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469.リリヴィスの町の異変

 それが事実だとしたら、自分の両親もこの人肉の一連事件に関わっている事になると考えるレウスだが、すぐにその考えを打ち消した。


「いや……ちょっと待て。それだったら俺の両親も関わっているかと思ったけど違うな。少なくとも今の話の流れからすると、リーフォセリアには人肉は輸入されていないって事になるよな?」

「そうなりますね。その様なデータはありませんでしたから、リーフォセリアに関しては大丈夫かと思いますよ」

「そうか、それだったら俺が働いていた飲食店で人肉を提供していたって話は無かったって事になるかな……」


 もし、自分が人肉を知らず知らずの内に提供する側になっていたとしたらショックで立ち直れないレベルの事実であるのは間違い無いが、それは無いらしいと考えてレウスは胸を撫で下ろす。

 そんな彼とイレインに向かって、横からエルザが声を掛けて来た。


「なぁ、それはそうとしてあのリリヴィスの町とやらに乗り込む手筈は整っているのか?」

「いいや……それがさっぱりだ。だからここはサィードとイレインに色々考えて貰うしか無いだろうよ」

「そうだよ。だから俺とイレインが一緒にここまで来たんだからよぉ」


 そう言いながら、サィードはリリヴィスの町の方に目を向けて怪しいポイントを口に出す。


「今は見ての通り朝なのに、城門が閉まりっ放しってのがおかしいんだよ。しかもこの町には北の森をテリトリーとする魔物の類があるせいで、他の魔物も迂闊に近づかない……いや、近付けない筈だから人の往来は普段から結構ある筈なんだが、恐ろしい程に人気が無い。これは何かあるとしか思えねえんだよな」

「お主の言っている事は分からんでも無いが、十年も経っていれば色々変わってしまうんじゃないのか?」


 しかし、ソランジュの指摘に対してサィードは首を横に振った。


「確かにそれはある。だが、これも俺じゃなくてイレインが調べた事なんだよ。イレインはこの国全域を仲間達と調べていた。当然、このリリヴィスの町だってそうさ。そしてこのリリヴィスの町の城門が、必要な時以外には開かない事に気が付いたんだ」

「必要な時?」

「ええ。リリヴィスの町は何かを隠している。だから僕達がそれを調べる為に何とか入れないかと考えていると、イレイデンからの馬車がやって来ました。するとその時にようやく馬車を入れる為に城門が開いたんです。その馬車を追い掛けてあの町の中に入り、そして色々調べてみた結果……あそこの町にも人肉工場がある事が分かったんです」


 そのイレインの調査結果を聞いていたアレットから、一つの疑問が沸き上がる。


「でもちょっと待って。このヴァーンイレス王国ってもう元々の国民は虐げられている様な感じで、実質連合軍によって支配されちゃっているんでしょ? だったら別にあそこの門を閉じておく必要なんて無いんじゃないかしら?」

「ええ、それは僕も思いました。馬車が来る時だけ門を開けて、そして通したらすぐ閉めてしまうのはどうしてだろうって。ですがその理由も調べて行く内にちゃんと見つかったんですよ」

「え、そうなの?」

「はい。それはそれぞれの町や村を支配している国によって違う事が分かったんです」

「国によって……って事は、それって例えばあの町はあの国が支配していてみたいな、国によって支配する場所が決められているって話?」

「そうですね。だからあそこは閉まりっ放しなんですよ。自分達のやっている事を悟られない為にね」


 イレインの調べた所によれば、カシュラーゼに最も近い町と言うだけあってあのリリヴィスの町を支配しているのもカシュラーゼ軍らしい。

 前に話の中に出て来たイクバルトの町は、アイクアル王国との国境に近いのでアイクアル王国が支配している事もあって、門は夜の魔物が多くなる時間帯以外は常時開放されっ放しなのだとか。


「他にも東にある町や村の大半は、商工の拠点として使うべくイーディクト帝国が支配していますし、鉱山に近い町は武器や防具が必要になりがちなソルイール帝国が支配していたりと、目的やその場所で支配する地域を決めたらしいんです。でも、この中で門が閉まりっ放しなのはあのリリヴィスの町だけなんですよ」

「他にカシュラーゼが支配している町は同じ様になっていないのか?」

「ええ。イレイデンをカシュラーゼが筆頭に押さえ込んでいるのと、ベリザッコ城もカシュラーゼが抑え込んでいるので、その他の町や村に関しては譲ったらしいんですよ。ただ、カシュラーゼの国境に近いあのリリヴィスの町だけは譲れないってカシュラーゼが主張したらしくて、イレイデン以外ではあの町だけがカシュラーゼの支配下に置かれているらしいんです」

「そうなるとますます怪しい気がするわね」

「確かに。カシュラーゼが筆頭になって自分の領土にしたんだって事を主張して、もっと多くの町や村を抑えていてもおかしくないと思うのですが……謎ですわ」


 ドリスの呟きにティーナも頷く。

 そのヒルトン姉妹を見て、イレインがとんでもない調査結果を報告した。


「その怪しさの正体なんですが、どうやらカシュラーゼは密かにリリヴィスの町で何かを作り出し、一緒にこのヴァーンイレスを占領している同盟国にも攻め入るらしいのです……」

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