表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

474/875

471.侵入方法(考案者:ガラハッド)

 レウスは自信あり気にその侵入方法を語り始める。


「って言っても、城壁を派手に破壊する様な真似はしないさ。それをやっちまうと中に居る連中に気付かれてしまうからな」

「確かにそうだが、城壁を壊すってなればそれなりに音が出るだろう。その点を貴様は考慮してものを言っているのか?」

「勿論さ。でもこれは元々俺が考えた方法じゃなくて、あのガラハッドのアイディアなんだよな」

「え?」


 ガラハッドと言えば、アークトゥルスだったレウスを殺した後に色々とクズな行為をしていた、エスヴァリーク帝国皇帝ジェラルドの先祖である。

 そのクズ行為の暴露がエレインによってされたのは記憶に新しいのだが、まさかその名前がここで出るなんて思ってもみなかったエルザを始め、他のメンバー達に対してレウスはそのガラハッドの考案した作戦を実際に説明しながら実行する事にした。

 まず、レウスは他のメンバー達を引き連れて城壁のすぐそばまで移動する。


「見張りはあそこに一人、それから向こうに一人……良し、この位置なら死角になって見えないだろう」

「本当にやれるのか?」

「確実に、とは言えないが出来る可能性は高い。まあ見ていろ」


 城壁にピッタリと張り付く形で、塔の上に居る見張りから殆んど見えない死角に潜みながら、レウスはほんの僅かな大きさのエネルギーボールを手の中に生み出す。

 その生み出したエネルギーボールを、拳二個分の大きさの距離から手首のスナップを利かせて城壁にぶつける。

 すると、そのエネルギーボールがぶつかった場所が大きく焼け始めた。


「ん……んんん?」

「おおっ、これは……」

「火に近ければ近い程その熱気が感じられるのと一緒で、エネルギーボールもぶつける距離が近ければ近い程その威力は大きくなる。遠い場所に投げればコントロールしても風に流されたりするし、魔力だって空中で分散して少しずつ威力が落ちるからな。だから当てるならそれこそ近い場所が良い。それにこの拳二つ分の距離なら、こうやって当てても音が響かないのも利点さ」


 ただし、余り時間を掛け過ぎたり連続で当て過ぎたりすると見張りの兵士が気が付いてしまうかも知れないので、ボソボソとメンバー達に聞こえるか聞こえないかの声のボリュームで話しながら、レウスは迅速に事を進める。

 エネルギーボールを円形状に当てて行き、城壁を焼いて穴を開ける。城壁と言うだけあって普通の家の壁に穴を開けるのとは訳が違うので、魔力を多めにして威力を強めたエネルギーボールを使うのだ。

 そうして、全部で五分も掛からない内に人が一人通れる程の穴が開いてしまったのである。


「やったじゃねえか、レウス」

「まあな。ガラハッドの場合は夜だったけど、あいつはもっと大きなエネルギーボールを使って敵にバレてまったから結局無駄に終わったんだが……あいつの考えもこうして役に立つ事があるんだなってつくづく思ったよ」

(何だか上から目線だなー、この人。そのガラハッドって言う人とは余り仲が良くなかったのかな?)


 サィードはイレインに、レウス達の事を自分の旅に付き合ってくれていた仲間として話していたので、レウスがガラハッドとどんな関係だったかまではイレインは知らない。

 レウスに対して心の中でそう疑問に思っているイレインを尻目に、思われているレウスは早速他のメンバーに先駆けて、自分が開けた城壁の穴からその城壁の内側へと侵入して行く。

 ドーム状に覆っているとレウスが分析した魔術防壁は、どうやら空からの襲撃に備えて城壁の上のみを覆っているらしく、横の守りは城壁だけだったのも幸いしていた。


「中の様子はどうなのかしら、レウス?」

「人の気配はしない。周りの様子を見る限り、ここはどうやら何処かの路地裏らしいから良い場所に繋がったみたいだな」

「そうなの? だったら私達も続いて良いかしら?」

「勿論だ。と言うかその為に俺はこの穴を開けたんだからな。さぁ、城壁の上に居る見張りの兵士に見つからない内にさっさと全員来るんだ!」


 許可を求めるアレットを始めとして、残りのメンバーも次々に城壁の穴を通ってリリヴィスの町の内部へと侵入に成功する。

 しかしここから先の行動に関しては、レウスも地理が分からない以上は迂闊に動けないのである。


「さて、ここから先はどうするんだ?」

「勿論その大砲の在り処を調べるんです。大砲があればそれを止めて、これ以上カシュラーゼの好きにさせない様にしなければなりません」

「それは分かっているんだが……あいにく俺はリリヴィスの町に来た事が無いんだ。イレイン達はこの町の地理について知っているんだろう? だったらその地理を思い出して、俺達に何をすれば良いのか教えてくれ」


 レウスにそう頼まれ、イレインはこの九人のメンバーを今度は二つのグループに分ける事にした。


「それでは大砲を調べに行くグループと、ここの人肉工場を調べるグループの二つに分けましょう。人肉工場の方にはレウスさん、サィード王子、アレットさん、エルザさんのマウデル騎士学院の四人組でお願いします。残りの僕を含む五人は大砲を調べに向かいましょう」

「分かった。それじゃあ早速向かおう」


 イレイデンの時と同じくまたグループを分ける事になったこの一行だが、このリリヴィスの町で新たな出会いと発見をする事になろうとは、イレイン以外の八人は知る由も無かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お気に召しましたら、ブックマークや評価等をぜひよろしくお願い致します。
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ