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463.追い詰めた先に待っていたもの

 そのまま二人で同時に着陸した地点で、レウスがメイベルを逃がすまいと先にワイバーンから飛び降りて彼女に向かってエネルギーボールを投げ付ける。

 しかし、メイベルも素早くワイバーンの背中から飛び降りてエネルギーボールを回避してからロングバトルアックスを取り出し、レウスに立ち向かう。


「しつっこいのよ、貴方はっ!!」

「だったら逃げなければ良いだけだろうが!!」

「あの状況じゃ逃げるにきまってるじゃないのよっ!!」


 レウスに対して怒鳴りながらロングバトルアックスを振り回すものの、レウスもそう簡単にやられはしない。

 リーチで言えば互角のこの二つの武器であるが、戦い方はまるで違う。

 レウスの使っている槍は突き刺すのがメインで、横に薙ぎ払って斬り裂いたりは余りしない。対するロングバトルアックスは叩き付けて一刀両断するというパワーにものを言わせる武器なので、槍使いのレウスは突き攻撃主体、ロングバトルアックスのメイベルは振り下ろし攻撃がメインだ。

 なので、メイベルの振り下ろしを横にかわしてから槍を突き出すレウスに対して、突き出されたその槍の先端を身体を捻ってよけるメイベル、と言う展開である。

 だが、そんな長い得物を使っている二人は取り回し辛さを感じさせないハイスピードな動きのバトルを展開する。

 当然、レウスは隙を見てエネルギーボールを打ち込んでメイベルに隙を作らせたいが、メイベルもメイベルでレウスにそのチャンスを与えない様に攻撃を繰り出す。


(くそっ、エネルギーボールを作り出す事が出来れば俺にチャンスが回って来ると思うんだが……この状況ではそうもいかないか!!)


 だったら別の攻撃手段を考えるまでである。

 レウスはそれだけの事を考えながらもメイベルと渡り合える余裕があるので、口を動かしながら戦い続ける。

 と言ってもメイベルとお喋りするのではなく、彼女の隙を生み出す為に自分が使える最大級の魔術を繰り出す目的があるからだ。

 その為に一旦バックステップで大きく距離を取り、槍を構え直して再び立ち向かう姿勢を見せるレウス。

 しかし、その彼はハァハァと荒い息を吐いている。しかも汗までかいている上に足が小刻みに震えているのを見たメイベルが口元に笑みを浮かべる。


「あらあら、もう疲れちゃったの?」

「な……何を……まだまだあ!」

「口ではそう言っていても、身体は正直みたいよ? だったらまだ動ける内に葬ってあげるわっ!!」


 槍をだらりと下げた状態のレウスに対して、メイベルは完全に油断してしまっていた。

 ロングバトルアックスを構えてレウスに対して一気に肉迫する彼女に対し、レウスはかなり疲れた様子からいきなり真顔に戻りつつ叫んだ。


「食らえ、デスブレイク!!」

「へっ!?」


 今までのやり取りと打ち合いの中で秘かに闇の魔術「デスブレイク」を詠唱し終わったレウスは、一直線に自分に向かって来るメイベル目掛けて思いっ切り右腕を振り被る。

 そして上半身を前に向かって突き出すと同時に、振り被った右腕をメイベル目掛けて突き出すと、手の平からどす黒い一本の光線が撃ち出された。

 レウスと同じく今までの逃走劇、それからイレイデンの人肉工場でのヒルトン姉妹とのバトル、そしてここに来ての打ち合いでスタミナが低下していたメイベルは俊敏な動きが出来ず、まともにその光線を受けてしまった。


「きゃ、きゃあああああああああっ!!」

「ふっ……」


 前回はマウデル騎士学院で、エルザとともにあの最初のドラゴンを相手にした時のとどめとして繰り出したこの最大級の魔術。その時と同じく自分に向かって来る敵に対してこの魔術を繰り出し、同じ様にヒットさせる事に成功した。

 なのでこれで、このメイベルとやらとも決着がついたと思っていたレウスだった……が。


「全く……世話の焼ける人だな」

「あああ……あ?」

「なっ!?」


 自分のものでも無い、かと言ってメイベルのものでも無い第三者の声が聞こえて来たのと同時に、彼女に向かって放たれたデスブレイクの黒い光線が音を立てて飛散してしまった。

 一体何が起こったのか理解が追い付かないレウスは、飛散した光線の中から自分に向かって左手の手のひらを向けている一人の男の姿を視界に捉えた。

 その男に、レウスは見覚えがあったのだ。


「……お前は!!」

「俺はこの人の部下から連絡を貰ったんだよ。そして運良くこの人がここに来てくれたって訳さ。偶然って本当に恐ろしいと思うんだよな。まさかこんな形でお前と再会するなんてね。……色々とやってくれたみたいだけど、もうこれ以上好き勝手させる訳にはいかねえんだよ!!」

「た、確かお前はディルクの弟子で……名前は……」

「ラスラットだよ。そんな事はどうでも良い。俺が居る以上、もうこのメイベルに手は出させやしねえ。まだこのメイベルにはやって貰いたい事があるんだからな」

「何だと?」


 黒い髪の毛、濃い紫と薄い紫を基調にした上下の服装、黒いロングブーツ、手のひらが黒で手の甲が白の変わった手袋をはめているその男……ラスラットは、レウスに対して勝ち誇った様にそう言ったのであった。

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