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431.驚愕の事実

 そのサィードのセリフに、レウスを含めた他のパーティーメンバーまでもが言葉を失う。

 彼の言葉が全て本当だとすれば、本来はこの国の国王だと言う事になる。


「いや、あの……えーっと……何を言っているんだ?」

「何をって……だから、俺がこのヴァーンイレス王国の次期王位継承者だったってのを今こうやって証明したじゃねえか」

「そう言われてもすぐには信用出来ませんわ!!」


 戸惑うエルザに対して自らの証明を口に出すサィードだが、全く信じられないとティーナが大声を上げる。

 現にこうやって今サィードが玉座に座っていても、王の貫録をあまり感じられないのは気のせいでは無いのかも知れない。

 しかし、そう言われてもサィードも本当の事を言っているのだからと困った表情になる。


「じゃあどうすりゃ良いんだよ。ってか、さっきは俺の事を何でこんなにスイスイ回れるんだとか疑っていたくせに、こうやって自分の身分を明かしたら信用出来ないって自分の考えが変わり過ぎなんじゃねえのか?」

「話が飛躍し過ぎなんですよ。騎士団員の関係者であったとしても、ある程度の地位が無ければこのお城の国王様の執務室の場所を知っていたりはしないと思います。例えば騎士団長の関係者とかね」


 でも……とティーナは戸惑いを隠せない声で続ける。


「でもこうやって、いきなりこのヴァーンイレスの国王だって言われても私達は信じられないですわ。この国が滅んで、それで国外脱出したって言うのは分かりますが……それはこの国で生まれ育った方であれば当たり前の事だと思いますもの」

「おいちょっと待て、ティーナ」

「え?」


 そう言う彼女に対して声を掛けたのは、サィードでは無くて彼女の右斜め後ろに立っているソランジュだった。

 いきなり予想もしていなかった方から声を掛けられて、ティーナはサィードの時よりも更に戸惑った表情を見せる。

 そんな彼女に対して、ソランジュは彼女の顔をまっすぐに見つめながらこう切り出した。


「お主の発言を、勝手に私達全員の意見として言われては困る」

「何故です?」

「それは、私がサィードを信じているからだ」

「この方の国王だと言う発言を、貴女は信じるとおっしゃるのですか?」

「そうだ。確かに今は自分でこうやって国王だって言っているだけで、証拠も何も無い。だがそれは私やお主を含めた全員がここに来て間も無いからだ。それにサィードは自分でさっき言っていただろう。ここから自分が居なくなった時から、何がどれ位無くなったのかを調べるって。それでサィードがこの城の中を色々と知っていたら、それが国王の証だろう」

「……分かりましたわ」


 渋々と言った感じではあるものの、ティーナはソランジュのセリフに納得した様子を見せてそれ以上は何も言わない事にした。

 だが、今度はソランジュの発言に対してアレットから突っ込みが入る。


「でもちょっと待ってよソランジュ。俺がこの国を治めなきゃならねえ存在だって言われてた……ってサィードの発言からすると、まだサィードが国王になっていない内にこの国から脱出したって事にならないかしら?」

「それもそうだな」

「だから立場的には国王じゃなくて、この国の王子様って事になるわよね?」


 自分の方に顔を向けながらアレットにそう問われて、サィードは深く頷いた。


「ああ、その通りだぜ。俺がこの国を出た時にはまだ国王じゃなくて第一王子だった。そもそも第一王子って言っても、国王の子供は俺一人だったから俺しか王位継承者が居なかったから、自動的に俺が次の国王になる予定だったんだよ」

「だけど、それをカシュラーゼに攻め込まれて貴様は国を出なければいけなくなったって事だな?」

「そうだ。俺は戦争で……あいつ等のせいで全てを失ったんだ。カシュラーゼの連中のせいでよ! そしてこうやって玉座を取り戻す事が出来たんだが、まだあいつ等は諦めちゃいねえだろうよ」


 戦争が起こったのは十年前。その時まだ十六歳だったサィードは王位を継ぐには早いとされている年齢だったので、第一王子として帝王学や武術等を学んで自分が国王になる時の為に備えていた。

 しかし、それもこれも全てはあの魔術師ディルクの主導の下で攻め込んで来た連合軍に滅ぼされてしまい、先程ドラゴンに追い掛け回されていた地下通路の中にある隠し通路を通って命からがら国外へと脱出したまでは良かったが、その後に知らされたのは残酷な現実だった。


「前にも話したと思うが、その戦争で俺は家族も友達も知り合いも全てを失っちまった。今では少数の抵抗勢力がこのカシュラーゼの中に残っているだけで、この城もイレイデンも制圧されっ放しだぜ……」

「そんな弱気でどうするのよ! 貴方らしくないわよサィード!!」

「っ!?」


 サイカの大声が玉座の間に響き渡る。

 彼女はサィードが何時に無く弱気な表情になっている事に苛立ちを感じたのだ。


「貴方はお調子者でちゃらんぽらんで、女風呂を覗く様な変態だけど……それでもポジティブにここまで来たんでしょ! だったら今こそそのポジティブさを発揮する時でしょ!」

「ああ、そうだな。でも何だか嬉しくねえな、それ……」

「それはそうとして、この城にイレイデンの連中が攻め込んで来るのも時間の問題だからさっさと城の中を探しましょうよ。そして同時に守りを固めましょ!」


 ドリスのその一言もあり、一行はさっそく城の中を各自で捜索する事にした。

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