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42.偶然?

 それに対して疑問を投げ掛けたのはアレットだった。


「でもちょっと待って下さい。そうなると例えば都市や村を行き来する商隊のキャラバンとか、定期的に運行している乗り合い馬車とかも行き来が制限されるって事になりますか?」

「ああ。ドラゴンに襲われやすい開けたルートとか、ドラゴンを含めた魔物達の活動が活発化する夕方から明け方に掛けては移動を制限させて貰う。どうしてもその時間帯に移動しなきゃならなかったり、荷物が多くて広いルートを通らなきゃならねえ時は騎士団員や腕の立つ傭兵を同行させる事を義務付けさせなきゃな。事前に国に申請を出して、許可が下りたのだけを運行を認める様にさせよう」


 ギルベルトがそこまで言うと、今度はエルザがホッと息を吐いた。


「それにしても、言葉は悪いが今回は運が良かったと思う」

「え?」

「今日が学院の休日だったから不幸中の幸いだったって意味だ。だってアレット達は寮の中に居たんだろう? そしてそこに今回のドラゴン襲撃。これがもし授業がある日だったら、例えば訓練場で授業を受けている騎士見習い達が沢山居たから沢山被害が出ただろう。それに、今回襲撃して来たあのドラゴンが墜落した中庭だって、普段は休む場所として騎士見習い達が沢山居る場所だ」

「まあ、それは確かにそうなるわね」

「それに、ドラゴンが体当たりした学院の建物だって今日は授業が休みだったから、中に居るのは警備の兵士と事務仕事をしていた職員数名位だったし。それと私とか学院長とかな。後は休日だってのに学院内をウロウロしていたこの男とか、食堂を営業していた数名の人間や獣人だけだ」


 もし普段の騎士見習い達が沢山居る学院にドラゴンが突っ込んで来たら、今日とは比べ物にならない程の甚大な被害が出ていたに違いないだろう。

 その事をエルザは言っているのだが、黙ってその話を聞いていたレウスに一つの疑問が浮かぶ。


「でも気になるんだけど、何で学院が休日のこの日にピンポイントでドラゴンがやって来たんだ?」

「単なる偶然でしょ? そもそも魔物なんてどうやって行動するのか分からない部分だって多いし、まして今回のってカシュラーゼが開発したって噂の生物兵器が世界中に解き放たれた……ってその内の一匹らしいしね」


 確かにアレットの言う通り、単なる偶然なのかも知れない。

 しかし、レウスには何だか今回の出来事が偶然では無い様な気がしていた。

 その様子を黙って見ていたギルベルトが、今後の対策方針をレウス達に向かって聞き取り始める。


「それが偶然かそうでないかなんて今はまだどうでも良いだろう。今はとにかく、学院に突っ込んで来たって言うドラゴン型生物兵器の更なる解析を進めなきゃな。で、まだ断片的にしか話を聞けてねーんだけどよぉ、マウデル騎士学院の方は今回の件でどれ位の被害が出たんだ?」

「はっ、今回の件でこちらでは学院の建物が損壊しております。授業に支障は無いと思われますが、最悪の場合は崩落や倒壊の可能性もあります」

「なーる程なぁ。じゃあ具体的に対策は考えてんのか?」

「はい。授業の教室を一時的に別の場所にして、これから人足達に連絡を取って今回崩壊した部分の修理をしつつ、一週間様子を見ながら徐々に元の状態に戻して行ける様にする予定です」

「分かった。あのドラゴンの解析が進み次第、俺達も随時お前等に情報を提供しよう。突然の事で気持ちの整理が落ち着かない部分もあると思うが、とにかく今は早急に元通りの生活が送れる様に事を進めてくれ」

「はっ。それでは私達はこれで失礼致します」

「ああ。気をつけて帰れよ」


 ギルベルトとエドガーのやりとりが終わり、ぞろぞろと揃ってギルベルトの執務室を出て行こうとする一行。

 しかし、エドガーやアレットやエルザが退出する中でギルベルトが一行の背中に、思い出したかの様な顔で声を掛けた。


「そうだ、レウスだけちょっと残ってくれねえか?」

「え。俺ですか?」

「ああ。駄目か?」

「いや、俺は構わないですけど……エドガーさん、ちょっと騎士団長が俺に用があるらしいので」

「分かった。だったら俺等は下で待ってるから」


 先にエドガー達を退室させ、部屋に残らせたレウスに手招きして自分の近くに呼び寄せるギルベルト。


「……何だよ? 俺に何かあんのか?」

「外に声が漏れるとまずいからもっと近くに寄ってくれ」

「ん……この距離なら良いか?」

「ああ。で……だ。俺さっき、ああくそって言いながら拳を机に叩き付けたろ? あの時俺、危うくアークトゥルスって言っちまいそうになったんだよ。それで誤魔化した」

「は? それだけ?」


 随分下らない理由で呼び止められたもんだ、とレウス……いや、アークトゥルスは馬鹿馬鹿しいとばかりにさっさと出て行こうとした。

 しかし、そんな彼の肩をギルベルトの大きな手が掴んで止める。


「何だよ、うるさいな! そんな下らない事を聞かせる為に俺は残されたのか?」

「そうじゃねえよ。お前だけ残したのはお前の意見を聞かせて欲しかったからだよ」

「意見?」

「ああ。……今回の件、単なる偶然だと思うか? アークトゥルスからしてみてよぉ?」

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