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468.工場の役割分担

 どうやら完全に誤解されてしまったらしく、ティーナとドリスを除く他のメンバーから冷ややかな目で見られるレウスは話題を変えるべく、リリヴィスの町の方に目を向ける。


「と言うか、今の俺達が考えなければならないのはあそこのリリヴィスの町の話だろう。確かサィード……言っていたよな? あそこのリリヴィスの町にも人肉加工工場があるって話をさ」

「ああ。と言ってもその情報を仕入れたのは俺じゃなくて、このイレインなんだけどな」


 そう言いながら自分の隣に立っているイレインを指で差すサィードを見て、イレインが頷いた。


「はい。僕とその仲間が仕入れた情報によりますと、人肉工場は全部で三つ。その内の一つがイレイデンにあったメインの工場で、残りの二つはこのリリヴィスの町に一つと、西の方にあるイクバルトの町に一つです」

「そうなのか。と言う事は、この町にある人肉工場でも人間や獣人が解体されているって事だよな? それを踏まえて考えてみると、この町でも失踪事件が起こっているって話になるよな」


 しかし、レウスのその予想に対してイレインは首を横に振った。


「いえ、それがどうやらこのリリヴィスの町とイクバルトの町では事情が少し違うらしいのです」

「えっ、そうなのか?」

「はい。三つの工場ではきちんと役割が分担されているらしくて、まずメインとなっているイレイデンの工場では材料になる人間や獣人の解体と加工を一手に担っているらしいのです。それに対して、こちらのリリヴィスの工場とイクバルトの町にある工場では国外への輸出業務をメインに作業を行なっている様ですね」

「って事は……国外にも需要があるから、国境に近い場所に工場を造ったって事になるのかな?」

「その可能性はかなり高いでしょうね」


 その後も、イレインから人肉加工工場に関しての調査結果が淡々と報告されて行く。

 まず、メインとなっているイレイデンの工場では主に国内に流通する人肉の調達から加工を引き受けており、その流通ルートを調べてみても確かに国内に流れていた形跡が山程出て来たらしい。

 それからそのイレイデンの工場からこのリリヴィスの町の工場と、イクバルトの町の工場に流されて来た肉は主に燻製や瓶詰めにして国外へと輸出される手筈を取らされていたのだとの証拠も挙がっている。


「押収した証拠となる数々の書類からは、肉は瓶詰めにしたりして加工してしまえば牛肉や豚肉、鶏肉等の他の肉に混ぜてしまっても分からないし、流して売ってしまえば後は証拠も残らないとの記載もありました」

「それって計画的犯行じゃないのよ!」

「そうだな、サイカの言う通りこれはかなり悪質……いや、まともな奴のやる事じゃない。だから今更外道な発言が出て来ても驚かないのが怖いよな」


 レウスの冷静な発言に、他のメンバーも頷きながらそれを実感する。

 人肉を加工する工場があると言う事実が恐ろしいインパクトであった為か、その人肉を国外に流している等と言われても「そうだろうな」とか「それもやっているだろうな」と落ち着いて受け止められる心境の変化が怖いのだ。

 その実感するメンバーに対し、イレインが報告を続ける。


「そうですね。それでこちらのリリヴィスの工場では主に北の方に向けた輸出作業をやっているらしいですね。カシュラーゼを始めとして、イーディクトやソルイール等が主な取り引き先らしいです」

「カシュラーゼが裏でこの工場の作業を指示していたとしたら、確かにそうなるだろうな。で、もう一つのイクバルトの町にある工場は西の方にあるから、まさかアイクアルとかに流していたと言うのか?」

「おっしゃる通りです、レウスさん。アイクアル王国もそうですし、その先にあるエレデラム公国や、その先にあるルリスウェン公国にも流されていたらしいです。ただ……」

「ただ?」


 そこで言葉に詰まったイレインに対して、聞き返す事で続きを促すレウス。

 そんなレウスに対してイレインが続きを話し始めたのだが、それはレウスがどうリアクションをして良いのか困る報告だった。


「ただ……リーフォセリア王国には人肉は輸出されていなかった様ですね」

「え? そりゃまた何で?」

「ええと、僕達が手に入れた証拠によりますと、どうやらレウスさんとアレットさん、エルザさん、そしてサィード王子がいらっしゃったマウデル騎士学院の学院長が、人肉が嫌いだからって言う理由で輸入されていなかったらしいです」

「エドガー学院長が?」

「ええっ、叔父さんが!?」


 イレインの報告に驚きを隠せない、マウデル騎士学院の関係者達。

 しかも驚きを隠せない報告がまだ続いていた。


「そうですね。エルザさんは確かそのエドガー学院長の親戚だとサィード王子からお聞きしています。ですがその関係者で……レウスさんのご両親である、ゴーシュさんとファラリアさんのお二人も人肉の輸入に関係しているらしいですね」

「と、父さんと母さんも!?」

「はい。そこまで運ぶには船でも陸でも時間が掛かり過ぎますし、瓶詰めにしてもその保存期間に限度があって、腐って売り物にならないから輸入しないでくれと言う連絡を受けていた証拠の書類もありました」

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