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475.一千体の注文

「あそこが人肉工場の屋敷。中に入って調べるのは良いけど、多分さっきのガードが沢山居るわね」

「そんなもん、とりあえず片っ端からぶっ潰して行きゃあ良いだけの事じゃねえか。あの黄色い液体は気持ちわりーけどよ」


 既に先ほど囲まれて戦った経験から、もう耐性はついたと豪語するサィード。

 しかし、アニータはそんなサィードに対して恐ろしい事を言い始めた。


「駄目よ、むやみに倒そうとしたら爆発しちゃうわよ」

「はい? 爆発ですか?」

「そうよ。下手したら貴方の身体だけじゃなくて、周りに居る貴方達とか……それから建物そのものも吹っ飛ぶ可能性があるのよ」


 余りにも突拍子も無い「爆発」と言うキーワードに、思わず敬語で反応してしまったサィード。

 その彼に構わず、何故むやみに倒そうとしたら爆発してしまうのかをアニータが説明しながら、どんどん人肉工場の屋敷に近付いて行く。


「さっき言ったでしょ、新しい兵器の開発が行なわれているって」

「あ、ああ……」

「それがあそこの屋敷を利用した工場の中でもついでにやっている。勿論、その兵器の開発も実験をしなければならないの。その実験って言うのは、廃棄品になっちゃった人の体内に魔晶石を埋め込んでテストするのね。その魔晶石はちょっとでも外部からの刺激を与えれば爆発する様になっているのよ」

「刺激って? 攻撃するの?」

「そう。例えば剣とかで斬り付けたり、私の持っている弓で矢を当てたり、魔術で攻撃するとかね」


 それを聞いていたレウスは怒りを通り越して呆れ顔になりながらも、他の攻撃方法についても質問してみる。


「反則だな、そんなの。もしその廃棄品って呼ばれている奴等が、間違って味方の廃棄品を攻撃すれば自爆してしまうじゃないかよ、それこそ言葉通りさ。……でも、パンチとかキックとかを当てた場合はどうなるんだ?」

「殴ったり蹴ったりするのは例外でちょっとなら良いんだけど……余り強くやり過ぎちゃうと爆発しちゃうわ」


 しかし、エルザからは別の疑問が湧き出て来る。


「な……何で貴様はそこまで分かるんだ? 余りにもその人型爆弾について詳し過ぎやしないか?」

「だって私、見ちゃったもの。その人型爆弾の耐性実験として、実際にストレス解消の為に人間や獣人に爆弾を殴らせてテストしたって資料も見せられた」

「見せられた?」

「そう。あそこは人肉工場だけど麻薬も作っているし、爆弾の製造もやっているし、それをソルイールの方に輸出する準備も整えている所よ。でもまだ実現には至っていないわ。輸送の時の衝撃に耐えられるかどうかチェックしたいらしいからね」

「……もう、人命が軽すぎて余り驚かなくなっている……と言うか、呆れてしまって言葉にならないな。それよりも貴様は今、確かソルイールって言ったが……まさかあの好戦的で粗暴な皇帝からの需要があるからか?」

「そう。製造過程で、既にソルイールの皇帝から連絡が入っていたみたい。何でも実験が成功したら、一千体の人型爆弾を注文するからってディルクって人から」

「そ、そんな物が一千体も注文されるって事は……」


 そう、実験に使われるだけに留まらず人型爆弾として一千人の命が奪われて、兵器としてソルイールに輸出される事になってしまう。

 それをソルイールの皇帝のバスティアンがどうするかは分からないが、良からぬ事に使うのは予想出来るのだ。


「それであの工場で、着々と製造されているってのか?」

「ええ。もう実験は成功しているからね。でもまだソルイールへの輸出分の製造は全て出来ていない。さっきも言ったけど、最近は人肉の需要が高まって来ていてそっち優先で製造しているから」

「良いのか悪いのか……いや、悪いだろうな。どっちにしても人命が軽視されているのは確かだから。だったらもうあの屋敷を爆破してしまった方が良いんじゃないのか?」

「うん、それは私も考えているわ。だけど製造がある程度進んだら、ソルイールの皇帝が直接取りに来るのは立場的に無理だから、誰か使者をよこすって言っていたけど……来る気配も無かったわ」


 ならば、その使者とやらが来る前にあの屋敷を丸ごと爆破してしまえば良いだろう。


「既に自我が無くなってしまって「廃棄品」としてさまようだけの存在になってしまった人々にはかわいそうだが、貴様の言う通り屋敷を爆破して製造工場を無くしてしまえばカシュラーゼにとっては大きな痛手になる筈だからな」

「そうね……心は痛むけど、これ以上次の犠牲者を出さない為にも爆破解体してしまった方が良いわね」

「ああ。俺のヴァーンイレスをめちゃくちゃにされっ放しで黙ってらんねーからなぁ!!」


 爆破解体で意見が纏まったマウデル騎士学院の一行だったが、その解体作業を邪魔する存在が既に屋敷の前に待ち構えていた。

 それを見たレウスが愛用の槍に手を掛けながら呟く。


「でも、まずはあいつ等を全部蹴散らさないと中に入れてくれそうに無いみたいだな」

「そうね」

「一つ聞くけど、あの人達はその人型爆弾の人達なのかしら?」

「いいえ……それは無いと思うわ。だって人型爆弾はこの屋敷の三階、人肉が二階、麻薬が一階で製造されているからね。でも、確かめるんだったらこうすれば良いのよ」


 そう言うとアニータはロングボウを構え、屋敷のガードをしている一体の廃棄品に向かって矢を放った。

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