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465.怪しい状態

「レウスーっ!!」

「レウスさーん!!」

「あ、あの二人……無事だったのか」


 バサバサと翼をはためかせてやって来たのは、ティーナとドリスのヒルトン姉妹だった。

 何て運の悪いタイミングで来るんだろうとがっくりするレウスは、未だに咳き込み続けていた。どうやらあのラスラットが投げた煙幕攻撃用の魔晶石は、かなり強力な物だったらしい。


「お、お前等……一体どうしたんだ?」

「どうしたんだって言うのは無いでしょ。あの獣人達なら私も姉様もちゃんと倒して来たわよ」

「そうですわ。それであの茶髪の女リーダーはどうしたんです?」

「いや、あの……それがだな……」


 言い出し難い雰囲気だが、言わなければ話は進まない。

 意を決してレウスがここに降り立った所から、ラスラットに逃げ去られてしまうまでの今までの経緯を話すと、ヒルトン姉妹の表情にあからさまな落胆の色が浮かんだ。


「ええっ、逃がしちゃったのぉ!?」

「それは……困りましたわね。どちらに逃げたのかって言うのは分かりますか?」

「いいや、俺が咳き込んでいる間にあの男は逃げてしまったから分からないんだ。さっき探査魔術で周囲を探ってみたけどそれらしき気配はヒットしなかったし、どうやらこっちの魔術の効果をブロックしているか既に遠くへ逃げてしまったかの二つだろうな」


 ようやく咳も収まったので冷静にそう分析するレウスだが、ヒルトン姉妹はそれとは別の事を考えていた。


「それだったら居場所を掴むのは無理そうですわね。でも、私達はこれから先どうしますの?」

「そうよ。こんなに遠くまで来ちゃったんだし、この町に今日は泊まるしか無いんじゃないかしら?」


 彼女達はこれから先の話を考えていた。

 今の話はまた後で考えなければならないとして、確かに今夜はここに泊まるしか無いのかも知れない。


「そうするしか無いかな……一応ほら、この状況だと夜も深くなって来そうだし、これから先でワイバーンを飛ばすのは気が進まないし……残りのメンバーに通話用の魔晶石で連絡入れておいてくれ」

「ああ、そうした方が良いわね」


 ここまであの茶髪の女を追い掛けるのに夢中になっていたレウスと、彼女の部下である獣人達をそれぞれ相手にしていたヒルトン姉妹は、すっかりその他のメンバーへの連絡を忘れてしまっていたのである。

 なのでそのメンバーに連絡したのだが、向こうからは気になる発言が出て来たのだ。


『で、お前等は何処に居るんだよ?』

「今? 今はええっと……何処だ?」

「ああ、ここはリリヴィスの町ね。リリヴィスの町の前まで来たんだけど、ここの町って城門がこの時間は開いていないのよね」

『はっ? 開いてねえのか?』


 それはおかしいだろと魔晶石の向こうでサィードが言うのを聞き、通話を担当していたドリスが首を傾げる。


「え、どう言う事?」

『えっ、だってそのリリヴィスの町だろ? そこら辺って魔物が全然居ないから防犯なんてあって無い様なものでさ、城門は開けっ放しにしてある筈なんだよ』

「そうなの?」

『そうだよ。だから城門が閉まっているって言うのはかなり違和感があるんだけどよぉ、そこって何かあったりするか?』

「何かって?」

『例えばほら、今のイレイデンみたいに旗が立っていたりとかしねえか? ヴァーンイレス以外の国旗とかよぉ』


 そう言われてヒルトン姉妹とレウスがリリヴィスの町を見上げてみるものの、特に旗が立っていたり等と言う様子は見当たらない。


「ううーん、そんな旗とかは立っていないわねえ。気になる所と言えば、城門が固く閉ざされている事かしら?」

『それだけか……そうだとしたら、そのリリヴィスの町に入るのは止めておいた方が良い。俺達が明日の朝にそっちに向かうから、今日はその辺りで野宿をしろ。絶対に何かあるとしか思えないからな』


 確かにサィードの言う通り、自分達がこうして目の前に立っている町が普段と違う状況になっているのであれば、警戒心を最大まで高めて中に入るのを止めるのは当然だろう。

 ただでさえこのヴァーンイレス王国は他国の連合軍に占領されてしまっている上に、あの盗賊団のリーダーであるメイベルやディルクの弟子を逃がしてしまった以上、これから向こうから反撃される可能性はかなり高いだろう。

 それを考えると、ますます野宿で今日は過ごして明日このリリヴィスの町を詳しく調べてみる方が良いだろうとの結論に達した。


「分かったわ。じゃあ明日にはこの町に来られるかしら?」

『そうだな。なるべく早い内に行く様にするぜ。イレインの仲間達もようやく合流して、イレイデンを取り戻す為の手筈は整っているからこっちは任しておけ』


 これでようやくイレイデンも解放出来たと言う事になりそうなのだが、そのサィードから気になる話が出て来たのはその後だった。


『たださぁ、俺……人肉工場の話を聞いちまったんだよ』

「え? ああ、それなら私や姉様もレウスと一緒に知ったわよ」

『いや、そうじゃねえ。それはイレイデンにある人肉工場の話だろ? そのリリヴィスの町ともう一つの町にも、まだ人肉工場があるって話を聞いたんだ……』

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