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448.トラップ解除

 その決意を示した三人の元に、一斉に魔術研究所を守っていた敵達が攻撃を仕掛けて来た。

 しかし三人は無駄に全員を相手にするのではなく、自分達が必要とするカードを持っている相手を狙って反撃に出る。

 これだけの大人数を相手に真っ向勝負、しかも今までここの研究所まで走って来た上に敵を退けながら来てしまったので、スタミナの面で考えて不安が残るからだ。

 それに、この三人はこれだけの大人数を相手にしても素早く敵の戦力を少なくする事が出来る策があった。それはエルザの提案から全てが始まったのだ。


「ほあっ!!」

「うごっ……ぐあああああっ!?」


 エルザのキックによって吹っ飛ばされた敵の一人が、他の敵を薙ぎ倒して緑色のラインの上に着地する。

 するとその瞬間、事前にイレインから教えて貰っていた通りそのラインの上に着地した事で、その敵の身体が電撃のトラップによって痺れ出したのである。


(今だ!!)


 仲間が痺れているのを見て、唖然として動きが止まった敵達の一人に向かい、エルザは右の拳で思いっ切りその顔面を殴り付けた。


「ぐほっ!?」

(ここか!?)


 パンチによる衝撃で吹っ飛んで地面に背中から叩き付けられた敵の懐を探ってみると、お目当ての黄色いカードを見つけた。それを素早く自分の左手に握り、右手にはバトルアックスを握ったまま、緑のラインを超えた先に向かってカードをかざしながら進んで行く。

 するとその瞬間、カードから青白い光が飛び出して球体となって宙に向かって浮遊し、パシューンと何かが弾ける音が辺りに響き渡った。

 近くでイレインとエルザを援護しながらその音を聞いたアレットが、あっと声を上げてエルザとイレインに向かって叫ぶ。


「モヤが消えたわ!!」

「何っ!? それじゃあ……」

「侵入防止用のモヤが消えたって事ですよ!! さぁ、早く中へ行きましょう!」


 イレインの先導で、再び向かって来る敵を退けながらいよいよ研究所の中へと入り込む三人。

 彼曰く、この研究所の中はヴァーンイレス王国騎士団員だった時に何回か来た事があるらしく、内部構造はそれなりに把握しているらしい。


「ですが、カシュラーゼの連中の手によって内部が造り替えられている可能性もあります。ここは慎重に素早く行きましょう」

「難しいな、それ。とにかくこの研究所を全て制圧してしまえば、カシュラーゼの連中に痛手を負わせる事が出来るんだろう?」

「そうですね。とりあえずあの出入り口のドアの中に入ってしまえば再びモヤが掛かりますから、あそこに入って外部からの侵入を遮断しましょう!」


 アレットは攻撃魔術で敵を自分達に近付けない様にし、イレインとエルザは研究所の中から出て来る敵を倒しつつ進む。

 玄関ロビーへと飛び込んでしまえばそれで相手の戦力が少しは削れる筈だと思っていたのだが、援護をしていたアレットがふと空を見上げて気が付いた。


(あら、何かしらあのワイバーン……?)


 三階建ての研究所の屋上に、一匹のワイバーンが着陸している。

 こんな場所まで飛んで来たのだろうか? と思いつつも玄関ロビーへの出入り口が開いたのでその中に飛び込み、素早くドアを閉めて鍵を掛けた。

 更にイレインがドアの横にある赤いボタンを押し、二重ロックを掛けて研究所の中からでなければこのドアが開かない様にするのと同時に、敵が持っているカードを無効にするのも忘れない。

 このシステムは研究所の中を敵に狙われそうになった場合の緊急ロック装置だ、とイレインはリーフォセリアの二人に説明する。


「はぁ、はぁ、はぁ……何とか第一関門はクリアね!」

「ええ。ですがまだ油断は禁物ですよ」

「分かっている。と言うか、貴様が言っていた仲間達って言うのは何処からやって来るんだ? 一向に姿が見えないんだが?」


 ここに来る前、自分の仲間がバックアップしてくれるから心配無いと話していたイレインの言葉を信じていたのに、その仲間達が援護に来る気配がまるで無い事にエルザは苛立っていた。

 しかし、それはどうやらイレインも同じらしい。


「そうですね……変だな、きちんと連絡は入れたんですけど……」

「ねえ、もしかしたら日が沈んで真夜中になったら襲撃するって言っちゃったままなんじゃないかしら?」

「あっ……」


 そう、あのテレパシーの事があってから連絡はそれっきりだったのである。

 つまりイレインの仲間達はイレイデンの何処かで、出撃の時を今か今かと待っている状況なのだ。


「う、嘘だろう!? それって私達だけで戦わなければならないって事か!?」

「そう……なりますね」

「えええええええ!? と、とにかくそれだったら早く仲間達に、予定変更になっちゃったって連絡して!!」

「は、はい!」


 あたふたしながら通話用の魔晶石を取り出すイレインを見て、がっくりと肩を落とすアレットとエルザ。

 しかし、そんな二人の耳にバタバタと激しく走り回る足音が聞こえて来た。


「うっ……」

「この中に居る連中はまだまだ沢山らしいな。とにかく倒しながらそれぞれのフロアを制圧して行くぞ!」


 イレインが連絡をする横で、アレットとエルザが研究所の中からやって来た増援を相手にする。この研究所の中で、何かが見つかれば良いと心の中で願いながら。

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