の荷台に潜り込んで町を抜け出した。

 調査に一か月と言う長い時間を掛けていたのも、その調査人数の少なさで調査に時間が掛かった事と、荷台に潜り込む為の帰りの馬車が来るまで待っていたからであった。


「僕達は部外者ですから、幾ら少人数で調査をしていると言っても余り深い場所まで踏み込んでしまうと、向こうに正体がバレる可能性があります。なのでまだ地下に踏み込むタイミングとは違うかなと思いまして」

「そ、そうか~?」

「そうですよ。それに、その抜けたがっている人からの話では大砲を造るメンバーが固定されているみたいなんです。カシュラーゼから派遣されて来たメンバーだけだって。だからその抜けたがっている人も中に入れて貰えなかったみたいで、その理由を聞くのが精一杯だったとかで」

「何で固定しているのかしら?」

「ええっと……ああ、そうそう。確か大砲に関しては製造に携わる作業員達が立ち代わり入れ替わりになって、作業のペースにバラつきが出ては困るからって話でした。それから傭兵連中を雇って下手に部外者にペラペラと大砲の事を喋られると、軍備上の機密が流出する事になってしまうのも懸念したそうです」

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