表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

42/875

39.デスブレイク

 この時点で、あの厄介そうなドラゴンを一撃で仕留められる魔術の詠唱を考えるレウス。

 それは「デスブレイク」。

 ナイト・プロヴィデンスと同じく闇属性に属する魔術だが、今回のデスブレイクは防御魔術では無く攻撃魔術。

 それもかなりピンポイントで発動しなければならないので、感覚的には森のヌシとしてレウスと戦ったギローヴァスに繰り出した、あの必殺技の一つ……ハイパーエクスプロージョンと同じである。


「エルザ、魔術はどれ位使えるんだ!?」

「ど、どれ位って!?」

「例えば俺の使っていた範囲攻撃魔術が出来るとか、防御魔術の上級のものが出来るかとかだよ!!」

「わ、私は……」

「くっ、危ない!!」


 自分達に向かってドラゴンが再び突っ込んで来たのを見て、レウスは咄嗟にエルザに飛び付き、彼女もろとも地面に倒れ込む。

 そのすぐ頭上をドラゴンの鋭い足の爪が掠めて行く……。


「いってえ!」

「はっ?」

「くそ、避け切れなかった……あいつの爪が少し俺の背中に当たったんだ!」


 エルザから素早く離れ、レウスは自分の背中を狙って回復魔術をかける。


「大丈夫なのか!?」

「ああ、魔術で回復したから問題無い。それよりもあいつを迎え撃つ為の魔術はどれ位使えるんだ!?」

「わ、私は上級の攻撃魔術と防御魔術、それに補助魔術をそれぞれ数個ずつだ!」

「分かった。ならあいつを少し引き付けておいてくれ!」

「えっ、貴様はどうするんだ……くっ!?」


 再び突っ込んで来たドラゴンを回避し、エルザに囮になって欲しいレウスの考えが告げられる。


「俺はあいつを仕留める為の魔術を詠唱する。だがあんな大きいのを一撃で仕留めるだけの魔力を込めるには時間が掛かる上に、空を飛ばれたら上手く当たるかどうかも難しくなる。だからあいつを上手く引き付けて、二人で協力して一気に決めるぞ!」

「……ああ、やってみよう。だが貴様が訓練場で使っていたあの魔術じゃダメなのか!?」

「それもやってみる!」


 レウスがどんな魔術を使うか分からないが、少なくとも訓練場で見せてくれていたあの魔術をまた近くで見られるらしいとエルザは考えつつ、自分の役目を果たすべく彼女はバトルアックスを両手に構えた。


「くそっ、化け物め……私の学院でこれ以上好き勝手させる訳にはいかん!!」


 この学院の主席である自負を持って、エルザは巨大なドラゴンを迎え撃つ。

 今の所は体当たりだけしかして来ないが、さっきのレウスみたいに爪が当たればそれだけでも命に関わるだろうと警戒しながらの戦いだ。

 斧を構えつつ口で魔術を詠唱し、向かって来るドラゴン目掛けて巨大なファイヤーボールを投げ付ける。

 しかし相手もそれなりの知能はある様で、その巨体に似つかわしくない素早い動きでファイヤーボールを回避した。


「くっ、ならばこれでどうだ!!」


 魔術の詠唱はまだ終わらないのかとレウスの方にチラリと一瞬だけ視線を動かし、すぐ元に戻しつつ斧の先端に魔力を溜めて、自分がクルリと回転。

 先程、訓練場でレウスがやっていた必殺技の下位バージョンである。

 その魔力を最大限まで凝縮したエネルギーボールを、ドラゴンに向かって狙いを外さない様タイミング良く撃ち出した。

 そのエネルギーボールは、結果から言えばドラゴンにヒット。

 しかしダイレクトヒットとまでは行かず、ギリギリで回避したドラゴンの翼を掠めてその一部を抉り取っただけで終わった。


(くっ、素早いドラゴンだ!!)


 その結果にエルザから舌打ちが漏れるが、ドラゴンにとって翼は命の次に大切な、空を飛ぶ為に必要なパーツである。

 自分から見て右の翼をそのエネルギーボールで抉られる形になったドラゴンは、空中でバランスを崩して危うく墜落しそうになる所を左に体重を掛けて身体を斜めにしながら何とかバランスを保つ。

 人間のレウスとエルザから見れば、それは余りにも大きなチャンスとなった。


「良くやった、エルザ……では行くぞ。食らえ、デスブレイク!!」


 エルザの活躍によって時間を稼いで貰ったレウスが、闇の魔術「デスブレイク」を詠唱し終わったので、ヨタヨタとバランスを崩しながら屋上に向かって来る黒いドラゴン目掛けて思いっ切り右腕を振り被る。

 そして上半身を前に向かって突き出すと同時に、振り被った右腕をドラゴン目掛けて突き出すと、手の平からどす黒い一本の光線が撃ち出された。

 翼を負傷したドラゴンは今までの様な俊敏な動きも出来ず、今度はまともにその光線を受けてしまった。


「グギャアアアアアアアッ!!」


 絶叫を上げたドラゴンの身体を、光線がジワジワと膜になり包み込んで行く。

 元々黒いドラゴンが黒いオーラに包まれて真っ黒な塊になった次の瞬間、ドズンと鈍い音が膜の内側から響き渡ったかと思うとすぐにその膜が弾けた。

 その後に残ったのは、呻き声すらあげる事無く脱力してそのまま真っ逆さまに中庭に向かって落下して行くドラゴンの姿だった。


「や、やった……のか?」

「ああ、俺達の勝利だぞエルザ!!」


 レウスの勝利宣言に、中庭に墜落したドラゴンを屋上から見下ろしつつエルザは大きく息を吐いて安堵の表情を浮かべた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お気に召しましたら、ブックマークや評価等をぜひよろしくお願い致します。
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ