表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

437/875

434.やっぱりここも?

『私はそれを風の噂で聞きながら、このままではヴァーンイレスまでやって来たのにいずれ巻き添えを食らってしまう。そう考えました。そこでもっと遠くへ逃げる事にしたのです。でも、このヴァーンイレス王国から黙って出て行くのも悪い気がしますので、私はこうして置き手紙を残して行く事にしました』

「んん? それにしちゃあこの紙ってかなり新しくないか?」


 レウスが手紙を見て呟けば、サィードが横から手を伸ばして手紙を取って呟く。


「そういや妙だな。エレインのメモって確かお前の墓の中にもあったけど、あっちはボロボロの古文書みたいだったからな」

「みたい、じゃなくて事実古文書なんだよ。でもそれを考えると五百年も前の書き置きがこんなに綺麗に残っている訳も無いよな?」

「そうよねえ。考えられるとしたら、原版はかなり傷んでいたから読めなくなる前に別の紙に書き写したとか?」


 そのアレットの言葉に、あっとサィードが声を上げる。


「そうだ、思い出した! 確か俺にちょくちょくヴァーンイレスの情報の連絡をくれていた奴から、面白い情報が書かれたメモが見つかったって言われてた!」

「じゃあ、それがもしかしたらこれって事?」

「その可能性は高いぜ。で、それを読みやすい様にそいつが書き直したんなら辻褄が合うぞ!」


 しかし、それに対して別の視点から疑問を抱いたのがティーナだった。


「それは分かるとしても、ではどうしてそのメモがここにあるんでしょう?」

「え……ええと、それは……」

「誰かがこの場所を見つけて、既にここに侵入していた……って事になるよな?」


 エルザの言葉に一同が凍り付いた。

 そう、そうなのだ。あのディルクの主導でヴァーンイレスが制圧されてしまったのだから、それこそしらみつぶしに探さない訳が無い。

 つまりこの隠し部屋が見つかっていても不自然では無いし、そもそも十年間ずっと見つかっていないのに埃がたまっていないとか、未だにシステムがきちんと作動しているのも不自然である。


「じゃあその知り合いは、誰経由でメモが見つかったって話になったの? そもそも何処からこのメモは見つかったの? それがここにあるって事は、カシュラーゼの連中と内通しているって可能性もあるんじゃないの?」

「だーっ、いっぺんに質問されても分かんねえよ!! 少なくともその知り合いに聞いてみなきゃ分からねえな。……考えてみりゃあ俺が自分でさっき言っていた通り、ここの城の中の通信システムとか、それから防御の為の吊り橋とか外壁の魔術プロテクトとか、全て敵の支配下に置かれているってのはここもそうだったって事だよな……」


 いずれにしても、そのサィードの知り合いを探して色々事情を聴くべく連絡を取らなければならないだろうが、それよりも前にやるべき事はこのメモを最後まで読む事だった。


『彼が暴君として暴れ始めたと聞いた時、私の事を捜し始めたとも聞きました。ですからいずれここに来る事を考えると身分を隠していても油断は出来ません。ですから私はここに留まり続ける訳には行きません。私が働いているイクバルトの町の西から、そのままアイクアル王国に向かう事にしました。あっちには確か、ライオネルが居た筈ですから……』


 そこでメモは終わっていた。

 だが、最後に出て来た名前に心当たりのある一行はその正体について考える。


「ねえちょっと、ライオネルってまさか……」

「ああ、最後の……俺がエヴィル・ワンを討伐した最後の仲間だ。トリストラムはイーディクトの建国をした人間だし、ガラハッドはメモで読んでいた通りこんなクズだったけど、エスヴァリークを建国した皇帝だし、エレインはそいつから逃げてライオネルの元に向かったんだろうな」

「ライオネルってどんな人だったの?」

「あいつは……冷静な弓使いの奴だったよ。パーティーの中でも一歩引いた位置から常に俺達の関係を見ていた。歴史書の中ではエレインがエヴィル・ワン討伐パーティーのサブリーダーって事になってるけど、本当にサブリーダーになって欲しかったのはあいつだった」


 遠い目をして語り出すレウス……いや、アークトゥルスに対し、話を振ったドリスを始めとする一行は何も言えずに続きを待つ。


「あいつは俺達の仲裁役だったよ。パーティーの中で揉め事が起こったら、何時もあいつが止めていた。それから強引なガラハッドとは対立していたな。って言っても、ガラハッドが一方的に難癖付けて絡んで行ってそれをライオネルが無視していたから面白くなかったんだろう。そいつはアイクアル王国に残ったって事なのか……」

「残った?」

「ああ。前に世界地図を何処かで見せて貰った時に思い出した。俺は……いや、俺達はエヴィル・ワンをアイクアル王国で討伐したんだ。後でまた地図を見せてくれたらその時に説明する。で……アイクアル王国でライオネルはエレインと一緒になったのかな?」


 そうだとしたら、今までの事を踏まえて男女の関係になっても全然不思議では無い。

 そう考えるアークトゥルスだったが、それに対して待ったを掛けたのはヒルトン姉妹だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お気に召しましたら、ブックマークや評価等をぜひよろしくお願い致します。
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ