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433.エレインのメモ

 とは言っても、サィードもここに入るのは今回で二度目らしい。

 戦争が始まって自分が国外に逃れていたのにこの事を覚えていたのは、王族しか知らない場所だと言う事で誰にも言わない様にと周囲の臣下達から口を酸っぱくして言われていたからだ、と述べた。

 それにまだ、その頃の彼はこうしたセキュリティシステムには余り興味が無かったので、場所だけが頭に入っていて中の事は余り覚えていないのだとも語った。


「その頃の俺は王になる為に、帝王学だ何だって勉強したりとか武芸の腕を磨いたりしてたもんだから、こうしたセキュリティ関係の事は全て親父とかに任せてた訳でよ。だけど、そんな時にあいつがこの国を攻め落としにやって来たんだ」

「ディルクだな?」

「ああ。そいつはセキュリティシステムなんか関係無しに、自分の繰り出す魔術でこのベリザッコ城をイレイデンごと叩き潰しに来たんだよ。表向きにはカシュラーゼを筆頭としてアイクアル、イーディクト、ソルイールの四か国の連合軍がこの国を制圧しに来たってなってっけど、イレイデンに関してはあいつが殆んど一人でやっちまった……って、生き残った奴が後から教えてくれた」


 でも、流石のディルクもこの隠し部屋のセキュリティシステムには気付かなかったみたいで、サィード曰く逃げ出した当時と何も変わっていないのだと言う。


「俺の親父は国王の立場だから、騎士団長とかと国防に関しても色々と話し込んでいてな。それでこうやってここに隠し部屋を作ってセキュリティシステムを入れたんだ」

「でも、こうやって作ったセキュリティシステムはそう言う非常事態に使えなければ意味無いんじゃないのか?」


 エルザが即座に突っ込みを入れるものの、サィードは「しょうがねえだろ」と返答して続ける。


「あのディルクって奴の攻勢にとても耐えきれなくてよ。戦争が起こったのは十年前で……セバクターから前に聞いた限りだとあいつは今二十四歳だから、たった十四歳で一国を滅ぼせるだけの実力があったって事なんだろ」

「じゅ、じゅうよん……それってまさか、レウスと同じく何百年も前から転生したとかってそんな人間だったりしないわよね?」

「いいや、俺はそんな事は聞いてねえな。だからこそ、そんなガキにこの国を滅ぼされたってのが余計にムカつくんだよ!!」


 サイカのセリフに対して、悔しさからダンッと壁に右の拳を打ち付けるサィードの目の前には、セキュリティシステムを起動させる為のスイッチが並んだテーブルがある。

 だが、その衝撃でテーブルの上に置いてあった一枚のメモがハラリと床に落ちた。


「あら、何かしらこれ?」


 それを拾い上げたドリスが目を通してみると、そこには驚愕の内容が記されていたのだ。


「え……ええ……ちょっと何よこれっ?」

「何だ?」

「ほらほらこれ、読んでみてよ!」

「……これ、エレインの……!?」


 興奮気味に口を開くドリスからメモを手渡されたレウスは、青白いランプが輝いている室内でその内容に目を通し始めてみる。

 すると、前にエスヴァリークの自分の墓の中で見つけたあのメモに続くエレインの書き残したメモだと言うのが分かった。


『何とかエスヴァリークから逃げ出した私でしたが、行く当ても無いままにとにかく西へと向かいました。そこで身分を隠しながら働いている内に、その生活が楽しくなって来た私はこのヴァーンイレスで一生を終えるのも悪くないと思い始めました』

「エレインの奴、このヴァーンイレスに来てたのか?」

「どうもそうらしいな。だけど俺は親父や専属の教師からこのヴァーンイレスの歴史を教えて貰った時、エレインがここに来ていたって話は聞いた事は無かったぜ?」

「いや、そりゃそうだろう。このメモによれば身分を隠していたんだろうから」


 先程のエルザに続いて突っ込みを入れるソランジュだが、だったら何故このメモがここにあるのかが分からない。

 その理由はメモの続きに書いてあるだろうと再び読み進めて行くと、エスヴァリークから逃げ出したエレインの生活が浮かび上がって来た。


『その後、名前と姿を変えて生活していた私の元に、ガラハッドが王妃の殺害容疑で糾弾され始めたと言う話が入って来ました。あの逃げ出した時の状況証拠から、私がガラハッドに殺されかけたのだと確信したエスヴァリークの人々は、ガラハッドを追放しようとしたのでした』

「あー、ガラハッドもとうとう追及され始めたのね」

「そうだな。アレットの言う通り、あいつは徹底的に追及されて追放されるべき人間だろう」

『ですが、ガラハッドはそれに反発して片っ端から追放の声を上げる民衆を殺害しに掛かりました。皇帝の俺が自分の妻を殺す訳が無いだろうって言いながら。まさに独裁政治そのものでした。暴君でした。実際に殺そうとしたのは事実なのに、それを認めないなんて本当に器の小さい男です』

「このメモを書かれた方……ガラハッド様を凄く馬鹿にしてません?」

「そうだな……」


 ティーナの疑問にソランジュを始めとする他のメンバーが頷く。

 やっぱり、このエレインも何処か捻くれている女だなーと思いながらレウスが続きを読み進めて行くと、更に驚愕の事実が記載されていた。

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