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424.ベリザッコ城の中も……

 やっとの事でベリザッコ城の中庭に出た一行は、最後尾のレウスがドアを閉めた事でようやく危機を脱したらしいと分かった。


「はーっ……やっと何とかあの異質なドラゴンから逃げ切れたらしいな……」

「そうだな、あのドラゴンもようやく諦めたらしいしこれで一段落って事か」


 ソランジュとエルザがドアの向こうの気配を探り、さっきのドラゴンの声と足音が遠ざかって行くのを確認して一息つくレウス達。

 そして改めて、自分達が今こうして出て来た場所をグルリと見渡す。

 リーフォセリアのインハルト城や、エスヴァリークのフィランダー城と同じ様にかなりの広さがあるものの、何だか得体の知れない雰囲気の暗さが気持ち悪さを感じさせる。

 良く良く見てみれば花壇の花もロクに手入れがされていなくて枯れてしまっているし、自分達が踏みしめている芝生も荒れているので見栄えは悪いとレウスは顔をしかめる。


「やけに荒れているけど……ここがベリザッコ城の中庭なのか?」

「ああ。この地下通路は遺跡が発掘されたその上にベリザッコ城を立てて、永久保存の遺跡として残しておこうって話になった時に造られた通路でよ。元々地下の遺跡がこうやってあったからこそ成し遂げられた事でもあるんだがな」

「それはそうとして、何でこんなに荒れているんだ?」

「そこは良く分からないが、ここはほら、占領されている場所だからそいつ等が手入れしてねえだけなんじゃねえのか?」

「成る程な。でも、それはまだ良いとして城から続く地下の通路にあんな化け物が住み着いているなんて危険過ぎやしないか?」


 だが、エルザから問われたあのドラゴンの存在についてはサィードは知らないのだと言う。


「いや、俺はあんな生き物は知らねえよ?」

「ええっ? あんなのが地下で大騒ぎしていたらそれこそ国中の話題になっていてもおかしくないか?」

「だからこのヴァーンイレスは占拠されちまったんだって。俺は人伝いにその事を聞いて、こうやって戻って来たばっかだから本当に何も知らねえんだよ。知ってるっていやあ、それこそ大きな薬の問題が発生しているって事かなー」

「薬の問題?」


 それは一体何の話だろうかと首を傾げるサイカに対し、サィードが神妙な顔つきになりながら説明を始める。


「それがさー、今こうやってヴァーンイレスって言う国そのものが何か国もの連合軍に占拠されている状態だろ? おかげで国の中の治安が地域ごとにバラバラになっているらしくて、治安が良い所と悪い所の差が激しいんだ。で、それに付け込んだ連中が麻薬を売りさばいているらしいんだ」

「ま、麻薬?」

「そうそう。この国の中に居る知り合いが言ってたんだよ。で、麻薬を運んで荒稼ぎしている奴とか麻薬の密売をしてもっと荒稼ぎしている奴とかが居るらしくて、そいつ等をぶっ潰さないと幾ら尽力しても治安が元に戻らねえらしいんだ」

「麻薬……ねえ……」


 唐突な話だが、今はそれよりもこれからどうするのかを考えなければならない。

 それをサィードに聞いてみると、とりあえず自分の知っている場所へと案内するからと言い始めた。


「まずこの城の中から片付けよう」

「片付ける?」

「ああ。だってこの中は今の状況を考えると占拠されている可能性が高いからな。現にほら、もう向こうから俺達の存在に気が付いた奴等がやって来ているみたいだぜ?」

「はい?」


 サィードが指を差す方向を他のメンバーが一斉に見てみると、バタバタと慌ただしい足音が複数聞こえて来ていた。

 それを見てサイカが舌打ちをする。


「来たわよ、タチ悪そうなのが!!」

「あいつ等は何なんだ!?」

「何なんだも何も敵に決まっていますわ。恐らくこのベリザッコ城を占拠している連合軍のメンバーでしょう。とにかく敵として認定されたのは間違い無いですから、やるしかありませんわ!」

「くそっ……」


 せっかく地下で恐ろしい敵から逃げ切れたと思ったら、今度は地上で面倒臭い敵と戦う破目になるなんて。

 何時になったら休息の時は訪れるのだろうとうんざりしながらも、一行はそれぞれ再び武器を構えて向かって来る敵に立ち向かって行った。

 しかし、先程このベリザッコ城の下にある地下通路で出会った魔物達と比べれば雑魚みたいな敵ばかりだったので、特に苦戦はしなかった。


「もうこれでおしまいなのかしら?」

「とりあえずはそうらしいが、占拠されているってなるとまだまだこのベリザッコ城の中に敵が居るのは予想出来るだろう」


 アレットの疑問に、エルザが城を見上げながらそう呟く。

 まずやるべき事はこのベリザッコ城を占拠している大元の存在を倒して取り戻し、そこから元々ヴァーンイレス王国の領土だった場所を少しずつ取り戻して行くしか無いだろう。

 そう考えていたパーティーメンバー達にサィードが声を掛けて、先へ進むのを促す。


「とりあえず城の中に進もう。ここで何時までも話していても話が進まねえからな」

「そうだな」


 こうしてベリザッコ城の中へと進む展開になった一行だが、この後サィードの不可解な言動に他のメンバーが気が付くのにそう時間は掛からなかった。

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