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41.ドラゴンの正体

 エドガーに導かれるまま、既に夕暮れから夜になろうとしている時間帯に学院を出発した一行は、ギルベルトが待っている王国騎士団の本部までやって来た。

 またアンリに案内された先の騎士団長執務室で、屈強な体格の虎が一行を待っていた。


「来たか。お前達はこの頃、何だか色々なトラブルに巻き込まれているな?」

「そうですね。仰る通りだと思います。……それで、ドラゴンの正体が分かったって言うのは本当ですか?」


 半信半疑の表情でレウスが尋ねれば、ギルベルトは虎の頭を大きく縦に振った。


「ああ。俺も最初は自分の目を疑ったもんだが……こりゃーどうやらただ事じゃなくなっているんだよ。アーク……あーくそっ!!」

「ど、どうしたどうした?」


 いきなり叫んで拳を机に叩き付けたギルベルトを見て、レウスが戸惑いの声を上げる。


「いや、あー……ちょっと今回の件が悔しくなっちまっただけだ。それよりも続けよう。今回、お前達が滞在しているマウデル騎士学院に侵入して来たのは、ドラゴンでは無いんだ」

「それはエドガー叔父さ……学院長から聞きました。理解が出来ないのですが、ドラゴン以外の生物だったという事ですか?」


 エルザの質問に、ギルベルトは首をまた縦に振った。


「そうだ。一言で言えば、あれはドラゴンの身体を利用した生物兵器だ」

「生物兵器!?」

「ああ。ドラゴンよりも厄介なものがついにこの王国にも入って来たってこった」

「え? それじゃあ他の国でももう見かけられているって事ですか?」

「そうだよ。街中にドラゴンが現れたってだけでも大騒ぎだってーのによぉ、まさか生物兵器となってこの国に入って来るなんて……」


 ギルベルトが腕を組んで椅子に深くもたれ掛かれば、彼の体重で椅子がギシリと軋んだ。

 一方のレウス達一行は生物兵器云々と言うのが気になるので、エドガーが続きを促す。


「騎士団長、その生物兵器とやらは魔術師達が解明したのですか?」

「ああ。死んじまったドラゴンの身体を利用して、その中に別のドラゴンの魂を入れたんだ」

「へ? 魂を……入れる?」


 まだ魔術師の卵であるアレットには、まるで理解が追い付かない難解な話になって来た。

 それはギルベルトも分かっている様で、机の引き出しから紙と羽根ペンを取り出してイラストを交えながら説明する。


「じゃあ絵で説明するからこの机の周りに来てくれ。……ええと、死んじまったドラゴンの身体がこうやってあるよな? それは自然に朽ち果てるか、人間や俺達獣人が持ち帰って食用に解体されるか位しか使い道が無かった。もしくは他の魔物の餌になったりとかな。だが、ここ三か月ばかりドラゴンの姿を全くと言って良い程に見掛けなくなった地域があったんだ」

「地域? 我がマウデル騎士学院がある、この国の何処かの地域でですか?」


 エドガーの質問にギルベルトは首を横に振る。


「違う。ドラゴンが見掛けられなくなっちまったのは、ここから海を渡って西側に行った場所にあるカシュラーゼだよ」

「カシュラーゼ!?」

「カシュラーゼってあの……何だか色々やばい実験を行なっているって言う魔術王国ですか?」

「そこだよ、そこ。一説によればそこでドラゴンの魂と肉体を組み合わせるって物騒な実験をしていたらしいけど、そのドラゴンが十匹程逃げ出しちまったらしいって連絡があったんだよ。だけどそんな生物兵器がこの世界中に解き放たれたって知ったら世界中がパニックになっちまう。だから国民にはずっと秘密にされていたんだ」

「おいおい、それって隠蔽じゃないか……」


 ギルベルトからの衝撃の告白に、エルザもエドガーもそしてレウスも唖然とした表情になる。

 そしてレウスの心の中には、またドラゴンか……とうんざりした感情が渦巻き始めていた。

 五百年前にドラゴンを討伐した自分が、五百年を経た今になってまたドラゴンと関わる事になるなんて……と。


「それで……そのカシュラーゼに抗議はしたのですか?」

「抗議ってか、逃げ出した十匹のドラゴンの行方を早急に突き止める様にって国王陛下を始め、その他の国々が要請を出してある。だが、逃げ出しちまったのが翼を持つドラゴンだし、その肉体の中に入っている魂からしてみりゃ二度目のドラゴンとしての生を授かった様なもんだから、自由奔放に世界各国に散らばって……そしてその内の一匹が、マウデル騎士学院に侵入して来た奴らしいんだ」

「物凄い大事じゃないですか、それ」

「だからだよ。だからしばらくは、お前達も学院から各地に遠征して行なう実地訓練は禁止させて貰うぞ。俺の権限でな。こうしてドラゴンが国内に……それもマウデル騎士学院を襲撃したってなっちゃー、これから何時また学院が襲撃されるか分かんねえ。それにまだ九匹のドラゴンが世界中の何処かに居るんだ。もし遠征訓練でお前達を始めとする騎士学院の奴等が巻き込まれるなんてこたあ、あっちゃならねえ事だからよ」


 こんな緊急事態だからこそ、早急に残りの九匹のドラゴンの行方を掴む為に行動しなければならない。

 そして国民を守るのは、王国を守る王国騎士団の役目であると騎士団長ギルベルトが熱く語った。

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