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466.姉妹の添い寝

「……え?」

『だからそのリリヴィスの町にも……それからイクバルトの町って西の方にある町にも工場があるんだよ。人肉工場が。で、リリヴィスの町に居るんだったらイレイデンからかなり時間が掛かるから、その人肉工場の前に繋がれていたワイバーンを使ってそっちに向かうんで、それで明日はよろしくな』

「ああ……そう、分かったわ」


 そこで通話は終了し、明日の朝に改めてサィード達と合流する事に決めたレウス達。

 それまではこのリリヴィスの町の手前で野宿を決行しなければならないらしいのだが、レウスは現代のヴァーンイレス王国の地理を把握する為に、サィードから以前聞かされていた大まかな町の位置の話を思い出していた。


『なぁサィード、イクバルトの町って何処だ?』

『イクバルトだったら、このイレイデンからずーっと北西に向かった場所がそうだ。五百年以上前からずーっとある町だけど、お前は生まれ変わる前に行った事は無かったのか?』

『俺は無い。五百年前の行軍の時も立ち寄ったりしなかったし、そもそも存在すら知らなかった。今の時代に生まれ変わってからはリーフォセリアから出た事無かったんで、やっぱり来た事が無い』

『そうか……じゃあそのイクバルトの町の話だけど、このヴァーンイレスと西の隣国のアイクアルとの国境に一番近い町だ。二番目に西から出るのに近いのは南の方にある別の町なんだけど、そこからアイクアルに入るには砂漠を通らなきゃならねえんだよ。だからアイクアルに向かう予定だったらイクバルトの町を拠点に動いた方が良さそうだぜ』


 その思い出した内容をレウスがヒルトン姉妹に伝えると、ドリスもティーナも首を縦に振った。


「そうですわ。イクバルトの町って言えば確かに国境に近い町ですけど……サィードさんがおっしゃっていたこのリリヴィスの町は北の方にある、カシュラーゼとの国境に近い町なんです」

「つまり、地図上で見てもかなり北の方にあるって事か?」

「そうよ。南の方にあるイレイデンからは凄く離れているから、確かにワイバーンじゃないと時間が掛かるわね。大きな湖も越えなければならないし、国境近くには森があるからそこが魔物の生息地になっているし。でも、その森があるからこそ魔物達はそこをテリトリーにしてなかなかそこから出て来ないから、かえってこの町の周辺が安全だったりするのよ」

「だからサィードの奴、城門を開けっ放しにしているって言っていたのか」


 しかし、それについては姉妹と認識が違ったらしい。


「私がサィードのそのセリフを聞いた時、昼間は開けっ放しにしていて夜は閉めているものだと思っていたわ」

「私もドリスと同じです。でもそのサィードさんの言い分ですと、どうやら夜も開けっ放しにしているらしいですね」

「それはほら……防犯意識が高くなったんじゃないのか? 大体、サィードの奴がこの国出て行ったのはもう十年も前になるんだろ? だったらその十年の間にここの町の連中が防犯意識を変えて、城門を夜の間に閉める様になったって言えばつじつまが合うからな」

「それは確かにそうね」


 イレイデンを取り戻せた事によって、十年も離れていた事を忘れてしまっているのではないか?

 それにこの北の町がカシュラーゼとの国境に近いと言う面から、イレインのリサーチもなかなかできなかったとなれば納得が行く。

 とにもかくにも今日はこの町の手前で野宿と言う事になったので、町の中に居る連中に存在を悟られない様に少し離れた場所でキャンプを張る三人。


「ねえレウス、レウスの前世の時もこんな感じで旅をしていたの?」

「まあな。世界各地の色々な場所を回って、エヴィル・ワンの配下と戦ったよ。パーティーの奴等とは時に反目したりしながらも、こうやって旅をして親睦を深めて行ったんだ」

「そしてあの伝説のドラゴンを倒し、現代に転生した……色々と突っ込み所はありますけど、掛け替えの無い経験でもありますわね」


 そんな話をしながらようやく、この戦いに次ぐ戦いが繰り広げられた一日が終わろうとしていた。

 イレイデンを取り戻した一行だったが、結局あの茶髪の女であるメイベルには逃げられてしまった不満が残るし、この先で何時またあのディルクの弟子だと言う男に出会うか分からない不安も付き纏う。

 それでも、今は身体をしっかり休めようと決意してレウスは三人で横並びの状態になり眠る事にした。

 しかし……。


「ん~」

(……ん!?)


 三人の真ん中に寝ていたレウスに対し、ドリスがいきなり寝ながら覆い被さって来たのだ。


「な……なな、ちょっ!?」

「うーん、そこはツボが違いますわよぉ~」

(お……おいおいティーナまでっ……何してんだよ!?)


 一体どんな夢を見ているんだ? と内心で呆れるよりも、この二人の若い女がほぼ同時に自分の身体に覆い被さって抱き着いて来た事によって、レウスはこの上無いを苦しさ覚えながら複雑な気持ちになっていた。

 女に抱き着かれた経験は前世の時から数えてもかなり少ない上に、無下に追い払う事も出来ない。

 更にティーナの胸やらドリスの唇やらが手に当たったり頬に当たったりしているので、レウスはなかなか眠れないままその日の夜は更けて行った。

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