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464.まるで別人

「そのままの意味だよ。俺達にとってこの女が捕まったり殺されちまうのは都合が悪いって事さ。ここで大人しくこの女を見逃すって言うんであれば、俺は何もしねえが……まだやりあおうって言うんならそれなりの覚悟はして貰うぜ?」


 かなりの大口を叩くラスラットだが、レウスは最初にこの男と出会った時の弱さを覚えていたので退くつもりは全く無い。


「大した自信だな。ベリザッコ城でサィードにあれだけやられたのに、まだ懲りていないのか?」

「ふんっ、あの時は油断しちまったんだよ。今回はもう油断なんかしねえぜ。……おい、あんたはさっさと逃げろ」

「え、良いの?」

「良いも何も、俺はディルク師匠からあそこの監視を頼まれている上に、こうやってあんた達のサポートをしろって言われてるんだよ。俺がこうやってこの国を占拠している以上、まだベリザッコ城の地下の謎も解けていないんだからさ。だからその手伝いもして貰わなきゃなんねえんだし、こいつは俺に任せてイレイデンに戻れ」

「……分かったわ、ありがとう」

「おい、待てっ!」


 ラスラットがメイベルを逃がそうとしているのを見て、レウスはエネルギーボールを生み出して投げ付ける。

 だが、それはラスラットが生み出した魔術防壁によっていとも簡単に阻まれてしまった。


「くっ!」

「だから言っただろ、メイベルにこれ以上手は出させねえってな。お前の相手はこの俺だよ」

(この展開……前にもこんな事があったな)


 唐突にレウスの脳裏にフラッシュバックする記憶。

 それは紛れも無く、マウデル騎士学院でレウスが最初にあの赤毛の二人に出会った時のものであった。

 あの時も今と同じく、レウスはヨハンナを逃すまいと追いかけようとしたが、彼女の師匠であるヴェラルがその前に立ち塞がって行かせてくれなかった。

 そしてその光景がフラッシュバックして反応が遅れてしまったレウスに対し、ロングソードを振り被ったラスラットが先制攻撃で仕掛ける。

 どうやら魔術で対抗しようとしてもブロックされてしまう様なので、ここはサィードがやった時と同じ様に武器で対抗するしか無さそうだ。


「ふらあああっ!!」

「くっ!」


 ガキン、ガキンと金属同士が激しくぶつかり合い、火花が飛び散る。

 レウスが鋭い突きを繰り出せば、ラスラットは身体を捻って回避しながら回転斬りに繋げる。

 向かって来るロングソードの刃をレウスは男の手を蹴って止めて、お返しとばかりに地面を蹴って空中から槍を突き下ろす。

 しかし、男は素早く地面を転がって回避に成功。一進一退の攻防が続けられる中で、レウスはラスラットの実力に驚いていた。


(こいつ、サィードから聞いていた実力とはまるで別人かと思う位に強いぞ!?)


 ベリザッコ城の玉座の間でやり合ったサィードが言うには、そこそこ手ごわかったらしいものの、最終的には何とか打ち勝ったらしい。

 だが今こうして自分が対峙しているラスラットは、明らかにサィードから聞いていた実力よりも上であると実感するレウス。

 あの時は実力を隠していた? それとも自分がこの男の動きについて行けていない?

 何故ここまで苦戦するのだろうかと打ち合いながら首を捻るレウスのその考えが、一瞬の隙を生んでしまった事でラスラットにチャンスが訪れる。


「はっ!!」

「うっ!?」


 ロングソードが突き込まれ、正確に手元を狙われたレウスのその手から槍が弾き飛ばされてしまった。

 ガッと鈍い音がしてクルクルと飛んで行った槍が、自分の手の届かない場所に突き刺さったのを見てレウスはそちらを一瞥する。

 完全に油断した。いや、もしかしたらこれは自分が弱くなったのか?

 丸腰の状態になったレウスにも容赦しないラスラットは、一気に勝負を決めるとばかりにロングソードを振るってレウスを追い詰め始めるが、レウスも自分の身体に身体能力向上の魔術を掛ける。

 そうして一時的に周りに見える景色のスピードを遅くして、ラスラットのロングソードを掻い潜って低い位置から拳を天に向かって突き上げ、彼の顎を打ち抜いた。


「ぐほっ!?」

「うらっ!!」


 人体の急所の一つである顎をアッパーで射抜かれたラスラットは、脳天に衝撃を受けたのと同じくふら付いてたたらを踏む。

 そこに追撃で繰り出されたレウスの鋭いキックが、ラスラットの胃袋を目掛けて繰り出されターゲットを確実に捉える。

 レウスの履いているロングブーツのつま先がめり込んで、後ろに転がったラスラットは激しく咳き込んだ。


「がは、ごほっ……ぐはっ!!」

「はぁ、はぁ……まったく、てこずらせてくれたがこれでようやくあの女と一緒にお前を捕まえられるぞ。さぁ立て、来るんだよ!!」


 しかしその時、バサバサと翼がはためく音が空から聞こえて来たのでレウスの意識はそちらに向かってしまう。

 そのチャンスを見逃さなかったラスラットは、残る力を振り絞ってレウスに対して煙幕攻撃用の魔晶石を投げ付けた。


「うわっぷ!?」

「くっ……この勝負預けるぜ。何時かまた近い内に戦う事になるかも知れねえからな。あばよっ!!」

「ま、待て……!!」


 不意を突かれた煙幕攻撃に咳き込むレウスを尻目に、ロングソードを鞘に納めたラスラットは素早く闇の中へと姿を消した。

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